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恋愛体質:BBQ

『友也と砂羽』


1.bad premonition

砂羽さわさ~ん、お久しぶりでーす!」
桃子とうこが出掛るのと入れ違いに、リビングに勢いよく入ってきたのは、高校の同級生元カレだった鷺沢さぎさわ重音かさねの妹だった。
「あら、和音かずねちゃん…? すっかり大人になって」
懐かしさに飛びついてくる和音を胸に、面食らって妙な顔はしていまいかと内心びくつきながらも、複雑な思い出が頭をよぎる砂羽。だが、
「やぁだ。おばさんみたい。あ、」
当の本人はそんなことには頓着せず、
「ユウヤ! 会いたかった~」
ワントーン高い声でキッチンに立つ上石あげいしの腕に絡みついた。

「相変わらず、元気だねぇ」
つい口をついて出た言葉に不安を隠せない砂羽は。視線の先のソファで一連の流れにキツネにでもつままれたような顔をして自分を凝視している雅水まさみに苦笑いを浮かべる。その目はまさに「なにあれ!?」と言っているようだった。

鷺沢さぎさわの妹。かずねちゃん」
ソファに向かって笑顔で答え、
「さっさと準備しよ。トーコが買い物行っちゃったから、雅水、野菜切ってよね」
そういうと手元のエプロンを雅水に放って、テラスに続く大きな窓に向かった。

「えー!?」
こちらを無視してさっさとテラスに向かう砂羽に、迷惑そうに答える雅水。それは決して「野菜を切りたくない」という意味合いではなく、なんで今「キッチンに行けというのか」という抗議の感嘆詞であった。

「最初にとうもろこし焼くんだよね? これ、茹でて醤油漬けにしてきたから…」
軒先から聞こえてくる砂羽の声には、雅水には読み取れるだけの違和感があった。
「へぇ、準備いいね」
テラスには、先ほど鷺沢と一緒に火おこしをしていたと思われる寺井尭彦たかひこがトングを持って控えている。
「そこは女子力でしょ~」
そんなやり取りを眺め「後できっちり説明してもらうからね」と、立ち上がる雅水。

「わたし、なんでも手伝いますよ~」
こちらの気も知らず、キッチンの和音が明るく返してくる。
普段なら気にも留めないその態度が、やけに気に障るのは気のせいじゃないだろうと思いつつ、
「ぁ、うん。じゃぁ…やっちゃいますか」
と、しぶしぶエプロンをかけ、砂羽にとって今自分はいい防御壁なのだろうという空気を受け入れた。


4.contact   2.reminiscence



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