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「日本の15歳はなぜ学力が高いのか」ルーシー・クレハン著 書評

<概要>

イギリス人の現役教師ルーシー・クレハン先生がP ISAと呼ばれる国際テストで成績トップ10に入った国・地域の中から上海・シンガポール・日本・フィンランド・カナダを選択し、現地の教師への取材含めた実地調査によって成績優秀な理由を探った書籍。

<コメント>

成績優秀な理由は、意外や意外な結論です。結論は、

15歳までに能力別クラス分けをせず、子供の能力の高低に関わらず同じクラスで勉強させた方が、全体の学力は向上する

ということです。

より正確には

エリート教育には能力別の方が良いのですが、全体底上げ教育には能力別にしない方が良い。

面白いのは、この様な傾向は東アジアに特徴的で、西欧では「そもそも知的能力は先天的なもの」というのが常識であり、早いうちからクラス別に勉強したほうが良いと思っていること。能力の高い人にはその方が良いかもしれないが、全体の底上げという意味では東アジアの教育法の方が効果的なのがポイント。

日本の教育システムでは、少なくとも最初は誰もが同等の知能を持ち、結果として「学力に差が出るのは環境や個人の意欲のせい」だという考え方が支配的なので(本当が違うかもしれないが)。

つまり、能力の低い子供達だけを集めて教育するよりも、知力の高い子供達とミックスして教育する方が、効果的ということ。

一方で、日本では子供達の人格を社会でうまくやっていける様に教育しますが、西洋では個性を礼賛するあまり、社会を乱す様な行為をしても放置しがちであって、この点日本を学ぶべきというのも、西洋人からしたら、逆に日本の調和的な無個性教育の方が、良いと思ってしまうのは、他人の芝は青いということなのでしょうか。

コロナ問題でもこの習慣の違いは決定的。

◼️強力な同調圧力によって法律がなくても自粛する日本人
◼️強力な個人主義によって法律を作っても自粛にしたがわない人もいる西欧人

国民性が見事に反映されているのは教育だけではありません。

*写真:2018年ヘルシンキ ムーミンショップのニョロニョロ

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