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連載『オスカルな女たち』

《 エピローグ 》・・・3

「おかわり!」
「いつになくピッチが速いですね」
 腫れ物に触るようなしぐさでジョッキを受け取る真田に、
「明日は午後からだから、いいの」
 余計なことは言うな…とばかりに睨みを利かせる真実(まこと)は、
「そろそろ、ナッツ、出てきてもいいんじゃないの?」
 サービスにも厳しい。
「はい。心得ております」
 何杯目かのビールと一緒に出てくる〈ナッツの盛り合わせ〉は、すっかり定番になっている。
「織(おり)ちゃんの赤ちゃんも、明日退院だっけ…? もうこうしてここでみんなで飲むこともなくなるのかな~。ちょっとさみしいな」
 無意識に真田に目を向ける。
「まったくなくなるわけじゃ…」
 とはいえ、先の読めない織瀬(おりせ)は苦笑い。
「そうは言っても、赤ちゃん連れてここには来れないでしょう?」
 つかさがのぞき込むと、
「落ち着いたら、ランチでも…」
 やわらかな笑顔で返す。
「お~いいね。その時は誘ってくれ。しばらくゆっくりできるんだろ…」
 ジョッキを受け取りながら、同じく織瀬を窺う真実。
「うん。仕事の方も当たり前に育休として扱ってくれるみたいだから…」
「待遇いいね」
「それだけあてにされてるってことだ」
「ひとが少ないだけだよ」
 羽子の入院から数日、結局弥生子(やえこ)は待ちきれずに帝王切開で出産に臨むことになった。

*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです