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懐かしいけど新しいこと

埃や土が春風に乗り舞う歩道
あまり使われていないと思われるだろう道は
ボクの生まれ育った街ではちょっと違う
人通りが多い道ほど踏み固められて凍ってしまうので
凍結した路面に滑り止めとして冬の期間に砂利を撒く
それが雪解けとともに砂利が残って
春風に乗って舞い上がる
雪国ならではの春の風情だ

年々ロードヒーティング施工された道が増えてきて
徐々に快適にな環境になっているものの
自然の猛威にはまだまだ太刀打ちできなく
昔ながらの砂袋BOXがあちらこちらに点在している
個人商店がコンビニエンスストアに変わっても
電話ボックスが消えても
ちょっと買いづらい雑誌の自販機がなくなっても
砂袋だけは何十年も変わらないままだ

変わらないものに愛着が湧くようになったのはいつからだろう
片田舎に住んでいた時には
変わらなさすぎる街に嫌悪感すらあったはずなのに
帰郷の度に消えていく風景に寂しさが増していく
それが大人になったことと言うならば安直すぎるし
懐古主義と言うならば古いものを全て受け入れているわけでもない
このアンニュイな心境の変化は
未来が輝かしいものという幻想に気がついたからなのか
変わらないものなんてない事を痛いほど知った後だからこそなのか

まだ昭和が続いているなら、今年は昭和98年になるらしい

昭和の物や文化に対する愛着は昭和レトロと呼ばれる
昭和の終わりに誕生したボクも、もれなく昭和レトロの一要素だ
高度経済成長からの日本はモノが沢山手に入れることができたが故に
モノに対する執着や関心が極度に変容していって
文化に影響し変革が起こって独自の文化が形成されたのもこの時代
よくわからないモノが溢れてヘンテコなんだけれどもキュート
はちゃめちゃカオスという言葉が相応しい

2000年以降モノからコトへ消費行動の変革が起こった
経済的な発展や技術の進歩によって
物質的な生活に対する要求が満たされたことにより
人々の消費のポジショニングが変化した
個別の事象が連なった総体である一連の体験に価値を見出すようになった
モノ消費は旧時代のレガシー
のはずだったのだけれども
これほどまでにレトロなモノにどうしてボクたちは惹かれるのだろう

ひとつは
思想や文化が変わり切ってしまった時代の変容そのものが
モノに内在する物語として機能しているから
物語を通じて過去を疑似体験できる
オトナの勝手なカテゴライズでは補足できない部分

ふたつめに
流行り廃りがループしているから
流行は20年周期とも言われているけれど
人が懐かしいものや馴染みのあるモノに
魅力を感じることから起こるものとされていて
新しいものを探すことから退屈していると感じるときに
過去のトレンドが再び人気を集める
回り巡ってきたもの

体験が満たされ飽和した末に
いまいちどモノへの回帰をボクたちは求めているのかもしれない
ちょうど眼前に一世紀前の昭和という時代がそこにあって
あの時代を取り戻そうとしている人々と
物語を渇望する人たちと
歴史の繰り返しを享受している人たちと
同じ場所で時代を受け取ろうとしている

埃っぽい歩道も
いくつかの雨をうけて
雨と土の匂いを漂わせながら
夏になっていく

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