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連載『オスカルな女たち』

《 トレース 》・・・10

「爪切りが済んだら終わりだから」
 つかさはカフェスペースにいる織瀬(おりせ)に声を掛け、
「うん。ありがと」
返事を待って自分もコーヒーを求めて壁際に立った。
「おりちゃんは?」
「あたしはいいや」
 コーヒーサーバーで〈カフェモカ〉を入れ、次の予約まで時間があるのか、赤いソファに腰かける織瀬の隣に座り込んだ。
「毎年クリスマスはそれぞれだったけど…おりちゃん、今年はどうするの?」
 この日は織瀬の固定給の水曜日だった。開店以来初めての来店となる〈ちょきん〉のトリミングに出掛けて来た織瀬は、先週末に会ったときより幾分元気そうに見えた。
 あの日は突然の「養子受入」宣言と「離婚」の意志と、爆弾発言をしたわりには…いやそうしたからこそ元気そうに見えるのだろうかと、つかさの中では問いただしたい問題が悶々としていた。だが、トリミングで来店した織瀬にそんな質問を投げかけられるはずもなく、ただ当然のことながら旦那様とのクリスマスディナーの予定はいないだろう…と、差支えのない事案を繰り出した。
「そう、だね。考えてなかった…」
 無理もない答えだ。自分の人生が、たったわずかな期間で考えてもみない方向に覆ったのだ。

初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)

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