羊

連載『オスカルな女たち』

《 悩める子羊 》・・・14

「今の店、貸店舗よね? 家賃いくらよ?」
 目を細めて見せる。
「えー。そりゃ駅からそう遠くもないから、それなりに…」
「駅は近い方がいいの? でも犬連れてくるくらいだから、自家用車でくるお客の方が多いわよね?」
 どうやら、なにか思い当たる節があるらしい玲は、質問する声の調子も心なしか前のめりだ。
「そうねぇ。逆に駐車場があった方が助かるかもね。でも、ホントに無理よ」
 具体的なビジョンもないままにやってはきたが、なにか良い案が浮かぶのでは…程度で訪れたつかさには思いもよらない大きな提案だった。
「まぁ任せなさいな。ちょっと、私に考えがあるのよ…悪いようにはしないわ」
「でも、とにかく、お金ないから…」
「そこはね、なんとでもなると思う」
 既に玲の頭の中では、出来上がっている話があるようだった。
「そういえば、慰謝料はもらわないの?」
「あぁ、だって。お互い同意の離婚だし、そういう問題で別れたわけじゃないから」
「そういうものなの…? 必ずもらえるものかと思ってた」
「そりゃ玲のところみたいに資産が多ければ当たり前かもしれないけど。それこそ家を残してもらえただけでもよしとしないと、ね。…でも、通帳に入ってる分はくれるって言ってたかも。でもまだ、他の手続きもあって通帳まで確認できてないの」
「ふーん」

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