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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#哲学

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

哲学発祥の地「ミレトス」に行ってきました

今回のトルコ・ギリシア訪問の目的の一つは、トルコ、イオニア地方の古代都市ミレトス。 哲学はどうやって生まれたのか?その生まれた、まさにその場所に行ってみたかったのです。その場所はトルコ、西アナトリア地方の古代都市「ミレトス」。 ミレトスは、そこそこ遺跡も残っているものの、観光ツアーで行くような場所ではないし、 バスなど公共交通機関もないような辺鄙な場所なので、空港でレンタカー(フィアット クロス)借りて行ってきたのです。 ▪️なぜ哲学は誕生したのか?古代ギリシアでは、

すべては欲望から始まる『新・哲学入門』竹田青嗣著 読了

<概要>と著者が最終章で述べた内容が本書の趣旨。 著者の大作『欲望論』の概要版として、「欲望論」を「新・哲学」という名に置き換えて出版された新書(「入門」とはいえ、それなりの哲学的素養必要)。 <コメント>竹田青嗣の最新作読了。人によって「哲学とは何か?」が違って当然だと思いますが、そして哲学とは、任意の前提(神、教義、神話、聖人、ウヨク、サヨク等の個別の共同的価値観=イデオロギー)をおかずに理性でもってこの世界を説明する学問のことだと一般に言われていますが、竹田哲学は現

『形而上学』アリストテレス著 書評

<概要>世界の原理とそのありようをどのような形で理解すればよいか、アリストテレスがプラトン含めた過去の説とその課題も紹介した上で自説を展開。 【上巻】世界の構成要素(質料&形相)とその動的姿(生成と消滅&可能態→現実態)について解説。 【下巻】「神学論(第十二巻)」が主要課題。これに加え「天体の運行」「数」「イデア」などの諸概念に関する、アリストテレスの存在論(目的論に基づく存在論)との関係性などの関しての解説。 <コメント>アリストテレスのもっとも重要な著作と言われて

「正義とは何か」神島裕子著 書評

<概要>ロールズ「正義論」を訳した著者が、ギリシア哲学を確認した上で、6つのアメリカ政治哲学(リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズム)をジャンル別にわかりやすく解説した著作。 <コメント>後半のフェミニズム・コスモポリタニズム・ナショナリズムの議論は、私の知識不足・理解力不足であまりよく理解できませんでしたが、前半の3つの政治哲学に関しては、より深く理解するには、ちょうど良いボリュームでした。 ちなみに最初の

『暇と退屈の倫理学』國分功一郎「私評その1」

<概要>衣食住満ち足りた先進国に生きる我々は、一体どう生きるべきか?を「暇と退屈」をキーワードにその人類学的・歴史学的・思想的背景を織り交ぜながら、著者なりの結論を導き出した現代思想的、思想書。 <コメント>受講しているセミナーの課題図書『暇と退屈の倫理学』通読。これは非常に面白くて一気に読んでしまいました。以下長くなりそうなので、複数回に分けて展開します。 ■現代思想家に共通する考え方今回の國分功一郎含め、千葉雅也や東浩紀など、日本で人気の現代思想家は、だいたいみんな同

植物に世界はどう見えるか「植物の環世界」

「生物に世界はどう見えるか」、今回は個別の生物種についての具体的な環世界の紹介。 まずは「植物の環世界」。 ■「個体」という概念に当てはまらないのが植物植物は単細胞生物と多細胞生物と個体と群体の区分が曖昧な生き物。くっついたり離れたり、という現象が、細胞単位でも個体単位でも頻繁に起こるといいます。 毎年、我々が花見するソメイヨシノという桜は、全て同じ遺伝子。接木という昔ながらの「クローン」の手法で増やしていった樹木なので、みんな同じ遺伝子ということ。 一方で、林や森を

哲学者「東浩紀」&温泉旅館「松本本箱」

松本駅からバスで30分の浅間温泉に行ってきました。 ちょうど「松山市の道後温泉」「上田市の別所温泉」「甲府市の石和温泉」みたいな位置づけで、温泉って鉱泉のように掘れば出る場所にあるわけではない(地質学的には断層の裂け目や火山の近くに出やすい)と思うのですが「都市と温泉→日常と非日常」の地理的位置づけが、非常に面白い関係ではないかと思います。 かつては、道後温泉と同じように市街と温泉地を結ぶ路面電車が走っていたそうですが、1960年代に廃線になったそうです(今は1時間に1〜

言語ゲームとは何か?「はじめての言語ゲーム」書評

<概要> 哲学者ウィトゲンシュタインの伝記を綴りながら彼の主要テーマである「言語ゲーム」の発想の背景とその内容を紹介した上で、キリスト教・仏教・国学などの思想における言語ゲームの具体的活用方法を例示した著作。 <コメント> 著者の場合「言語ゲームとは、規則(ルール)に従った、人々のふるまい」と定義しています。 ヴィトゲンシュタインは当初「写像理論(picture theory)と言って世界(出来事の集まり)と言語(文章の集まり)は、ピッタリ、ワントゥーワンで対応していると

<普遍性>をつくる哲学:岩内章太郎著 書評

<概要>現在進行形の哲学(構築主義や新しい実在論など)をわかりやすく解説した上で、これらを乗り越える最も最先端かつ説得力のある哲学「普遍性をつくる哲学=現象学」を紹介した2021年6月出版の新作。 具体的には、哲学の目的を「暴力による社会から、話し合いによる社会への転換」と位置付け、善の原始契約に基づき、現象学的言語ゲームを展開することによって「話し合いによる社会」は可能と提言。 話し合いによる社会によって自由な社会は維持されるという前提のもとで「関係性の充足」や「ソロ充

立花隆(自然科学)と佐藤優(形而上学)の限界

文藝春秋今月号「立花隆特集」の中の佐藤優の記事『「私とは波長が合わなかった「形而上学※論」』は興味深い記事でした。 ※形而上学 何らかの任意の前提=絶対真理をおいてロジックを組み立てる学問や思想のこと 私も立花隆の本は学生時代に「文明の逆説」を読んで感銘を受けて以降、「日本共産党研究」や「田中角栄研究」「宇宙からの帰還」「農協」「脳死」の他、たくさん愛読させていただきました。ご冥福を祈りします。 さて、佐藤優の記事について簡単に要約すると 「佐藤優は、キリスト教信者で

古代は「仏教」、現代は「啓蒙主義」

古代史の勉強をしたり、実際に奈良のお寺を回っていると、奈良時代の社会を支える虚構(=社会を成り立たせる物語)は仏教(今は啓蒙主義)だったんだな、と改めて感じます。 (薬師寺:2021年春、以下同様) 今に生きる我々がお寺を訪れるのは、多くの人は観光資源としての建築や仏像など、芸術鑑賞やちょっとしたお願い事をするためだと思います。しかし当時の人にとっては、芸術体験やちょっとしたお願いのためために訪れたのではなく、病気や貧困などの真剣な悩みを解消するために訪れていたでしょうし

「判断力批判:序論」に基づくカント哲学の図解

ドイツの哲学者カントに関しては、哲学勉強には必須の哲学者らしく、数年後ぐらいに取り組もうと思っていたのですが、現在受講している講義の課題として「判断力批判」の序論の箇所が取り上げられたので、その全体像の図解を試みました。 同じ課題でヘーゲルも取り上げられたのですが、双方とも一般に我々が使っている言葉の意味と文章の意味が違っているらしく大変読みにくい。 特にヘーゲルの方は半分も理解できず。哲学者平原卓によれば、ヘーゲル語をまずは理解した上で取り組まないといけないそうですから

「富国は、哲学に優先する」政治哲学の欠陥

最近、プラトン勉強の流れで、リベラリズムやコミュニタリアニズム、リバタリアニズムなどのアメリカ政治哲学を勉強していて感じるのですが 「哲学の理論だけで政治をしてはいけない」 ということ。 もちろん哲学も重要ですが、その前にもっと必要なのは「我々がどうやって食っていくか」ということです。政治は第一義的に「多くの国民が衣食住満ち足り、健康で寿命を全うできる社会」を目指すべきなのに、哲学の世界では「世の中は経済的に常に満たされている」というのが前提になってしまっているため、「