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うつ伏せ

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不定期ながらもエッセイを上げていきます。 今までの詩はマガジンの『不偏な日々に花束を』にてご覧頂けます。
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140文字では足りない⑤大切な人

大切な人はいますか? 子供、夫、妻、恋人、家族、友達、ペット(本当はペットって言い方は好きじゃない)。心から大切な人と想える人は多くない。 もしかしたら唯一の親すら、未だに冷めた目線で見ているかもしれない。 奇妙な家で育った為か、自分には愛情とは何か分からないまま大人になってしまった。 今でもいわゆる【大人】と呼べるのか分からない、自立出来てはいないから。そもそも自分で稼ぎ、得たお金で生活する事が自立なのかすら分からない。 しかし今の私よりは遥かに良い事くらいは分かる。

米津玄師「恥ずかしくってしょうがねぇ」を聞きながら

「あんな大人にはなりたくない」と嫌悪を越え憎悪を持っていた10代から見た現在の私は、果たして理想的な大人に成れているか? 理不尽を押し付けたまま、何の責任も持たずに逃げた、あの人達のように成ってはいないか? 大丈夫、きっとあの人達のようには成っていない筈だ、と思い込ませようと丸めて紙クズが溜まっている気がする。10代の私が描いた中年の私は本当はかなりかけ離れてはいるだろう。金銭的に、精神的に、自立する事が出来ていない現在に幻滅するだろう。 ただ、毎日毎夜欲しくて仕方無かっ

感覚

3時50分。布団の中から早めのおはよう。 靴下を二枚重ねて履いている感覚が嫌で脱いでしまった。うつ伏せで書いているため布団からはみ出た上半身は、うすら寒い。 雨が降っている。強く屋根や窓に中る雨音から物語るべくはなにもない。 今日はたった一人の、じぃちゃんの命日だ。少ない親戚が集まるらしいが膝を壊しあまり歩けない私は参加しない。バスなら行ける距離ではあるがバス停から歩かなくてはならない。 苦手なのだ、明るい装いをするのもされるのも両方。親戚たちは私の本当の病気を知らな

振動

伝わる心臓の音に安堵して、ゆっくり眠りに入る。懐かしく、遠く、手離した、その感覚に未練はなくて今は一人揺れる夏、ゆらゆら鈴虫の声が愛おしい。 欲しい物はそれ程無く、一日が24時間など誰が決めたと云うのか、時がもっと欲しい。『月とキャベツ』という映画のシーンに似た処へ引っ越して、じわじわと人生の瞬間を生き始めようとしている。 子供だ、としんしん思うのは全て一人で出来ないことへの苛立ちなのだと気づく。 全て一人で物事やってのける、なんてできないのかも知れないと思う、矛盾。 「

ジャズ

音を楽しむ、と書いて音楽。 シーンや気分に合わせて聞ける音楽が好きだ。 今日は1日いっぱい外出していて楽しんだのに欲張りは1人の時間がないとイライラして、落ち着かない始末。 睡眠導入剤を飲んでから早くも数時間経過。 眠くてたまらないのに、ジャズを流しながら書いている。 カフェでボーッとするのは昔から好きだが、 落ち着くのは暗い照明だけではなくバックグラウンドミュージックも手伝っているからだと、ある時気付いた。 それからは集中したい時にはジャズかボサノヴァを流すようにし

何もしない日のチョコレ

随分早く目覚めた朝、午前四時。置き時計の針を目が凝視した。 外はまだ暗い、朝なのか夕方なのか導入剤の効きすぎた脳は瞬時に判別がつかない。 が、この頃の夕方はもう明るいので眠気と戦いながら朝だとぼんやりしながら煙草を吸う。 何も考えていない私は冷蔵庫からチョコレートを出し食べ出した。 そうなのだ、食べ出した、のだ。 ポップコーンまで食べてしまう始末だ。 何か食べたら目が覚める、自覚はないがそう思ったのだと思う。 しかし眠気は取れず仕方なくコーヒーを飲んだ。 そこで目が覚めた

清潔な男

穏やかな話し方が印象的だった。 聞き上手で否定が性格の中にないような物言いをする。 友達が多そうだと、迂闊にも羨ましく思ってしまった。 これは恋に、いや、彼に落ちるなと思うほど魅力的な男。 そう感じた時点で彼を好きになっている証拠だ。 私はモテない人間だと自負しているため、一人が楽だと云う言い訳を周りにも自分にもしている。 別の言い方をすれば、自分を誤魔化しているに過ぎない。 アラサー、アラフォーになると魅力的な人には大抵パートナーがいる。 既婚、独身に関わらず、お相