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心身のモビリティを広げる

各身体の関節をコントロールして動かせる範囲をモビリティと呼びます。特定の動きや、一定の姿勢で過ごす時間が長くなると次第に使わない関節の動きのモビリティは低下していきます。基本的には人は注意を向けなければ慣れ親しんだ姿勢に定着します。何か物を拾う、運ぶ、渡すなど特定の動作をする上でも身体に負担が少なく、効率の良い動きかどうかは関係なく、慣れ親しんだ動きに頼ってしまいます。ワンパターンの動きに頼り、その他の動きが出来なることは身体機能のベースが乏しくなり、色んな動きへの応用が効かなくなります。
神経を伝って脳から筋肉に信号が送られ、筋肉が収縮し、関節が動き、特定の動作へと繋がります。例え同じ動きをしていても、この脳から送られる信号パターンというの全く同じではありません。目には見えない部分で些細な変化が起きていて、身体的ベースが大きければこの信号パターンも増えるといいます。運動中の怪我は慣れてない予想外の動きをする時に負荷がかかると起きやすく、身体が疲労している時、人とぶつかりそうで突然方向転換をする時、限られたスペースで物を拾う必要がある時などです。

歩き始めたばかりの赤ちゃんは突然止まる、動きを変える、違う路面を歩くなど色んなパターンの歩行動作を試し、広いベースの元、歩くという動作を身につけていくといいます。

エリートレベルの長距離選手になれば、ジョギングをするだけで速くなることはありません。しかしジョギングが必要ない訳ではなく、むしろ重要なトレーニングの一部です。軽いジョギングで走る練習のベースが乏しければ、ペースを上げたハードな練習も多くこなすことはできず、能力の頭打ちに早い段階で直面します。
最終的にタイムを伸ばすための練習をするには、割合の差はあれど、色んなペースで走る練習が必要になり、そのベースの大きさが後に大きな役に立ちます。
走るペースにも色んな範囲を持たせることが大事です。

これは精神の部分、人の考えも同じようで注意を向けてないと思考のパターンが同じになりがちです。以前もこの考えで解決できたからと理由や、慣れ親しんだ思考パターンが通用しない分野、状況は避けるといったことを繰り返すと精神のモビリティは収縮してしまい、幅広い分野からのアイディアを用いて創造性を働かせることができなくなってしまいます。

実際にランニング、コンディショニングの指導をしていると個々の問題に直面します。ランニングで言えば、5kmなどの特定の距離に向けて練習を行なっていると、以前別の人で上手くいった練習パターン、もしくは昨年に記録を出した時の練習パターンに定着しがちになってしまいます。コンディションニングでは特定の動き、関節の動作パターンにエラーが出た時、慣れしたんだパターンで解決しようとしてしまいます。
これは何でもかんでもやり方を変えろということではなく、結果的に似通ったパターンになることは当然あります。しかし同じ人の指導でも状況が変わっているという事実を考慮して考え直すことをしなければ慣れ親しんだ思考のパターンに落ち着いてしまい、その練習パターンが通用しなくなった時に新しいアイディアを生み出すことができなくなってしまいます。

自分と反対意見の人に耳を傾けるのもありですし、違う分野の人の話に触れるなども一定の思考パターンに陥る緩衝材となってくれます。
身体を強くするためには不快と感じる負荷が必要なように、精神的に不快と感じるような意見に触れることも成長のためには大事になります。


ジャーナリストのデイビッド・エプスタインは著書Rangeで優秀な科学者や研究者は専門分野以外に熱心な趣味があるといい、一見関係のない分野からアイディアを得て、専門分野の問題の解決に繋げるといいます。

専門以外のことも学ぶことで得られるメリットがあるように、専門以外の動きができるメリットもあります。
同じランニングの練習でも色んな種目があり、範囲を広げることは可能です。
指導者も選手も練習の負荷という観点だけではなく、専門分野以外の種目に取り組むことで精神のモビリティが広がり、専門種目の練習に新たなアイディアを生み出せると思います。

長期的に健康な身体、精神を保つためにも心身両方のモビリティを広げておく必要があると思います。


日常からの学び、ランニング情報を伝えていきたいと思います。次の活動を広げるためにいいなと思った方サポートいただけるとありがたいです。。