連載『オスカルな女たち』
《 大切な・・・・ 》・・・4
「どうした…らしくねぇな、取り乱して」
そんなやり取りの中、バタバタと廊下を駆ける音がして、病室がノックされる。
「はい」
「真実(まこと)先生、血圧計です」
「ソファのとこ置いといて、あとはいいから」
「はい。…樋渡(ひわたり)さん、すぐ来るそうです」
「はい、ありがと。来たら診察室に通して…」
「はい」
静かにドアが閉じられ、
「ごめんなさい…」
待ち構えていたように弥生子(やえこ)は真実を見据えた。
「お腹、張ってないか?」
言いながら真実はソファの上の血圧計を手にし、手際よく作業する。
「えぇ、えぇ…」
弥生子は、ひとつ息を吐いて、お腹に手を当て「少し。でも大丈夫。痛くはないわ」と答えた。
だが弥生子は、落ち着くと同時に再び涙があふれ、どうしようもできないらしく素手で涙を拭っている。その仕草にはいつもの余裕は見られず、真実の目にはまるで子どものように映った。
「話せるか? それとも、あとにする?」
血圧計を外し、ベッドに横になるように促す。
「ちょっと、今は…」
「少し寝た方がいい」
「そうね、そうする」
ゆっくりとベッドに戻る弥生子。
「ひとりで平気か?」
「えぇ、もう大丈夫」
「ホント? 薬は?」
「えぇ。いらないわ」
*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです