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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#ユヴァル・ノア・ハラリ

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

『<私>を取り戻す哲学』岩内章太郎著 読了

<概要> デカルトの「我思う、ゆえに我あり」という格率を手始めに、<私>の不可疑性と有限性を意識化することで、自分はもちろん他者との関係も取り戻せるかもしれないと提言した竹田青嗣門下の哲学者の著作。 なお本書におけるカッコ付きの<私>とは、 とのこと。 <コメント> 著者の最新作(2023年出版)で、これまでの『新しい哲学の教科書』『<普遍性>をつくる哲学』に続き、本書で計3冊目。 著者はマルクス・ガブリエルなどのポストモダン思想に続く最新の哲学「現代実在論」の研究者

「宗教の本性」佐々木閑著 書評

<概要>「リア充を味わえないなら、リア充の源となる欲望そのものをなくしてしまえばよい」という仏教の本性を中心に「一般に宗教の本性とは何か」を紹介した著作。 <コメント>「サピエンス全史」の著作で有名なイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの唱えた概念「虚構」をイコール宗教とみなして、自身の信仰する「釈迦の仏教」の教えをベースに展開。 ハラリのいう通り「貨幣」「国家」「宗教」も皆同じ虚構なので、みんなが信じている時は成り立ちますが、みんなが信用しなくなった途端に崩壊しま

「目的」という概念は人間的な考え方

お気に入りの番組「NHK BS」の「ヒューマニエンス」を観ていたら、 感染症の専門家武村政春さん曰く 「ウイルスや生き物は、そもそも人間のように目的を持っていない」 「目的というのは人間的な考え方」 さすがウイルス研究者ならではの発言でウマいいい方だなと早速メモ。そうです。「目的」という概念を持っているのは人間だけ。でも人間も生き物の一種という逆説。 世界像を「ファクト」と「ロジック」で生成するサイエンスの世界では、生物には「生きる目的」はないのです。したがって「な

ホモ・サピエンス全史と脳科学

ホモ・サピエンス全史(ノヴァル・ユア・ハラリ著)における最も重要な概念は「認知革命」によって形成された「虚構」ではないかと思う。 「認知革命とは7万年前から3万年前にかけてみられた新しい思考と意思疎通の方法のこと。遺伝子に突然変異が起こり、サピエンスの脳内の配線が変わり、それまでにない形で考えたり全く新しい種類の言語を使って意思疎通をしたりすることが可能になる(ホモ・サピエンス全史、第2章)」 「認知革命によって高度な言語を発明し、虚構すなわち架空の事物について語る能力こ

世界があるのではなく、自分が世界を作っている

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの「21Lessons」を読んであらためて思ったのは「世界があるのではなく自分が世界を作っている」ということ。 科学的思考に慣れている我々は、どうしても「モノ=この世界」ありきで何事もイメージしてしまいます。 ところが、よくよく考えてみると我々の世界像は、自分が生まれ育っていく環境(主に人間関係)の中で自分の関心や欲望に応じて世界像が形作られ大人になっていきます。大人になってからも出会いと別れの中で、SNSなども含めて自分の世界像をアップデー

21Lessons ユヴァル・ノア・ハラリ著 書評

全世界で話題のハラリの著作は、ホモ・サピエンス全史→ホモ・デウス→21Lessonsの順番で通読をお勧めします。本書は、これまでの著作に引き続き、現代世界の世界像と近未来像を解明するとともに「では著者自身はどうするのか、どうしているのか」を解説。 各章にこれでもかとばかりの実例=ファクトをあげつつ、かつ読者に分かりやすいように、絶妙なそのファクトの組み合わせによって独自のロジックを編み上げていくその筆力は、その博識さや知性もさる事ながら、説得力あるその表現にどんどん飲み込ま

21世期の啓蒙 上巻 スティーブン・ピンカー著 書評

前著「暴力の人類史」の続編ともいうべき本書は、啓蒙主義の理念(=理性、科学、ヒューマニズム、進歩)がいかに世界人類を幸福に導いてきたか?をデータを駆使して証明。 ベストセラー「ファクトフルネス」に近い内容ですが、ピンカー氏の「暴力の人類史」の方が早くから科学的データ主義に基づいて現代のありようを証明していたのではないかと思います。幸福に向かう進歩に関しては多様な意見があると思いますが彼の場合は誰もがそうだと思わざるを得ない価値観なので非常に説得力があります。 進歩とは「死