連載『オスカルな女たち』
《 大切な・・・・ 》・・・12
「なにがよ? いいも悪いも、ねぇよ。放せよっ」
肩を左右に振るが、さすがに本気で掴まれては容易に外せない。
「おまえ、それでいいのか?」
憮然としたまま再び真実(まこと)に言及する。
「うるせーなー。どうでもいいだろうが」
無理に肩を外そうと真実は身体を捻る。油断していたのか、気持ちが拗ねていたせいなのか、真実は佑介に唇を許してしまう結果となった。
ボコ…っ
「なにやってんだよ、気持ちわりー!」
怒鳴りつけると同時、真実は、佑介の右頬に渾身の左ストレートを決めていた。
「いって…」
「あたりまえだ…! 痛くしてんだよ」
だが、自分のその声が、涙声になっていることに気づく。
(あれ…)
すかさず真実を抱きしめる佑介。
「だから、言ってんのに…」
「だからって、なんだよ…」
だが今度は、殴ることはせず、ただされるがままに佑介の腕の中に納まった。
「おまえ、泣いてんじゃん」
「いうな!」
直立不動で棒立ちのまま、真実はしばらく佑介の腕の中で涙を流した。
「ホント、不器用なんだよな」
「うるせ…」
(なんだよ、これ。どんなタイミングなんだ)
まるで失恋したみたいだ…と、真実は心の中でつぶやいた。
*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです