連載『オスカルな女たち』
《 治りにくい傷 》・・・11
「もえもえ~」
「おりり~ん」
「ひさしぶり」
駅前にも関わらず大きく腕を振り合いながら、大きな声でふたりの言葉が重なったところで顔を見合わせて笑った。
「やだ、また痩せたんじゃない?」
「舞台が終わったばかりだからね、初日から3キロ前後の誤差があって当たり前よ」
「そんなに! 羨ましい~」
全国を回り3ヶ月を要する長丁場で、すっかりご無沙汰だった親友との久しぶりの対面は、いつも以上に織瀬(おりせ)を驚かせた。肩にかかる髪を更にすっきりと切りそろえ、はつらつとした彼女はとてもまぶしかった。
「来週から次の稽古が始まるから、今日はしっかり食べるんだからね!」
「なるほど。それでお肉満載なランチね…」
久しぶりに会う親友は「とにかく肉が食べたい!」と、ボリューム満点のビュッフェランチを提案してきた。
「おりりんも、なんだか痩せたんじゃない…?」
改めて織瀬を見据え、懐かしむ顔とは一変して心配そうに覗き込む彼女は、現在ミュージカル女優として名を馳せている『橘もえ(芸名)』こと〈立花萌絵(たちばなもえ)〉、織瀬の高校時代のクラスメイトであり親友である。
「そんなことないよぉ…」
言葉とは裏腹に、複雑な心境を隠せない笑顔の織瀬。
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