カニ鍋

連載『オスカルな女たち』

《 最初で最後の晩餐 》・・・3


「でも、思ったより早かったね」
ざるに盛られた野菜を手に織瀬(おりせ)が真実の隣の席に着く。
「うん。リフォーム工事が思いのほか早くできそうで」
食器棚からビールグラスをふたつ取り出し、冷蔵庫に向かうつかさ。
「しかし思い切ったもんだね。姉弟揃って開業とは…」
箸を持ってお待ちかねの真実のグラスは既に空だった。
「もう、マコは…。つかさ、すぐなくなりそうだからもう一本持ってきてくれるかしら」
キッチンに向かって言いながら、玲は少し重そうなピンク色のボトルを持ち上げ真実のグラスに傾けた。

冷凍庫にグラスを冷やしたあと、冷蔵室からもう一本ワインを取り出し、栓を開けるつかさは「ビールもあるからね」と真実に向かって微笑んだ。
「あたしの話を聞いてて、思いついたみたいよ。まぁいくら経営者とはいえ、ずっとキッチンカーに乗ってるわけにもいかないとは考えてたみたいだけど」
つかさの引っ越しのあとこの家には、すぐ下の弟の家族が住むことになっている。そこで〈継(つぐ)〉は、一階を改装して「古民家cafeを開く」と言い出したのだ。仕事を辞めるつもりでいた現在身重の妻〈みさき〉も、ゆくゆくは一緒に店に立つ予定で既に週1でカフェスクールに通っているという。

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