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Ten to Senゲストハウス高松

センス溢れるゲストハウスで気づいた自分の未来

Ten to Sen(テントセン)ゲストハウス高松は、香川県高松市の中心部にある4階建ての古いビルを使ったゲストハウスだ。細い階段をトントンと上った2階がエントランス。そこには階下では想像もつかない古いヨーロッパの邸宅のような素敵な空間が待っている。

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ここをつくったのはオーナー杉浦聡美さん。なんとそのリノベーションのほとんどをセルフDIYでやったというのだから驚きだ。当時、開業前の物件契約から解体・工事・造作の様子などをかなり詳細にブログで公開されていて、たまたまその記事を見つけたわたし自身が、DIY好きで部屋にペンキを塗ったり、いつかバールで壁を解体してみたい!と思っていた(笑)こともあり、同年代と思われる素敵女子がそれを地でやっている姿に「カッコいい〜」と密かに応援&ファンになっていた。

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その後、カラフルな色で彩られた部屋が出来て開業したのが2015年のこと。
初めて杉浦さんにお会いしてお話を聞くと、同世代として共感できることが多々あった。女性として仕事のキャリアを重ねた後、神戸からダンナさんを連れて移住し、ゲストハウスの事業を新しくスタートさせた(しかもほとんど自分で作った)というのが素晴らしい。

ガッツ溢れる、でも細やかな気遣いができる人。その後、彼女とはときどき高松を訪れたときにふらりと立ち寄り一緒にランチをしたりする同志のような存在になった。

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Ten to Senに2度目の宿泊をした時だっただろうか、数年前、神奈川県の海辺に住んでいたわたしは、多拠点居住のトライアルとして半年ほど香川のお隣、高知県に通う生活をしていた。実家がある大阪と比較的近い場所ながら知らないことが多く、新鮮な気持ちで生活できそう。四国のどこかにベースを置いてあちこち移動しながら住むのもいいかな、と考えていたのだ。

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あるとき、高松周辺がおもしろそうだと真剣に移住を検討し、物件契約する寸前・・・なところまで行ったことがあった。そのときに杉浦さんには相談ともつかないそんな話をしてみたり。

もう一度現地でいろいろ感じてみよう、と訪れた高松。夕食はひとりでふらりと出かけようと、杉浦さんにおススメしてもらった近くのビストロバーのような場所に行ってみることにした。
ワインかなにかを飲んで、おつまみを食べ、いい感じで背の位置が高いバーチェアに座ってiPhoneをいじっていた。

そして、そのiPhoneを、床に落とした。コンクリートの硬い床に見事に当たって、画面のガラスが割れた。

今まで持っていて軽いヒビすらつけたことがなかったスマホ。
わたしのなかで、「ん?あれ?」と警告音が鳴った。

実はその日、会えたらいいなと思っていた人にもタイミングが合わず会うことが出来ず、天気も崩れて雨も降っていた。何かが少し、ずれている。

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人生の転機のあるとき、野生の勘はとくに大切な判断基準になる。うまくいくときは、何故かトントン拍子にいろんな事が運んでいく。

いつからか、わたしはこうしたい!という意志を強く持っていて、努力して行動しているのにも関わらず、なんとなく運が悪いとか、気が進まないときは、何かしら再考すべきことがある、と判断するようになった。

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人と土地の相性って、自分が頭で考えているのとは正反対だったりすることもある。もしかしたら恋愛なんかとも似てるのかも。

うまくいくときは、なにも戦略やら考えなくても、なんとなくタイミングが合って事が進んでいくし、ダメなときは、もうなにをやってもうまくいかない。何かボタンの掛け違いのようなことが起こって、スムーズに進んでいかない。

ガラスが割れてがっかりしながらトボトボ歩いて宿へ帰る道すがら、「もしかしたら、住むところは高松じゃないのかも。」と思った。きっとわたしは世界中どこにいってもそれなりに快適に住める気がする。でも、ここじゃなきゃいけない理由は、今のこの場所にはない。そんなふうに感じたのだった。

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沖縄などの南国にふらっと移住して長年住んでいる人の話を聞くと、「なんとなく、流れで、住み着いた」という人のほうが定着率が高い気がする。考えて考え抜いて、ここだ!と決めて移住を決意して一家総出でやってきた、みたいな人のほうが、「やっぱりここじゃなかった」と数年で出ていくというパターンも多いようだ。

どちらがいいという話ではないし、移住したら長年その地に居住しなくてはいけないというルールもないのだから、どちらも悪くない話だけれど、旅をする中で、そういう他者や地域と自分の相性みたいなのを読み取る力をつけることは、結構大事なことだと思う。

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そんなわけで、わたしの四国移住話は自分の中で静かに浮かび、密やかに消えていったのだけれども、Ten to Senがある高松は、当時直感したように、近年ますますインバウンドも含めた旅行者が増え、ゲストハウスやホテルが続々と新たにでき始めている。

Ten to Senでも2019年に入り、近くに別館アネックスCOCOという女性専用の個室ゲストハウスをつくった。一棟貸しではなく、いろんな人が宿泊する個室。きっと一棟まるっと貸し出しするほうが管理は楽なのだろうけど、あくまで彼女は「自分が泊まりたいと思う、あったらいいなと思う宿」を考えて、ひとり旅で訪れた女子が長期滞在できる静かな個室があるゲストハウスという、ありそうでなかった業態をつくったのだ。

こういう動きは大歓迎、毎回どこかしら宿の内部も壁の色や造作まで変わっていて変化しつづけているのがTen to Senと杉浦さんの動き。住むことはしなかった高松だけれど、海や山といった自然、瀬戸内の島々、惹きつけてやまない食べ物やアートへの造詣など、小粒でピリリとスパイスの効いたこの地をまた次に訪問するのが楽しみなのだ。

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