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連載『オスカルな女たち』

《 過去からの手紙 》・・・13

「さて、どうする?」
 食事を終え、つかさは店に入る前に告げていた一つの提案について聞いた。
「そうね…」
「行ってみる?」
 結局あの夜は織瀬(おりせ)の夫〈幸(ゆき)〉とは連絡がつかず、帰ってくる様子もなかったので、織瀬をひとりにできないと思ったつかさはそのまま織瀬のマンションに泊まったのだった。
(結局、なにも聞けないまま…)
 普段滅多に家を空けない幸の不在もそうだが、そんな日になぜ真田と一緒だったのか…今また、いつかのように織瀬とふたり『kyss(シュス)』に向かって歩いている。
「無理しなくてもいいよ」
「でもこのままってわけにもいかないし…」
「そうだねぇ、一応お礼くらいしとかないとねぇ…」
 自分で提案しておきながら本音は「連れて行きたくない」と思うつかさだった。そして織瀬は「行きたくない」と言うと思っていた。
 だが、どちらにしてもそれは「大人の行動」ではない。体調の悪い自分を病院に運んでもらっておきながらそれっきりというわけにはいかないだろうし、礼も言わずにしれっと客の顔をして店を訪れるのもおかしなものだ。
(あたし、意地悪かな…?)

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