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振動
伝わる心臓の音に安堵して、ゆっくり眠りに入る。懐かしく、遠く、手離した、その感覚に未練はなくて今は一人揺れる夏、ゆらゆら鈴虫の声が愛おしい。
欲しい物はそれ程無く、一日が24時間など誰が決めたと云うのか、時がもっと欲しい。『月とキャベツ』という映画のシーンに似た処へ引っ越して、じわじわと人生の瞬間を生き始めようとしている。
子供だ、としんしん思うのは全て一人で出来ないことへの苛立ちなのだと気づく。
全て一人で物事やってのける、なんてできないのかも知れないと思う、矛盾。
「矛盾嫌い?」
嫌いに決まってるだろ。
ジレンマだって嫌いだ。
だから葛藤しながら抜け出す道を探している。
心でそんなことを考えている。考えて、さて、次はどう出ようか。
ほらみろ、迷っている振動がびりびり響く。
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