連載『オスカルな女たち』
《 すったもんだで 》・・・17
「いい加減になさいな、こんなところで…。蹴り上げるわよ!」
つい、本音が出てしまう。だが、取り乱している泰英(やすひで)には逆効果どころか、土砂降りの面を持ち上げにんまりと微笑む始末だ。
「蹴って…」
「こんなところで冗談よして…!」
かすれた声で一括し、腕を掴んで一番奥の病室へと急ぐ玲(あきら)。
こんな会話を看護師にでも聞かれたら…と、辺りを見回す。それ以上に、大の大人が鼻水垂らしてすすり泣いているなど、みっともないことこの上ない。
「バカじゃないの」
鞭を振るいたい衝動から苛立ちを隠せない。
「だって、あきらちゃん…ぼくたちの『赤い部屋』なくなっちゃったんだよ」
人気のないことをいいことに、子どものように手を引かれながらただをこねる仕草を見せる泰英に、
(今、それを言う!?)
そんなに打撃だったとは…と、
「だから…!」
掴んでいた腕を振り払う。
「50過ぎたおっさんが、情緒不安定なわけ?」
足早に廊下を進む。
「あきらちゃ~ん…」
*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです