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待ち時間のえちゅーど4

通りに面したコンビニエンスストアの駐車場からは、目の前に4階建ての賃貸マンションが見える・・・・

ふと、アパートとマンションの「違いはなんだろう?」と考えた。
今はどこの建物も比較的キレイだし、階層だけではアパートなのかマンションと言っていいのか、判別がつかないものもある。
そこで調べてみると、ざっくりと、アパートは木造か軽量鉄骨で、3階以下のものをいうそうで、エントランスやエレベーターが着いている鉄筋コンクリートの建物をマンションというらしい。なるほど、そう言われると説得力がある。

そうなると団地はどっちより?…と、また疑問が湧いてきてしまうが、特に必要性はないのでここでは言及すまい。
しかし、アパートなのか、マンションなのか、いまいちよく解らないのも当然で、それら建造物すべてにおいて、厳密な区切りはなされていないらしいのだ。

最近ではアパートも「テラスハウス」や「メゾネット」と呼ばれるこ洒落たものが増えてきた。
テラスハウスなんていうと最近の言葉のようにも感じるが、隣同士が壁を共有して横に連なる形…との説明書きを見る限り、実は昔からある「長屋」を指していうらしい。そしてこれは「戸建て」に相当するというのだ。連なる家なのに「戸建て」とは、ふーん、である。

さて目の前の建物は、エントランスがある。だからやはり、マンションなのだろう。そもそも4階建てだ。

景観からして、4階の一番左端の部屋は空き家になっていることが解る。なぜなら、そこだけ窓ガラスが黒光りしてカーテンがないからだ。

一番上は、やっぱりお高いのだろうか?

マンションというとなんだかお金持ちしか住めないイメージがあるのは、わたしの住んでいた田舎にはあまり耳慣れない言葉だからだろうか。だって、田舎でマンションというと玄関にブロンズのライオンがいるところくらいだったから…。それももう「いつの話よ!?」ということになる。

わたし自身は祖父の代からの持ち家で育ったので、アパートや団地暮らしを「羨ましい」と思っていたけれど、それも失礼な話で、贅沢なのだと気づくまでに年数を重ねた。子どもは非情だ。
ただ、なにに憧れていた…って「鍵っ子」であるということに限る。自分専用の鍵が持てることに「オトナ」を感じていたあの頃。加えて、集合住宅には同年代の子どもがたくさんいたし、なんだか楽しそうに見えたんだもの、子ども心は単純ね。

マンションには当然ながらいろんなひとが住んでいる。一時期マンション住まいに憧れたものだが、ドラマその他を観ていると、中々大変そうで自分には「向かない」と思うことも多々思いつく。
自治会やら、管理組合やら、別にマンションでなくても大変なことはある。ただなんとなく、マンションには学校のような、学年とかクラスに見られる独特なカラーがあるように思うのだ。

学校には「校風」というものがある。開放的であるとか、規律が厳しいとか、雰囲気その他もろもろ…オープンキャンパスであったり、先輩その他のクチコミ、自分の目指すところを鑑み、進路や体質にあった学校選びをするものだ。だがマンションその他に至っては、そういったものを景観から読み取ることはできない。いざ住んでみてから「ここは合わない」と思っても、おいそれと引越しができるわけではない。

それは戸建てだろうと、アパートだろうと同じだろうが、なんとなくマンションは異質な感じがする。まぁ、自分の育った環境もまた絡んでくるのだろうが、そう考えるとマンション住まいは、自分にとっていちばん遠いところのように感じるのだ。一緒に住む相手にもよるか・・・・。

その一緒に住む相手…だが、今、わたしは考えあぐねている。
目の前のマンションから出て来るであろうそのひとを待ちながら、そのひとがひとりで出てくるのか、両親を連れて出てくるのか、それによって将来設計がタンタンタン…と積み上げられていくか、ガラガラガラ…と崩れていくかの瀬戸際だったりするのだ。

そして、思いのほか待たされていることも現実で、コンビニに入ってコーヒーを買おうか、雑誌を眺めて気を落ち着けようかと思案している。
もちろん、雑誌なんぞ手に取ったところで紙面に集中できるわけではないし、帰ってイライラしてしまうかもしれない。

仮にコーヒーを買ったとして、買ってすぐに待ち人が出てきたら、状況によってはそのコーヒーが無駄になるかもしれないし、ひとつしかないことに後悔するかも知れない。また逆も然りで、コーヒーを買ったものの、猫舌だし、熱くてすぐには口をつけられないからどちらにしても待つことになる。
そのうち、冷めるのを待っているのか、待ち人を待っているのか解らなくなった頃、時間の把握もできずに冷めたコーヒーを一気飲みした挙句、トイレに呼ばれてまたコンビニに入らなければならない状況に追い込まれるかもしれない。その間にマンションから出てきて、わたしがいないことに気付いたら「逃げた」と思われるかもしれない。とかとかとか…

このなんとも言いようのない緊張感。自分と目の前のマンションとを分断する目の前の道路が、崖っぷちのいちばん高いところだとしたら、間の谷はどれほど深いだろうか・・・・。この先の運命の分かれ道、目の前に見えているのに解らないというのは霧の中にいるのと同じ。その谷が深いのか、はたまたお花畑か、そんな待ち時間のエチュード。ちょっとした即興。


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