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道をつくる人

今回は道をつくった人の話です。

みなさん、赤道(あかみち)ってご存じでしょうか。 赤道とは、古くからの里道・あぜ道などで、皆が自由に通行していたけど、自然発生した通路の為、道路管理者(国・県・市区町村・個人)が無く道路法の適用の無い道でのことです。ただし現況が通路となっているとは限りません。法務局や市町村役場の公図上、朱色で塗られていた事からこう呼ばれています。

この赤道(あかみち)がうちの近所にもあります。わが住宅街はもともと田んぼだったので、この赤道は昔、用水路だったところです。水路にふたをした道幅1メートルに満たない通りで、舗装した道と道をつなぐ形で長さは70~80メートルぐらいあります。以前は誰も管理しておらず、道には背の高い草が生え繁り、歩いて通ることさえできませんでした。

しかし子どもたちが学校へ行くのにこの赤道が通れると、迂回しなくて済み、大変近道になります。この荒れ放題の道、現在は市に譲与され、市の管理下にあるようですが、市は全く手付けずで、整備をおこなっていません。放ったらかしの草ボウボウでした。

4~5年前のある日、前の町会長が一人でそこの草を刈りはじめました。毎朝そこへ来て1時間ほど通路を整える作業をします。そのころぼくは毎朝のようにジョギングをしていて、その前を通るとよく土木作業をしている町会長の姿を見かけ、挨拶を交わしたものです。やがて通路が整ってくると、その道脇に草花を植え始めました。

それを見ていた近所のおばさんたちも、しばらくするとその道の空いている所に草花を植えるようになりました。やがて春から秋にかけてはいろいろな花が咲き乱れる道になりました。さらに絵に腕のある近所のおばさんが「みんなの花のみち」と書かれた、看板を作ってきて、道の入口に飾りました。(それが上の写真です)

本来、赤道(あかみち)を勝手に整備するのは法的にはダメなのかもしれません。市の管理下にあるものなのだから、市に整備するよう訴えるべきものなのかもしれません。しかし市はそれまで手をつけてこなかったし、陳情しても市が本当にやってくれるのか、いつやるのか全くわかりません。やってくれても草刈りていどで、決して草花が咲き乱れる通りが生まれることはななかったでしょう。

前会長はそんなことを承知していたので、黙って一人で道を整備しだしたのかもしれません。今、整備された道は子どもたちだけでなく地元の人がとても便利に利用しています。いちど花を植えた道は以前の草ぼうぼうの道に戻ることはもうないでしょう。

地域の問題に対処するのに、計画をき立て、関係機関に訴え、予算を取り、人を手配し、そんな手はずで取り組むことが普通は多いでしょう。しかし目の前の課題に対して、まずは自分で動いてやってみること。その姿で人を動かすこと、そんなやり方があることを前の町会長から学びました。



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