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「なぜそこまで支援するの?」とよく聞かれます。その理由を考えてみました。

(写真は、ギルドケアの食事会の風景と、自社畑の様子です)

前の記事でもご紹介しましたが、私たちは今の社会の中で生きづらさを感じている方々を対象に、彼らが思い描いた生活を実現する支援活動を続けてきました。「ギルドケア」と名付け、これまで20年近く継続しています。そんな私たちの姿を見て興味を持った方々が「なぜ、支援するの?」とよく聞いてこられます。今回は、この疑問の答えを考えたいと思います。

私たちは埼玉県を中心に、北関東3県を含めた市役所の福祉課やNPO団体など100か所ほどと提携し支援活動をおこなっています。提携先からは毎月20件以上の相談が寄せられ、支援者の数は累計で1000名を超えています。

相談される内容は、就業困難な方々に自律した生活を実現するための支援をしてほしい、というものです。たとえば、一般的な仕事や職場とは合わない特性のために働けずに困っている方や、これまで勤務経験なくずっと家の中で暮らしてきたが、一人で生活をすることになった方など、お一人おひとり異なる課題をお持ちの方々です。

こうして私たちに繋がった方とじっくりお話をして、それぞれに必要だと思われる支援を提供してきました。仕事を教え一定の収入をつくり、住む場所や食べるものなどを提供し、従業員として迎え入れた上でそれぞれが望んだ生活を実現するための諸々の支援をおこなっています。

支援するためのシンプルな理由

就業支援をしたり、仕事を教えたりするところまでは他の企業や団体でもよく見られる風景でしょう。でも私たちは、それらを越えた支援もおこなっており、外から見るとその姿が不思議に思われるのだと思います。

私生活の悩みを2時間以上電話で聞き続けることもありますし、自分一人では入歯をつくれない人のために歯医者の手配をしたり、皆の居場所づくりのために手作り料理を20名分も用意し懇親会を毎月開催したりもしています。

「なぜ、支援するの?」この質問を聞いて最初に思い浮かぶ答えはとてもシンプルで、「目の前に助けを求めている人がいるから」。会社としても「おせっかいが見えるほど、本気でかかわること」を理念に掲げ、大切にしている姿勢でもあります。

たとえば道端で苦しそうにしゃがみこんでいる方がいれば多くの方が助けたい、と思うはず。それと同じだと思うんです。手を差し伸べた結果、相手が抱えていた困難を乗り越えられたなら、私たちだって嬉しくなります。

社会課題を解決して社会に貢献したい気持ちもありますが、その思いだけで動いているのではありません。マザーテレサのような無償のやさしさも備えてはいないと思います。支援に関する仕組みやルールも、実はあまり明確には定められていません。

ですが、私たちはおよそ20年かけて「支援を求める側と支援する側の関係性を大切にするための場」をつくりあげてきたのだと考えています。

素直な行動と関係性が生まれる場づくり

たとえばギルドケアでは、定期的に社内外の方が集まれる場を開催するようにしています。食事会の場合もあれば、スポーツレクリエーションの時もあります。お互いが顔を合わせる機会を設けることで、相談のきっかけを生まれやすくしているのです。

また、積極的に声をかけて状況をつかむことも意識しています。支援を必要とする方の中には話すことを得意としていない方もいるため、聞き方にもコツがあります。「YES/NO」で答えられるようなシンプルな質問からはじめて段々と詳細を理解していくようなコミュニケーション姿勢を、多くのスタッフが身につけています。就業後は、日々の仕事の前後で気軽に話ができる時間と場所を用意しています。実際、この場を起点に多くの相談が寄せられています。

なぜこうした環境を築いているのか?仕事として割り切った関わり方に徹した方が効率的なのは間違いありません。その理由の元をたどると当社代表のある体験に思い至ります。

代表が火葬場で感じたこと

まだ事業をはじめて数年頃のこと。代表はある身寄りのない方を紹介され、一緒に働くことになりました。ところが数か月後、その方にがんが見つかり入院。身寄りもないので代表が身の回りの世話をしていたそうです。病状はよくならず、そのまま亡くなってしまいました。他に付き添う人もおらず、代表が一人だけ火葬場までついて行きました。

使命感や責任感でもなく、ただ自然とそこまで寄り添っていた自分に気づき、そのとき感じたそうです。「なぜ自分はこんなことをしているのだろう?」と。そこから「もしかするとこれが今自分がやるべきことなのかもしれない。根本解決まではできないとしても、困っている方に対して最大限の寄り添い方・かかわり方を突き詰めてみよう」と考えるに至りました。

それ以降、支援継続のために事業を拡大してきました。求められた助けに応じて手を差し伸べたいと思う、その気持ちを大切にできる社内環境もつくりあげてきました。そして今、代表の想いを共有したスタッフたちとともに、「ギルドケア」として支援活動をおこなっているのです。

支援する理由と、支援を続けられた理由

代表はスタッフに対してよく声をかけています。「素直に対応できなくなったら対応しなくていいんだよ」と。実際、現場で対応しているスタッフたちも傍から見ると意外に思われるほどフラットなスタンスで支援をしています。

私たちが支援する方々には、それぞれが実現したい生活があります。私たちがどれだけ手や心を尽くしたとしても、彼らは何も言わずにふといなくなってしまうこともあります。

初期の頃はショックでしたし、そうした事態が起きないようにさまざまな手立てを講じてもきました。それでも、こういうものなんだと大前提として認識を持つようにしています。

優先するべきはその方の理想です。私たちはその支援をするだけ。どれだけおせっかいを焼こうとしてもその優先順位がくつがえることはありません。

期待をしすぎずに、責任を負いすぎずに、それでも今目の前にいる人に「おせっかいが見えるほど本気でかかわる」気持ちを大切にする。20年の中で至ったこのスタンスが、私たちが支援を続けてこられた理由なのかもしれません。

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