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【終活】2024年までのclusterのVRTRPG史【感謝】

こんにちは!VRTRPGサークル「ぐだぐだぶとん」の逆路です。

今回は2024年までにclusterのVRTRPGがどのように発展してきたか、ワールドの公開やイベントの開催、clusterのアップデートに着目してご説明しようと思います。

それ以前のclusterはパソコン・VR対応のバーチャルイベントプラットフォームでしたが、3月5日のclusterカンファレンスにてスマホアプリ対応・常設ワールド対応が発表&実装されました。

大学受験が終わって入学を待つ時期にふと「プロジェクションマッピングとTRPGを組み合わせたら楽しいんじゃないか?」と思いつきました。

「360度映像体験にすれば良いんじゃないか」「VRの方が良いんじゃないか」「スマホ対応は必須なのではないか」「日本製プラットフォームの方が人を呼びやすいだろう」といった感じで友人と共に検討を重ねていった結果、clusterでVRTRPG制作を行うことになりました。

コラム:2020年のぐだぐだぶとん
当然というべきか、ゲーム制作をまるで理解していない学生達のプロジェクトは難航します。解説記事も少なく前例も満足になく、新生活やコロナウイルスの影響もあるという、なかなか大変な時期でした。2020年にプロダクトは出ませんでしたが、blenderやUnityの勉強、「地下壕の讃美歌」「虚空に夢を見る」の前身となるシナリオ執筆などをしていました。

clusterは定期的にアップデートを続け、徐々に機能が解放されていきます。セーブ機能の実装もこのあたりに行われていましたが、その頃は実力が追いついていなかったのでVRTRPGに活用されるのはまあまあ後になります。

clusterで初のVRTRPGイベントとして、「地下壕の讃美歌」公開テストプレイイベントを開催しました!

初のイベントながら非常に多くの方にご来場頂き、VRTRPGの取り組みを知って貰える機会になりました。今でも良い思い出です。

当時の記事を読み返すと、この頃は呼称がVRTRPG・VR×TRPG・VRPGでひどく表記ゆれしており、LARP寄りだとかTRPG寄りだとか、VRTRPGの中の区分の呼称にも悩んでいたのが伺えますね。

「VR空間上で机を囲み、シナリオの進行に合わせて周囲の3Dモデルが変化していく」着座型のVRTRPGの第一作として『全て忘れてしまえたなら』を公開しました。

シナリオ・ワールド・アバターをパッケージとして配布するVRTRPGはこれが世界初です。

この頃にはVRTRPG用ダイスパネルが既に制作されていました。弊サークルメンバーのFlorが制作したもので、VRでもパソコンでも使いやすい仕様になっていたのは流石ですね。

しかし一方で、「Unity上では起きないけどclusterでのみ起きる周知されていないバグ」に悩まされる時期でもありました。

着座型VRTRPGの汎用ワールド・TRPG好きの集会所として「ぐだぐだ書房」という運営型のワールドとdiscordを始めました。

ただ、2022年以降はガッツリ作りこむ主観探索型VRTRPGをメインに活動していくことになり、徐々にフェードアウトしました…

※discordは2024年に解散しました。ぐだぐだぶとんの活動を追いかけたい方は「ぐだぶfans」に、clusterでTRPGを遊びたい方は「タワミラ」に参加すると良いですよ!

「シナリオの世界を完全再現し、自分が主人公のアバターを纏って探索できる」主観探索型のVRTRPGの第一作として『ハローバーチャル』を公開しました。

貴方は現実と仮想の未来を目撃する———
「さぁ、選んで。そして、貴方の答えを、貴方の話を聞かせて。」

「主観探索型VRTRPGはどうあるべきか」ということが未開拓な時代で、チーム全体を動かして制作するのは難しいと感じ、自分がシナリオライターとワールドクリエイターを兼任するようになりました。

VRを知っててTRPGを知らない層にも届けようと、VRに関連するSFチックなシナリオに仕上げました。出張GMを重ねて確か50卓以上は回したはずです。若さですね。

コラム:今振り返ると
テストプレイ段階の出来は思い返したくないレベルで酷く、完成品もVRらしさがまだ十分に組み込めていない「TRPGをVRで遊べるようにしただけ」という自己評価ですが、「VRでTRPGってホントにできるの?」という壁を破り、自分の実力を急成長させた作品だったと思います。
NeosTRPGフォース(現:とらいばーる)のように、cluster外の人と話すようになったのもこの時期からだった気がしますね。

cluster内でアバターを作れる機能として「AvatarMaker」が登場しました!それまではVroidStudioやREALITYを使用する必要があり、ハードルが高かったのでこれはかなり大きなアップデートでした。

度重なる更新でアバター制作に使える素材の数や利便性も増しており、現在ではVRTRPGを遊ぶ環境として様々なプラットフォームを比較した時のclusterの強みになっています。

弊サークルメンバーの朝月葵が書いていたTRPGシナリオ「静寂に捧ぐ祝詞」を、着座型VRTRPGとして遊べるようにしようと簡単なワールドを作りました。

着座型VRTRPG開拓史
以前の「全て忘れてしまえたなら」よりもGM/PL間での情報共有が楽になるように、各PLの席に情報確認システムを設けました。
ですが、2024年になってClusterCreatorKitのアップデートが入り、PlayerLocalUIがクリックできるようになり、追加キー入力を受け付けるようになったので、最適な仕様は変わっていくことでしょう。

それまでは自分のアバターをclusterで利用できるようにするためにポリゴン数やテクスチャ解像度などの細かい制限をクリアする必要があったのですが、その制限が撤廃されました。

アバター事情に詳しくない人が制限に詰まってしまうことがなくなり、より初心者を呼び込みやすくなったという点で、VRTRPGから見ても嬉しいアップデートでした。

草羽エルさんが主催で、ハスさんがワールドを制作したイベント「cluster人狼」が開催されました。VRTRPGの近似作品としてこちらも紹介します。

人狼のシステムがcluster上で完結し、処刑は3Dモデルの銃を使って行える。配信映えするカメラギミックも搭載した完成度の高いイベントでした!

自分と朝月葵(弊サークルメンバー)もテストプレイやイベント出演でご協力させて頂きました。後に紹介するVRマダミス制作のカメラギミックはこの経験を活かしたもので、制作時にハスさんにアドバイスも頂いていました。

ハスさんは汎用TRPGワールドの制作や一般向け人狼ワールドの公開もしていました。

RenderTextureを利用してスクリーンに投影した画像を複数枚保管する裏技はこのあたりに開拓されたもので、ハスさんの教えを受けてダイスパネルの裏面に実装しました。

マス目に合わせてオブジェクトを配置し、Unity不要でワールドを制作できる「ワールドクラフト」機能がリリースされました。

この頃は公式が用意したアセットのみ使える状態で、サイコロも振れなかったのでTRPGを遊ぶために利用されることはありませんでした。

ここからワールドクラフトストアの開始・ライティング調整機能・ScriptableItemの機能拡大・公式アセットの拡充といった、clusterの継続的なアップデートが行われます。このアップデートの継続力は本当に凄いことで、VRTRPGを遊ぶのに理想的な環境にどんどん近づいてきています。

clusterのVRTRPG活動を追いかけていない人に最新情報をまとめて届けるために、clusterイベント「ぐだぐだダイレクト」を開催しました。

VRTRPG用ダイスパネル、VRTRPG用キャラクターシートの一般公開も行いました!

鬼姫キキさんが執筆したエモクロアTRPGシナリオ「星まつり、廻らない砂時計」を着座型VRTRPGとして遊べるようにワールドを制作し、公開しました。

このシナリオは着座型VRTRPGと非常に相性が良かった印象です。着座型VRTRPG制作にチャレンジしたい人は一度遊んでみてお手本にすると良いかもしれません。

泥紳士さんが執筆したクトゥルフ神話TRPGシナリオ「身も凍るような体験」を着座型VRTRPGとして遊べるようにワールドを制作し、公開しました。

神話生物のルリム・シャイコースに追われる体験ができる短めのシナリオです。VRTRPGでチェイスをどう表現するか考える良い機会にもなりました。

この頃はVRTRPG制作者を増やしてVRTRPGを盛り上げられないかと考えていて、既存TRPGシナリオのVRTRPG化に自分がワールドクリエイターとして手伝うといった形を試していました。

とはいえ、実際にやってみて制作コストや継続的な運用の難しさがあったため、それ以降は自作の制作と運用に集中することにしました。

clusterワールド制作に用いるゲームエンジン「Unity」のバージョンが2021.3に変更されました。

これより前に投稿されたワールドは引き続き遊べるものの、そのままだと透過表現が壊れてしまうので、Unityのバージョンを変更してワールドを更新する必要が出ました。

他のVRSNSと比較すると被害はかなり軽く抑えられていた印象ですが、それでもプロジェクトデータを失ったワールドが更新できずに壊れたままになったり、ワールドを多数投稿している人は全てを更新する必要があったりと、VRSNSでワールドを保持し続けることの難しさを感じさせる出来事でした。

VR謎解きアトラクション「DETECT」より、『Break the JINX 絶望の廃倉庫』の公演が開始しました。

貴方はこの街に根付くギャング組織「BravePigeons」のメンバーだ。 長年の抗争の末、敵組織「UglyPhoenixes」の幹部である”不死身のジンクス”を、とある廃倉庫へと追い詰めた。 ついにジンクスを仕留めたと思った、その瞬間ー
気が付くと貴方の両腕は動かない。どうやら縄で縛られているようだ。 目の前には悠々と眠っているジンクスの姿。 このままでは「UglyPhoenixes」の増援に殺されてしまう。 この危機的状況から、貴方は脱出できるだろうか?

NPCをアクターが演じることでゲームの中に入ったような体験ができるマルチプレイの謎解き公演で、アクターがいる強みを十分に発揮した良い作品だったと思います。めどうさんが主催のプロジェクトで、弊サークルも制作に協力し、自分はワールド制作の一部とシナリオ執筆を担当しました。

主観探索型のVRTRPG「地下壕の讃美歌」を公開しました!

舞台は太平洋戦争中に掘削された松代象山地下壕。
観光に来ていた貴方は、突然の地下壕の崩落に巻き込まれ閉じ込められてしまう。
狂気の実験。変わり果てた失踪者。異形の怪物。
この地下壕に隠された過去とは、秘密とは——

「VR空間にシナリオの舞台を完全再現したら、本来あったTRPGの自由度を奪ってしまうのでは?」と誰もが思っていた課題を「発見の共有」によって解決し、「最高の主人公体験」を実現した作品になりました。

しゃどーるさんが執筆したマーダーミステリー風ゲーム「汐鳴りの唄」をVRで遊べるよう、Vtuberのフィルさんがワールドを制作し、公開したものです。

シナリオ・ワールド配布型のcluster用VRTRPG(に近いもの)が、弊サークル外で出たのは恐らくこれが初。プレイ配信のアーカイブも残っているのでぜひ見てみてください。

それまではアイテムのアウトラインが壁越しでも表示されてしまう仕様で、脱出ゲームや隠しアイテムの制作が難しい環境でした。そのため、cluster標準のアウトラインを消してワールド制作者側で別のアウトラインをつける…ということをやっていました。

このアップデートでオブジェクトの前後関係が反映されるようになり、以降は裏技的な努力が無くても隠し要素が実装できるようになりました。

Unity・ワールドクラフトの両方でJavaScriptのコードが書けるようになりました!書けるコードの種類もアップデートによって徐々に追加され、今ではClusterCreatorKitよりも多機能になってきましたね。

また、アクセサリが使えるようになったのもVRTRPG体験を更に良くしました。

主観探索型のVRTRPG「虚空に夢を見る」を公開しました!

「お前達はダゴン秘密教団のものか?」
鉄格子の向こうから、醜悪な声が貴方に問いかける。
血を、道具を、知性を。持てる力の全てを駆使して異端の島から脱出せよ。
―――狂気に満ちたこの世界で、祈りは、果たして届くのか。

NPCのフルモーション対応やTRPGの自由度を「機転」に変換する手法など、主観探索型VRTRPGをさらに一段階開拓した作品でした。

第二回「ぐだぐだダイレクト」では作品の紹介のほかに、各VRSNSで活動しているVRTRPG団体が連携する新たな団体「ParaDice」のお披露目もありました。

clusterのアバターモーションが変更され、アバターが生きているように感じられる自然な動きになった…のですが、待機モーション中に視界が揺れる仕様も追加されました。

自然な動きを実現するためのトレードオフなのですが、スマホ/パソコン版でワールド内の文字を読んでいる際に勝手に視界が揺れてしまい、VRTRPGやVRマダミスでパソコンのプレイヤーが3D酔いしやすくなる問題が発生しました。

なんとか裏技で直せないか検討するも不可能で、プレイヤーの体験を良く保つことを考えるのであれば、突然仕様が変わることがあるメタバース(VRSNS)を離れ、プラットフォームがゲーム体験を変えることのないSteamに移行するべきなのではと考え始めました。

コラム:clusterから離れることについて
このような書き方をすると、「筆者はclusterに文句を言っているんだ!」と受け取られるかもしれませんが、そうではありません。clusterはゲーム制作に挑戦するのに非常に良いプラットフォームでしたし、clusterはclusterの理想を実現するために頑張っているので方向性の違いは必ず出ます。誰が悪いという話ではなく、合わなくなったら別の道を考える位の気楽さで良いのだと思います。

主観探索型のVRTRPG「静寂に捧ぐ祝詞」を公開しました!
2021年12月に着座型VRTRPGとして公開した作品を、主観探索型に合うようにシナリオを書き直したものです。

「3月21日23時、小学校で待っています 篠宮 尊」
行方不明になったはずの先生から突然届いた手紙。
幼少期を過ごした蛇塚村に帰省していた共鳴者たちは、手紙に誘われるまま夜の学校に足を踏み入れる。

VRマルチプレイストーリーゲームの強みを的確に捉えた「孤独と郷愁」のコンセプトや、情報アイテムと区別されたRP用アイテムによる自由度の確保、回想シーンを引き立てる黒窓演出、VRTRPGにおける目星の必要性に対する回答など、多くの開拓を提示し、VRTRPGを語る上で欠かせない作品になりました。

この制作が終わってから弊サークルは、コンテストへの出展や積極的な動画配信に取り組んでいくことになります。動画配信では面白いクリップが作れると良いなと思っており、めっちゃ助走つけて幼馴染に再会する今井モノさんは個人的なベストクリップになりました。

外部通信機能が実装され、BCDiceをはじめとするTRPGに有用なツールが利用できるようになりました!

BCDiceが使えるワールドクラフトアイテムを公開するなど、銀鮭さんがclusterでのVRTRPGに便利なツールを開発しています。

ネシロさんを代表としたclusterTRPGコミュニティ「タワミラ」が結成されました!clusterでVRTRPGを遊びたい人はぜひ参加してください。

ワールドクラフトとUnityの両方でVRTRPGの制作にチャレンジする人が増え、clusterのVRTRPGが更に活気立とうとしているのを感じます。「タワミラ」のこれからに期待大です。

VRマダミスサークル「アベルノート」より、『タイムピースにジャムを添えて』が公開されました。

圧倒的な遊びやすさと没入感を兼ね備えたVRマダミス第一作。
『不思議の国のアリス』モチーフのVTuberとなって、起こり得ない「バーチャル空間での殺人」の謎を解き明かしましょう。

Vtuberのフィルさんが主催のプロジェクトで、自分はワールド制作を担当しました。VRでもパソコンでも遊びやすいシステム、録画が映えるカメラギミックなど、システム面でも完成度の高い作品だったと思います。

ちなみに、clusterのscriptの機能拡充でVR配信の様子を綺麗に撮りやすくなったのもこの頃です。(この機能が正式版になったのは本作リリース後)

左画面がPLのアバターを映し、右画面がPLの視界を映している追従式カメラ

 VRChatの「CatsUdon」、Resoniteの「とらいばーる」、clusterの「ぐだぐだぶとん」「タワミラ」といった、それぞれのプラットフォームでVRTRPG活動をしているコミュニティが集まり、VRTRPGコンベンション「ばちゃこん2024」を開催しました!

そして遂に、VRTRPGサークル「ぐだぐだぶとん」はclusterを離れ、Steamで3Dマーダーミステリーを制作する決断をしました。

「映画の主人公体験」をコンセプトに、マダミス体験の全てを没入型3Dで味わえる3Dマーダーミステリー『煤の悪魔の殺人』を制作します!!!!

詳しい開発の経緯は以下の記事で語っていますが、チームの実力もついてきた今を好機として、プレイヤーにとって遊びやすく、このジャンルがより広まっていくことを目指して頑張っています。

本格的に開発を行う本作のため、クラウドファンディングや活動報告の拡散などで、ぜひご支援頂けると幸いです!!!!

…と、宣伝で終わりたかった訳ではないのです。

この記事で語りたかったのは、メタバースプラットフォーム上での開発における、プラットフォームとクリエイターの並走の歴史でした。

現在だけを切り取れば、「なんでここまで到達するのに5年も掛かっているんだ!」と思えるかもしれませんが、色々な挑戦と失敗はありながらも、プラットフォームの成長と共にクリエイターも成長し、ここまで積み上げてきたのです。

なんならclusterのVRTRPGの開拓は、理論値とはいかないまでもかなり早いスピードで進んできたと言えるでしょう。そしてそこには、プラットフォームの努力とクリエイターの努力、それを支えるファンの努力がありました。

ぐだぐだぶとんのclusterでのVRTRPG活動は、2024年度をもって一旦停止(作品はできる限り維持)となりますが、この機会に改めて、関わって頂いた皆様に「ありがとう」を言わせて頂きたく思います。

そして皆様には、この長かった歴史を共有し、これまでの道のりに「お疲れ様」を、これからの活動に「頑張って」と言っていただけると幸いです。

それでは、「2024年までのclusterのVRTRPG史」はこれで終わりです。終活としてなかなかいい記事だったのではないでしょうか?

お相手は、逆路でした!
GooD night Boy…

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