薬膳プレート

連載『オスカルな女たち』

《 想定外ベクトル 》・・・17

「帰ろ」
(え?)
 織瀬(おりせ)は反論することもなく、つかさの腕を掴んできびすを返した。
「え? ちょっと…」
 足早に元来た道を引き返そうとする織瀬に引っ張られる形で、
「おりちゃん…?」
 のろのろと織瀬の背中を目で追うつかさ。

(おりちゃん、まさか…)

「どうしよう…つかさ…」
 追いついて、うつむいた織瀬の顔を覗き込むと、今まで見たこともないこわばった表情をしていた。

「織瀬さん…」
 声に振り返ると、息を切らし髪を乱した真田がすぐ後ろに迫っていた。
(やだ、追いかけてきたの? この2人、どうなってんの)
 なんとなく、真実がいなくてよかったと思うつかさ。
「待ってください…」
 つかさを追い越し、織瀬の肩をつかむ。
「なに? お客さん、待ってるよ」
 その手を振り払うようにして振り返る織瀬。
「そうですけど、誤解されたかと思って」
「誤解もなにも、あなたを気にする必要なんてない!」
 多少上ずった声で答える織瀬は、うつむいた姿勢のままだ。
「そうですけど、オレが嫌なんで…!」
 腕をつかむ。

(あたし、いない方がいいのかしら…?)
 そう思いながらもオロオロと、ふたりから目が離せないつかさ。

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