見出し画像

記憶と意識と混乱と

 大学1年の1月のことだ、当時受けられる授業をほとんど受けていた僕は、テスト勉強やレポートの作成を大量に抱えていた。アルバイトをしていたこともあり、あまり勉強を進められずにテスト前日の日曜日を迎えてしまったのだ。
 僕の部屋にはパソコンデスクとローテーブルがあり、それぞれの机に異なる科目のノートやレジュメ資料を用意し、集中力が切れるたびに場所や姿勢を変えて長時間の勉強に耐えているのだが、その日はいくつもの勉強を同時進行する必要があり、床一面にもプリントを広げて勉強していた。

 12時を過ぎたあたりで休憩を兼ねて昼飯を買いに行くことにしたのだが、春休みに行われる部活の合宿の前金を下ろしていなかったのでついでに郵便局にも行くことにした。
 前金は25000円必要だったが昼飯のことも考え30000円を下ろした。当時初めてこんな大金を財布に入れたのでかなりドキドキしたのを覚えている。
 コンビニでカップ麺を買い、家に着くと早速お湯を沸かした。待っている間に部屋で財布からお札を出すと当然29000円が出てくるのだが、机の上に並べてみるとやはりすごい光景で、調子に乗った僕は札束を上に投げて撒き散らしたりして、ちょっとした金持ち気分を味わっていた。
 そんなことをしているうちにお湯が沸いたので火を止めに行き、そのままリビングで食事をすませることにした。食べ終わると、前日の夜遅くまで勉強していたのもあってか急に強い睡魔に襲われ、そのままリビングで寝てしまった。

 しばらくして目を覚まし、ボーっとしながら部屋に戻ると恐ろしい光景が広がっていた。机や床には大量のレジュメ資料やいろんな数式が書き込まれたルーズリーフノートが散らばっており、その上にはぱっと見合計29000円ほどのお札がばらまかれているのだ。それを見た瞬間に僕の中で、この29000円を元手に何か良からぬ研究をしている人物がいるのではないか!?という推測が脳裏をよぎった。

 しかしその先の記憶がない。思い出せるのはその日の夜めちゃくちゃ必死で勉強したということだけだ。

 もしかしたら記憶がないだけであなたの部屋でも謎の人物による研究が行われていたことがあるのではないだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?