連載『オスカルな女たち』
《 大切な・・・・ 》・・・1
Pu. Purr… Pu. Pu. Pu. Pu. …
(内線…)
暮れも押し詰まったある日のことだった。
「はい…」
「真実(まこと)先生、来てください。患者さんが…」
半ば叫び声のような看護師の声に、
「すぐ行く」
立ち上がりながら受話器を置いた。
少し前に脱いだ白衣を引っ掴み、足早に診察室を出る。
「今度はなんだよ…」
言いながら、正月飾りが載せられた受付前を通り過ぎ、玄関先の門松を横目に奥の〈ファミリールーム〉へと足を急がせた。前日から正月休みになった院内は照明も落とされ薄暗い。
談話室の前を通り過ぎる頃にはすでに騒がしさが耳に届いた。
「なにやってんだよ」
ノックもせずに病室のドアを押し開け、
「どうした?」
一歩足を踏み入れると〈特別患者〉担当の看護師〈井坂ひかる〉の腕を振り払い、身支度をする女優の〈弥生すみれ〉こと〈花村弥生子(やえこ)〉の姿が目に入った。
「先生、止めてください…!」
「なにやってんだ…!」
「あら、真実さん。外出許可をお願い」
そう興奮気味で話す彼女の眼はうつろで、見たこともない顔つきをしていた。
「なに言ってんだ。許可なんか出せるわけないだろう」
すぐさま駆け寄り、肩を掴む。
*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです