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私とオーストラリアとランニング②

イースターホリデーも終わって普段の日常に戻る。


トレーニングデイ

エドから今日はジムのトレッドミルで60分のThreshold(閾値走)を行うと連絡が入る。家に待ち合わせて、ウォーミングアップでジムまで行くようだ。
正確にはLactate Threshold(乳酸閾値)と呼ばれLTの形で訳される。主に血液中の乳酸濃度が高まるペースで走ることを示す。
身体の主なエネルギー源は脂肪と糖質であり、比較的楽な運動では主に脂肪がエネルギーで使われる。運動強度が高まればエネルギー源は徐々に糖の比重が多くなる。糖を分解してエネルギーを作る過程で乳酸が作られる。走るペースを上げるとその分エネルギーを多く要するため、糖の分解スピードが早まり乳酸も多く作られて血液中の乳酸濃度が高まる仕組みだ。乳酸自体は疲労の源ではないが、疲労物質との相関関係があるために指標として用いられる。
乳酸濃度が高まるあたりのペースを越えるか超えないかで維持できるペースの時間が大きく変わってくるため、長距離選手にはLTのペースが速くなることはスタミナ向上につながる。そういった狙いもあってLTという名のもとに練習を行うわけだ。
ただ正確にこのペースを知ることは難しく、その日の体調や気候、路面の状態によっても左右されるためある程度感覚に頼るしかない。

エドは強度を一定に保つためにペース設定をできるトレッドミルを利用している。

家を10:30に出発するというので支度をしてエドの家に向かう。

基本的にエドの伝えてくる予定通りに進むことはない。30-45分の遅れを想定して動く必要がある。エドと計画を立てるときには心に大きな余裕を持っておかないと焦ったさが滲み出てくる。

時間通りにという日本の文化の正反対をいくようなタイプで。自分が関わらずに外から聞く分には自由奔放でいいように聞こえるが、一緒に動く側になると同じようなことは言ってられない。


さて10時20分くらいに家につくと明らかに寝起きのエドがキッチンでトーストを加えている。まず準備に時間がかかりそうなのでエドのお母さんとおしゃべり。お母さんもまた気さくでフレンドリーな方だ。学校の先生を勤めながら、最近は大学院での勉強も始めた忙しいのだと。この後はピラティスのレッスンも予定しているの出そうだ。

すごく楽しそうに「私は忙しいのよ」というのであまり同情する気にはなれないが、新しいことにチャレンジする姿勢は見習うべきところだ。

「私のピラティスが終わったら迎えにいくからランチに行きましょう」

そうやって話しているうちにようやくエドの支度ができた。

11時10分。予定から40分遅れ、まさに予想通りだ。


彼が住むモスマンという地域では彼のことを知らない人がいないのではないかというくらいにすれ違う人々と挨拶を交わす。

そんな彼に地元のジムも無料で使わせてくれるのだと。おまけの私ももちろん無料だ。


Thresholdのスタート(2'57/km)


さてジムに到着。今日のエドの2度の傾斜をつけて2’57/kmのペースで走るのだと。60分で20km少々走る換算だ。本当にできるのか疑わしいところだが彼がそういうので、私は隣で傾斜0.5度、5’10/kmペースでまったり走ることに。

ヘッドホンをつけて音楽を聴きながら時速20km以上でトレッドミルを走る奴は珍しいだろう。

到着した当初はいたお客さんやトレーナーの姿も気がつけばいなくなり、2台のトレッドミルの音だけがジム内に響き渡る。

20分が経過する頃にはエドの汗が飛び散りだす。それでもまだゆとりはありそうで時折「All good?」と話しかけてくる。

問題ないと返すといつも通りの「Sweet」という返事が。いまだにSweetの使い所がわかっていないが何かとエドが使う言葉の一つだ。もう一つは「easy」

30分が経ちトレッドミルを走るのもだるくなった私は外に出て走ることに。ビーチを待ち合わせにして残りの30分は外で、エドは引き続きトレッドミルを走る。


モスマンの街を散策しながら走る。起伏が多く、ブッシュウォークも通っていてトレイルランニングも楽しめるいいところだ。

芝生の広場がこんなところにもある。数ブロックに一つはあるのではないかと思えるシドニー地域だ。ちなみにシドニーのランナーはメルボルンはもっと良いと言い、メルボルンのランナーはキャンベラが一番だ、と言っていたのを思い出した。


さてこの前のビーチで待ち合わせ。エドがダウンジョグでやってきた。ダウンジョグは20分だという。ビーチに到着すると18分少々を経過したあたりで「あと2分くらい走ってくる」と駐車場周辺を引き続き走る。

「そこは細かいのかい」と思わず言いたくなるのが本音だ。


ランニングの後は必ず海に飛び込むのがエドの習慣。日本の大学を考えていたときに東海大が候補に上がった理由の一つに近くにビーチがあるということが挙げられる。

そこにお母さんも到着。愛犬のCub(カブ)も連れてきた。野球付きのエドはシカゴ・カブスのファンだ。両親が以前にシカゴに住んでいたことが理由にあるという。そこから名前を取ってCubと名付けたという。

3人でランチに向かう。メニューを見てもなんだかよくわからないので外食時は頼んだもののイメージと異なるものが出てくるケースは多い。

そこにエドのお父さんまでやってきて4人でランチになる。

ランチを終えてエドの家で少しまったり。夕方からはフラーの練習(大会に向けての調整)があるため移動をしなければいけない。

「それなら送らないとね」

エドのお母さんはそうやって送迎してくれることが多い。5時をすぎると「行こうか」とエドのお母さんが告げフラーの練習に向かう。エドは午後のジョグへと出かけて行った。

フラーの練習場にエドのお母さんが送ってくれる。すごくありがたく、また迷惑をかけすぎじゃないかと遠慮してしまうことは以前にもしばしばあった。しかし過剰な遠慮はここの文化ではかえって良くないように思えてくるので素直に「Thank you」と言って必要なオファーは受けいるようにしている。もちろん本当に必要がない時は「No」というのも大切だ。


到着する頃には日も暮れ始める。この日の練習場は400mの芝生のトラック。

Central Performance trackという名のチームで400mから5000mまでをターゲットにジュニアからシニアまでの選手が所属する。

この日は先日にオーストラリア選手権が行われたばかりということもあり、参加者は少ないのだとか。それでも男女合わせ10人程度の選手がいる。


和やかな雰囲気で選手たちが集まり、コーチのベン・リディーが選手に声をかけている。みんながウォームアップに行くと、ベンはこちらに気づいて挨拶をしにきてくれた。

「ハロー。ランニングが大好きな日本人と聞いてるよ」

笑顔でこちらに話しかけてくれた。フラーのお母さんのひとみさんが話を通してくれていた。

日本の駅伝文化のことなど興味があるらしい。少しランニングの会話をするだけでお互いに興味の熱が湧き上がる

すごく楽しそうな表情のベン。

「今日は練習で時間がないけど、U18の大会でじっくり話そう」

そうやって楽しみはブリスベンにとっておき、ベンは練習へ戻る。


Central Performance Track選手達のウォーミングアップの様子

ドリルを終えた選手たちがスタート地点に集まりだすとさっきまでの陽気な表情は次第に消え始め、雰囲気はガラッと変わる。ピリッとする緊張感。選手みんなの意識が目に前のメニューに向かいだす。

ベンのスタイルは個別の練習調整が挙げられる。選手の当日の状態を見て変更は加えることは頻繁にあるのだという。3つほどのストップウォッチを首にかけ、それぞれのグループがスタートを切る。

4人の男性選手たち。主に800mランナー達だ。今度は女子のグループがスタート。

話を聞くとベンはペースが速くなりすぎることにすごく厳しいのだという。

さっきまでの陽気さは裏腹に大きな声がトラック中に響き渡り、ペースが速くなりすぎる選手には「That’s too fast」と怒鳴り声のように激が飛ぶそうだ。今日はみんなじっくり走れているのかその様子は見られなかった。

フラーは調整のため1人で(300m +200m)を3セット。

以前見た時よりも一段と走りにキレが出ている。300mは52秒、200mは30秒ぎりできっちり走ってくる。動きもリラックスしていて無理しているようには見えない。

フラー 200mのスタート

芝生で走るとタータンのトラックに比べてどのくらい遅くなるのか気になるところ、フラーに聞いてみると「だいたいBenは1周1-1.5秒くらい違うと言ってる」と答えてくれた。

1kmあたり3-4秒程度だろうか。

ちなみに私はそれどころじゃないくらいペースが落ち込んだ経験があるので、芝生でのランニングに慣れない人はもっと差が大きくなるのだろう。

こうやってフラーの最終調整は終了。金曜日に800mの予選が待ち受ける。

ジムと文化



水曜日。

今日は1人でマンリービーチまでの往復ジョグ。本当は以前に日本のランニングツアーを経験したTRTランニングクラブを訪ねる予定だったが、その時間に練習場に向かっても誰もいなかったのでただの往復ジョグになってしまった。

ホームページやフェイスブックページに週の予定が掲載されるもチーム内の連絡で練習場所の変更はざらにあるという。内部と繋がりがないと練習にたどり着くのも難しい。

ジョグの後に携帯をみるとエドからの連絡が。ジムでのトレーニングをやるそうなのでシティの中心にあるジムへ向かいことに。

ここのジムはエドのスポンサーになっているそうだ。

彼の性格はスポンサー獲得には打って付けかもしれない。プロランナーとして活動するには速さだけでは難しいところもある。

ALTER Gという重力調整ができるトレッドミルで体重の60%に設定にしてウォームアップを始める。

ALTER Gを使ったウォームアップ

そこからはトレーナーから与えられた種目ジャンプ、ストレングス、プライオメトリクスなどの動作をこなしていく。

陽気な性格はいいが、すぐに人と喋り出して中断することが多かった。トレーナーから毎回注意が入り表情がイラついているのが分かる。

私も思わず「真面目にやれよ」と言いたくもなった。




私も花王陸上部へのコンディショニング指導を行う時は動作ごとのフォームチェックは一般の人よりも厳しめに行う。その癖もあるのかエドの動きを見ていてここ注意しなくていいのかなと思うことは度々あった。以前にアメリカの大学でサッカー経験のある女性の指導をしたことがある。ストレングスと言って、重りを持って行うウエイトトレーニングなのだが、フォームが大雑把すぎるようにも感じたのを覚えている。大勢を一気に見るため細かい動作までは手が回らないこともあるのかもしれない。

私が実践指導を学んだR-bodyでは細かい部分まで目をむける。細かさを大事にする面はこのようなトレーニングでは大事だと思う。


そのあとは久々のシドニーの街を観光。物価の高さには目を見張るものがある。

最低賃金が世界で一番と聞いたが物価の高さも同様だ。

祝日には時給を2.5倍払わないといけないという。そのため雇う側も大変のようだ。日本では時給1000円くらいのアルバイトスタッフの仕事も5000円近くにまでなることもあるのだとか。

少し前にも述べたがいい点にだけ目を向ければ素敵な生活を送れる国にも思えるが、その分多くのホームレスを街中でも見かける。

何を最適化したいのかは人によって異なるため、ある国の文化が足枷にもなれば、後押ししてくれることもある。

どっちの文化がいいのか悪いのかを語るのが難しいのは自分がどう動きたいのか、どんなことを最適化したいのかで事情が異なってくるからだ。

エドの件でもそうだが、時間にルーズな文化に憧れを抱くこともある。大抵は自分が遅刻側にいる場合がそうではないのだろうか。つまり行動が遅れやすい側にいる時はルーズな文化は役に立ち、厳しい文化は苦しさを感じるのかもしれない。でも同じ人でも急ぎたい時はあるものだ。公共の交通機関が急いでいるときに遅れてくれば腹を立てる時もあるだろう。

ランニングの練習でも自分を律せない人は厳しく管理される文化が役に立つ時もあり、ルーズすぎる文化でダラダラと過ごしてしまい目的の行動を成し遂げれないこともある。

人の行動、目的は常に同じ方向を向くわけではないのでパーフェクトに自分の条件を満たしてくれる文化ないのだろう。


言語人類学者でありピダハンの著者でもあるエヴェレット博士は理論は文化に似ていると述べる。一つの理論の中には他の理論で豊富な言葉で解説している部分の説明がぽっかり抜けているものもあるのだそうだ。

例えばランナーの成功例でトレーニングの理論が語られることは多いにある。私もこの手の話は大好きだ。しかしトレーニング理論とランナーの成功例を一対一の関係で述べることはできない。個人の性格、気質、またどのように生活し、どのような人間関係を育んでいるのかなど、人が生きる上で他にも大事なことはたくさんあり、人間関係のなどの他の崩れからトレーニングに影響が出ることは珍しくもない。トレーニングに特化した理論はこの手の話がぽっかり抜けている。

練習や生活感を通して現地の文化に触れると自分が過ごす文化の嫌な部分、いい部分(あくまで私にとって)が感じられてくる。
一つの理論や文化が目的に対して時にはいい影響を及ぼす時もあれば、そうでもない時もあり、何を目標とするかにかかってくるというエヴェレット博士の言葉は的をえていると思う。

バスの窓から外を眺める中、気がつけばそんなことを深く考え出していた。


少し早めに帰宅し、テラスで夕陽を見ていると長男のショーンがやってきて「ビール飲む?」と聞いてきた。ビール瓶一本をもらい、一緒に飲むことに。

大学で音楽を学ぶショーンはよく家の中でもギターを弾きながら(音楽に詳しくないのでギターとしか言えないが正確な種類の楽器の名前がある)歌っている。

今晩は、バーでスコットランド人のミュージシャンの演奏を聞きにいくのだと。スコットランドの楽器があり、その音をギターで奏でる彼はすごくクールなのだと教えてくれた。

自分の好きなことを語る時のショーンの顔は生き生きとしている。その時間が待ち遠しいのが伝わってくる。

私がランニングについて語る時のように誰も興味を惹かれる何かを持っているのだろう。音楽については全然分からないが、話を聞いていて面白い。自分の興味あることを突き詰めていくと次第に興味深い人間へとなっていくのだろうか。聞き手が全然知らないことでも、大抵は興味深い人間の話は聞き手を引き込んでくれる。

この日グレッグはひと足さきに車でブリスベンへ出発した。フラーは25分程度の軽めのジョグで済ませたようだ。明日は走らないのだという。「大会の前日は走らないの?」と聞くと「うん」と一言。

旅とハプニング


いよいよブリスベンへ出発の日を迎えた。

私はエドのトラック練習をサポートしてから夕方のフライトで向かう。フラー達は午前中に家を出発。「See you in Brisbane」と言って一旦お別れ。


予定より30分ほど遅れてエドが迎えにきた。

この日の練習は3200m +1000m×3+(600m+400)×3本だ。

この日私は人生で初めて自転車の乗り込む。そしてペースメイクを行う。フライトの時間を変更してまで帯同した理由はエドの練習を見たかったのもあるが、自転車でトラックを走ってみたかったというのが本音だ。

施設にある自転車を借りて20分のウォームアップに向かう。エドがドリルなどを行う間にペース配分の練習を行う。

最初の3200mはトラック2周、外周のロードに出て、また最後にトラックを2周する変則的な走り方だ。

エドは現在7月のゴールドコーストマラソンに向けて準備中。この日はコーチがトータル9,10kmくらいになるようにと提案し、それをエドが自分で分割して距離、ペース設定を行った。

70秒切りくらいで引いてくれというエドの要望。正直ペース通り行けるかは自信がなかったので最初の200mを横に並びそこから前に出て引っ張ることに。

「67,68,69,70」ストップウォッチのタイムを読み上げながら70秒後半くらいで一周目を駆け抜ける。


1000mの1本目

ロードに出ると凹凸が多く、先導は難しいので後ろから眺めることに。再びトラックに戻って2周。最後の1周を再び先導して9分15秒程度でゴール。

少し休憩を挟み次は1000m。2’45程度と告げるエド。内心「本当に行けるか」と思うも口には出さずに「Got it」と返答。

30mほど手前からスタートし、100mすぎから先導を開始。1周目「63,64,」ちょっと速かったかなと思ったがエドのペースは安定して1本目は2’42でクリア。

2本目も同じように進み、3本目はシューズをスパイクに変更。2’40切りで引いてくれという。

1周目を64で入る。そこから一定を刻み最後は少しペースを上げて2’39で走破。

ここまでは正直、本当にできるか疑っていたが、なんなら火曜日のトレッドミルも疑わしく思っていたが本当に力をつけていたエドに驚いた。

この後は600m+400mが待っている。600mのペースは少し落とし、400mを切り替えるやり方だ。

1’40切り程度で600mを走り、400mは60秒。600mと400mの間は45秒と短く、セット間は2分空ける。

自転車で同じペースで引いてみると分かったがこの日は結構風も強く、いいコンディションとは言えない日だった。


いい練習ができたようで本人も納得の様子。こんなにハードな練習の時にも片手に携帯を持って音楽を流しながら走るエドにはあっぱれだ。


ダウンを終えてトラックを後にする。

帰りはまたビーチに寄って海へ飛び込む。エドお勧めのパイの店で昼を済ませることに。

中身が日本のカレーのような味でこれがまた思ったほか美味しかった。


モスマンのカフェでエドのお母さんと待ち合わせ。ここから空港まで一本で行ける最寄りの駅までわざわざ送ってくれる。

プロアスリートになったエドの成長を感じることができた数日間だったように思う。

シドニーにアシックス契約アスリートのチームを作るのが現在の目標のようだ。

「もしチームができたらスタッフに入れてくれ。日本の選手も加入できるように動くよ」と冗談半分に伝えて今回はこれでさよならだ。

エドの目標が達成できるように少しでも力になれればと思う。


エドのお母さんには前回の滞在時も含め数えきれないくらいの恩がある。クーパー家からの助けもそうだが、こうやって人に助けてもらう度に自分のちっぽけさを感じ、それでも強がって自分を大きく見せようとしてしまうことが恥ずかしく感じてくる。

「強がらない。必要以上に自分の存在を大きく見せようとしない。素直に人の助けを受け入れる」

これができるだけで随分と楽に生きていけるような気がした。


少し早めに空港に到着。検査も済ませてゲート前で待機すると飛行機が1時間ほど遅れるとのアナウンスが入る。

急ぎではないので仕方ない程度でそのまま待機すること30分程度だっただろうか、まさかの欠航のアナウンスが。

ジェットスターは欠航になることも珍しくないから気をつけてという忠告をいただいたのを思い出したが、まさか言われたそばから自分の身に降りかかるとは思ってもいなかった。

今日の便の振替はないというので翌日の早朝便、6時の飛行機に振替をお願いした。すぐに空港近くの宿を探すことに。余計な出費や予定の変更で腹立たしくもあり、なんとかならないか粘りたいところだが、このような時はさっさと現実を受け入れてできる行動に目を向けた方がいい。

想定外のことが起きると何かのせいにしたり、あの時ああしておけばよかったなど後悔の念にかられたりしてイライラしてしまいがちだ。今できることにすぐ切り替えることができれば、ロスは最小限に済むのに感情的になることでさらなるミスを追加してしまいやすい。


故障をした時の心境にやや似ているかもしれない。足を痛めて練習を休養した方がいい時に新しい練習プランに切り替えることよりも、「こんなの大したことないさ、治療に行けば治る」など何かと今起きている問題から目を背けてしまいやすい。しかし時間が経ってすぐに治りそうにないのが分かると「あの練習をやらなければよかった」など後悔が押し寄せる。しばらく経って現状を受け入れてようやく練習の計画を立て直す。

自分を落ち着かせてできることに集中。そう自分に言い聞かせて宿に移動。

明日は4時起きで空港に向かう予定だ。フラーの予選は11時25分。焦らなくても普通に移動すれば間に合う。そう自分に言い聞かせて寝る用意ができた。

「ピン」

携帯から通知オンが鳴る。

6時の振替便が欠航になったそうだ。


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