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PAKIRADI第二回特別企画『THE GRIME VS DRILL』Interview 書き起こし

あらすじ


この記事は、BS0ラジオにてオンエアしたPakiradiの第二回目の企画「THE GRIME VS DRILL」にておこなったインタビュー企画の文字起こし版となります。(ラジオ版は下記にて!)
https://bs0radio.mixlr.com/recordings/2130461
当時ラジオを聴いていて聞き取れなかった箇所や、ツイートしていた各種Drillの音源などがこちらにまとまっていますのでご参照ください。

Q1.
まず、Altaの自己紹介をお願いします。

こんにちは、私はアルタです。イギリスから来ました。東京に7年住んでいて、その前は中国に5年住んでいた。上海の時、Push & Pullというパーティーとレコードレーベルを作ったよ。大学はロンドンに行き、合計で5年ほど住んでいたね。

Q2.
グライムを聞くようになったきっかけは何ですか?

Run the Roadというコンピレーションで見つけたんだ。それ以前からBoi In Da Cornerの存在は知っていたけれど、それがリリースされた当時はまだロックに熱中していたとおもう。それで、そのコンピレーションを手に入れたら、もっとグライムを聴くようになり、2006年にロンドンに引っ越してからは、さらにグライムにのめり込むようになったんだ。

Run the Road…初期グライム最大のコンピレーションアルバム。現在でも活躍するMCたちの初期の名曲がコンパイルされている。

vol1と2があり、2しかsteamにはない。なんとかして1はCDでゲットしてください。

Q3.上海ではPush & Pullを現地のアーティストたちと主催していましたが、その時はどうでしたか?

中国の新しい世代が現れてくるちょうど始まりの時期だった。プロデューサーとして同じ時期にどんどん上手になっていったのを見られて、ラッキーだった。Push & Pullを始めた頃は、本当にエキサイティングなプロデューサーが現れるまでしばらく時間がかかったけど、2015年くらいからHyph11E、Dirty K、Zeanといった人たちがシーンに登場するようになったね。自分たちの音を作りながらも、他のアーティストとの絆がある、そんな賑やかで強いコミュニティがあった。刺激的な時期だったよ。一人一人は自分の作風があったけど、お互いに影響しあっていた。東京では、そのようなことは経験したことがないね。東京にも小さなシーンはあるけれど、上海でのムーヴメントはもっと大きいものだったとおもう。

Hyph11E

Dirty K

Zean

手前味噌ながら、上海シーンの著名プロデューサーのZeanが立ち上げたGully Riddimというレーベルから一曲出してます。下記のリンクから聞いてみて!
by PAKIN

Q4.
さて、ドリルについてです!ドリルはアメリカで生まれたと認識していますが、どのようにしてUKにやってきたのでしょうか?また、なぜ流行ったと思いますか?

ドリルはシカゴでChief Keef、G Herbo、King Louieといったアーティストと一緒に始まったもので、サウンド的にはトラップに非常に近い。しかし、その違いのひとつは歌詞で、非常にダークで街の犯罪、特に殺人について歌われていたんだ。今、UKドリルのビートは、シカゴドリルのビートと違うけど、歌詞のテーマは同じなんだ。
2000年代後半から2010年代前にかけて、イギリスではroad rapというジャンルがあったんだ、たとえば、Giggsが代表だ。これはグライムとは全く別物だった。その時点でイギリスではすでにシカゴドリルに近い音楽があったから、シカゴドリルがロンドンで広まったんだ。そして、当時もその後も、ロンドンの若い労働者階級の黒人たちの状況は悪くなっていた。2011年にはバーミンガムやロンドンの暴動もあったし、政府の政策とか、2010年代を通じてナイフを使った犯罪が増加したせいで、ロンドンでの自分たちの立場が悪くなってきた。それで、シカゴと同じような社会状況ではなかったけれど、ドリルのリリックのトピックが通じるような方向に進んでいたんだよ。

Chief Keef - Love Sosa

G Herbo ft. Lil Bibby - Don't Worry

King Louie - Live & Die In Chicago

Giggs - Look What The Cat Dragged In
数あるroad rapの中でも、個人的には最高傑作だと思います。この声と当時のマジで危ない奴が出てきた!という前評判も含め、本当に「危険だ!」となりました。

Q5.
Altaは、グライムとドリルの違いは何だと思いますか?文化的な差や、音楽的な違いなど、自由に説明してください。

UKドリルには2つの時代があると思う。1つ目はサウンドの面でシカゴ・ドリルに近く、グライムとは明らかに違う。あと、グライムはトラップの影響を受けたけど、一般的にはもっとスピードがあり、使用する音やサンプルもかなり違う感じだよね。当時のUKドリルはもっとゆっくりで、ピアノのメロディが目立ってたよね。あと、歌詞に使われるスラングも違っていて、シカゴから借りているものもあるんだ。代表的な曲は1011のNo Hook、BTとRendoのBaddaz、Nito NBのRise and Tanといったトラックがありますね。
時折、グライムの影響が聞こえるものもあったけど、そこまで有力なものじゃなかったね。例えば、67のTake It Thereは、いつもWileyのデビルミックスを思い起こさせる。
この時代は、グライムとの重要な違いの一つを例示している。それは、UKドリルはレイヴカルチャーから生まれたわけではないってこと。グライムはガレージから発展したもので、SidewinderやEskimo Danceのような有名なパーティーがある、でも、UKドリルの有名なイベントは存在しません。だから、その影響はないんだ。
それから、2018年頃からビートの面で2つの大きな変化が訪れる。まず、グライディングの808ポルタメントが前面に出てくるようになり、やがてUKドリルの特徴になっていった。次に、リズムの面では、tresilloというリズムを使うスネアとハイハットが増えていったんだ。
UKドリルはグライムとは全く異なるサウンドだけど、グライムとの関連性を見出すのは簡単だと思う。808のポルタメントは、グライムのベースライン、例えばgliding squares presetを使ったWileyのベースと同じだ。そしてリズム的には、グライムを含むロンドン・ミュージックの特徴であるカリブ海の影響を反映している。ほとんどのロンドンの音楽でカリブの影響を聞けると思うよ。
しかし、この時点でビートはグライムの通常の140bpmよりかなり速くなり、ラップのスタイルもかなり違っているね。ラジオ文化やリワインド文化がないのも特徴。また、グライムは少し漫画的であったり、古いビデオゲームのようなサウンドであったりしますが、これは一般的にUKドリルで聞くようなものではないね。

(1011) ZK x Digga D x Mskum x Sav'O x Horrid1 - No Hook

#410 (BT & Rendo) - Baddaz

NitoNB - Rise & Tan

67 (Monkey, LD, Dimzy & Asap) - Take It There

WileyによるDevil mixシリーズ=ビートが全くないgrime。独特の浮遊感を感じさせるのが特徴。すでにリリースされている曲からビートを抜いたものから、元からdevil mixとして作成されたものまで多数。DJ SakanaによるDevil mix only mixが大変参考になる。

DJ Sakana - Nokick 22

Sidewinder、Eskimo Dance
両方とも古くから続くGrime Rave。当時になんとかしてタイムスリップしたい。参考動画は多数あるが(youtubeにgrime sidewinderなどと入力!)たとえばこれ。Rewindカルチャー!

gliding squares presetとは?という方はこちらの動画を参照。なんと作る方まで載ってます。みんなで作ろうエグイbassline!

Q6.
ドリルの曲はどのように入手していますか?また、チェックしているwebサイトなどはありますか?

実は最近、少なくとも新曲という意味ではUKドリルを聴くことが少なくなった。でも、聴いていた最盛期には、Pressplay、Mixtape Madness、GRM DailyといったYouTubeチャンネルを定期的にチェックしていた。CZRやLA Beatsといったプロデューサーのチャンネルもフォローしていたね。Instagramも重要で、アーティストをフォローするか、Drill.SZNやNY Drill Pageのようなアカウントをフォローして、新しいリリースの最新情報を入手することができる。ラジオでは、Croydon FMのNammy Wamsが聴き応えがあります。楽曲を合法的にダウンロードできるのは、基本的にiTunesだけだね。Bandcampには基本的に皆無だよ。
Pressplay

Mixtape Madness

GRM Daily

CZR

LA Beats

Drill.SZN

NY Drill Page

Croydon FM

Nammy Wams

Q7.
今後、ドリルはどのように進化していくと思いますか?

ニューヨークでは、主な流行がJersey Clubを含むビートを使うようになってきている。ビートがだんだん速くなっていって、曲のbpmは160まで上がってきた。ここ2年くらいで、ニューヨークのラッパー、特にブロンクス出身のラッパーは、非常に辛辣で、荒く、叫び声のようなヴォーカルスタイルを取り入れるようになった。ニューヨーク・ドリルを広めたPop SmokeとかFivio Foreignの作風に比べてスタイルとはずいぶん違う。Kay FlockとDougie Bの影響で普及したと思う。今ではほとんどのニューヨーク・ラッパーがそれを受け入れているな。同時に、Cash CobainとかChow Leeが作る「セクシー・ドリル」もあり、そっちの方はストリートやギャングの話題から遠ざかっている。
今、すべてのイノベーションはニューヨークで起きているように思うけど、その理由ははっきりとは言えないな。イギリスではUKドリルが流行りすぎて、紋切り型のものになってしまったのかも。一方、ニューヨークのドリルは、ヒップホップにおけるアメリカのいくつかの地域的なスタイルのひとつに過ぎないから、少しクリエイティブスペースがあるのかもしれないね。
とはいえ、近年のドリルシーンにおけるベストプロデューサーの一人はイギリス出身のGottionemだ。彼はInstagramでクレイジーな高速ドリルビートを投稿している。まだMCには浸透していないけど、ポテンシャルはあるし、ジャージクラブの影響もあって、このスタイルが支持されるかもしれないね。もしドリルがクレイジーで速いクラブミュージックになったら、すごくクールだと思うんだ。それが僕の夢だ。2020年にSwimfulとNaaahにドリルベースのDJツールを作るというアイデアを伝えたら、いくつか作ってくれた。他のプロデューサーも作ってみてほしい!一般的に、ダンスミュージックはドリルときちんと向き合ってこなかったし、ダンスミュージックのプロデューサーがドリルの影響を受けたトラックを作ったら、だいたいダサいトラックだと思う。
もうひとつは、ジャマイカの音楽もUKドリルの影響を受けたんだ。トラップ・ダンスホールは基本的にジャマイカのドリルだと言う人がいる。それはちょっと違うと思うけど、そういうリディムがいくつもあって、一概に全否定はできないかな。

Kay Flock - Shake it

Dougie B - Stuck in my way

Cash Cobain - 2 Slizzy 2 Sexy

Chow Lee, Synthetic - no hesi!

Gottionem

Swimful - Muckle

トラップ・ダンスホール…まさにAltaのmixを聴いてください!ドライブや自宅作業中でも最高ですよ。


Q8.
UKのドリルがニューヨークのドリルに影響を与えたそうですね。それはどのようにして実現したのですか?

Pop Smokeのような人たちが、YouTubeでビートを探しているときに808Meloのようなイギリスのプロデューサーを見つけたのがきっかけ。偶然のようなものだったんだけどね。彼とAXLBeatsはシカゴのDJ Lにインスパイアされたんだけど、結果的にニューヨーク・ドリルのインストゥルメンタル・テンプレートを確立することになったんだ。ニューヨークにはカリブ海の影響もあるので、UKサウンドは翻訳できるかもしれないね。

808Melo -  Apocalypse 2

AXLBeats - Pnv Mell Back To Back

DJ Lが関わった作品のプレイリストと思われます。

DJ Lのインタビュー。ご本人は元々「まともな」育ちだったようですが、シカゴの激変により、祖母の死後あたりから環境が急激に悪化していったようです。大学に行ってプロのバンドを一時期目指すも、最終的にプロデューサーへ。Trapだけでなく、houseやJukeの影響受けているとのこと。

Q9.
ドリルのアーティストたちはファッションも独特ですね。例えば、バラクラバやその他の覆面やお面をよく着用している印象がありますが、あのファッションはどこに由来するものなのでしょうか?また、ドリルのファションについて意見があれば教えてください。

ドリルでは、犯罪や具体的な事件の話が出るので、秘密や匿名性がかなり重要視されてる。だから、多くのドリルラッパーやクルーは暗号のような名前を持っていて、特定の人物や事件への言及は「シー!」とか効果音でごまかしたりするんだ。ファッションもその延長線上にあって、タリバンとかが参考になったかどうかは分からないけどジハードファイターみたいになってしまうこともある。数年前から警察がドリルの動画や歌詞を刑事事件に利用するようになったので、それもこのマインドを後押ししてるね。
ただ、ドリルが商業的に成功するにつれて、マスクなどからの脱却が進んでいる。モンクレールのジャケットや破れたアミリのジーンズなど、よりスタンダードなヒップホップのファッションに取って代わられたね。

Q10.
日本のインターネット上では、ドリルとグライムが混同されていることがあります。Altaが述べた通り、サウンドや文化的にも全く違うものだと思いますが、こういった混同、または同一視はイギリスでもあるのでしょうか?

そんなことはないと思う、ありえないね。非常にカジュアルなリスナーや、UKラップをまったく聴かない人にとっては、エレクトロニック・ミュージックをすべてテクノだと思う人がいるのと同じように、混乱するかもしれない、でも、アーティストやサウンドがあまりにも違うし、現時点ではどちらも広く知られているので、あまり混乱はないように思う。ただ、両ジャンルに共通する「ロードマン」的な要素もあると思う。だから、日本では混同する人がいるのかもしれないね。

Q11.
最後に、告知など、何かいいたいことがあれば教えて下さい。

SoundcloudやInstagramをフォローしてほしいかな!Soundcloudにドリルやトラップダンスホールのミックスがある。近々また出す予定なんだ。しばらくクラブでUKドリルをプレイしていないから、誰かブッキングしてくれないかな?興味があるプロモーターがいたら連絡してください。

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