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企業・非営利組織・自治体による"スモール・ソーシャルビジネスモデル"をもっと乱立させることが、残りつづけている社会問題を解決するための近道じゃないか。

初めまして、株式会社SHIRO代表の南(@minami_shirolnc)と申します。これまで、発達障害による働きづらさ、法的被害者の泣き寝入り、養育費の不払いなどの社会問題にビジネスで4年間トライしつづけてきました。

その背景もあって、僕たちは、CSR・SDGsに注力する企業の方、各社会問題・地域課題に取り組むNPOなどの非営利組織の方、自治体との協働を日本でもっと増加させるためのプラットフォーム・データベースを構築しようとしています。

(2022年2月時点で、大手外資企業、大手日経企業、ベンチャー・スタートアップ、中小企業、米日展開中の公益財団法人、公益社団法人など、数多くの組織公認の事例が増加中。)

プラットフォーム・データベースをつくるために、企業やNPOの方々とお話を進める中で、どうしてもひっかかっていることがあります。

それは「SDGsビジネス、ソーシャルビジネスといわれるような経済活動をするならば、社会的インパクトを大きくしなければならない」ということ。

ちょっとこのことについて、経済合理性限界曲線のことも踏まえて、最近考えていることを綴っていきます。

社会的インパクト評価が高くないソーシャルビジネスはダメなの?

あまり「ソーシャルビジネス」「SDGsビジネス」の名称を気に入ってはいないのですが、便宜上つかっていきます。

「社会的インパクト評価が高くないソーシャルビジネスはダメなの?」とひっかかる時は以下の2つの時が多いです。

・ソーシャルビジネスに投資をしている投資家、有識者と呼ばれる人がソーシャルビジネスのモデルにフィードバックする時

・ソーシャルビジネスを検討している人が「いや、これは社会的インパクト小さいかも」と口ずさむ時

一応、社会的インパクト評価について軽くふれておきます。

社会的インパクト評価とは、社会的インパクトを定量的・定性的に把握し、当該事業や活動について価値判断を加えることです。ここで、社会的インパクトとは、短期、長期の変化を含め、当該事業や活動の成果として生じた社会的、環境的なアウトカムをいいます。
(引用:内閣府 社会的インパクト評価について(2015-2017年度))

つまるところ、「社会問題に対しての取り組みをきちんと意味があったか評価しようね」ってところから生まれた評価モデル。この社会的インパクト評価モデルがあること自体は大賛成です。

ビジネスの世界ではKGI / KPIを定めて、経済活動が順調なのか、不調なのかをみつつ、マーケティング等の経済活動を当然ながらチューニングしていきますが、こと「社会問題がうんたらかんたら」の領域ではちゃんと評価してこなかった歴史があるからです。

ちなみに、社会的インパクト評価をしていくプロセスは以下みたいな感じです。

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本題に戻ります。

社会的インパクト評価モデルが爆誕したことで、良さもあるのですが、悪さも出てきたかなってところが所感。

「評価」って言葉をみただけで、「評価を高めないといけない」って無意識に思ってしまいがちな気がしています。僕もそうです。。

そのため、「社会的インパクト評価が高くなりそうなモデルじゃなければ投資もしないし、やっても意味があまりない」と捉えられることがちらほら。

投資しない人が悪と言いたいわけではなく、合理的に考えたらまーそうなるよねと。

ただ気になるのは、ソーシャルビジネスをやろうとする側が、どれかの社会問題を解決しようと、必死に考えたソーシャルビジネスに対して、「これは社会的インパクトをあまり出せないからしない方がいいかも」と考えること。

もしくは社会的インパクトが小さいことはやっても意味ないという風潮があるとすら思ってしまうのが個人的な見解です。

僕は一つのソーシャルビジネスで社会的インパクトを大きくすることにこだわる必要がないと考えています。

山口周さんが仰っていた経済合理性限界曲線が関係しています。

経済合理性が成り立たず、放置されてきた社会問題を解決するためにはスモール・ソーシャルビジネスが必要ではないか?

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(出典:日本の子供「OECD最悪の貧困率」生む経済合理性という無関心)

山口周さんが『ビジネスの未来』で問題の難易度と問題の普遍性のマトリクスに、経済合理性限界曲線が描かれた図を示していました。

問題の普遍性:その問題を抱えている人の量

問題の難易度:その問題を解くのに必要な資源の量

経済合理性限界曲線のラインの上側に抜けようとすると問題解決の難易度が高すぎて投資回収できない限界にぶちあたるし、ラインの左側に抜けようとすると問題解決によって得られるリターンが小さすぎて投資回収できない限界にぶちあたるって話。

僕自身も株式会社小さな一歩で養育費の不払い問題(マトリクスでいうと問題の普遍性が高、問題の難易度が高あたり)に養育費保証サービスでトライしましたが、ほんと投資回収するのが難しいなと痛感しました。。

そのため、数千万円やら、数億円やらのでかい資金をベットして、問題の普遍性が中・高の問題に対する経済合理性限界曲線前後あたりの領域で、ビジネスモデルを検証することだけだと、そりゃ貴重な資金を回収しずらいと考え、問題解決にトライするハードルがばか高くなるなと。

だからこそ、僕はもっとスモールにビジネス検証する経済活動が必要じゃないか?しかも、一社だけで行うのではなくそれぞれの組織がちょっとずつ資本をだしあって、徐々に検証していくことが必要じゃないか?と考えるようになりました。

ここでちょっとずつ出し合う資本ってのは、国際統合フレームワークでいうところの6つの資本。

1.財務資本
2.製造資本
3.知的資本
4.人的資本
5.社会・関係資本
6.自然資本

つまり、スモール・ソーシャルビジネスを生み出すことを各組織が協力して仮説検証を行なっていくのがよいのではないかと。

スモールといっても、月に数万円ずつ出し合ってトライするだったり、数十万円は株式会社Aが、どれかの社会問題についての解像度高い情報はNPO法人Bが、広大なネットワークは株式会社Cが、といった具合。それで、月にギリギリ赤字にはならないスモール・ソーシャルビジネスをつくることを第一段階のゴールにすること。

ソーシャルビジネスに関わる人なら一度は耳にしたことがあるだろう、貧困層向けに小額融資を行う「グラミン銀行」を創設し、2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏も『ソーシャル・ビジネス革命』で以下のように述べています。

問題を一度に解決しようとするよりも、対処できる大きさに細分化する方が現実的な場合もある。数百万の人々をいっせいに助ける巨大計画は、暴走することも多い。一歩ずつ準備を整えないと、「大胆な発想」は大惨事のもとになりかねないのだ。『ソーシャル・ビジネス革命』P.145
世界を一変させる巨大計画を練るのではなく、一度に二〜三人に手を差し伸べるような「小さな計画」から始めるよう伝える。そして、その計画の改良、構築、資金調達に数ヶ月や数年を費やすのではなく、今すぐ実行に移し、実践しながら学びなさいと伝える。小規模なプロジェクトを実施すれば、うまく機能している部分、まったく機能していない部分、改良できる部分が見つかるだろう。さらに、プロジェクトの実施中に、予想もしていなかった出来事が起こる場合もある。そうしたすべての経験を活かしながら、計画を改良していけばいいのだ。

そうすれば、数人の生活を見事に改善することのできるソーシャル・ビジネスが生まれるだろう。それは、一回、二回、一〇回、一〇〇回、一〇〇〇回と繰り返し蒔くことができる種のようなものだ。巨大な目標の実現は、小さな基本部品を設計できるかどうかにかかっている。その部品がいくつも組み合わさって、巨大な計画になるのだ。そのような種を設計することは、巨大な問題を解決する上で重要だ。『ソーシャル・ビジネス革命』P.146

スモール!スモール!スモール!
まずは小さく始めればよいのではないだろうか。(小さくないといけないってことではなく)

利益を生みつつ、社会問題を解決するのって難しいけど、挑戦するロマンがある

障害福祉の領域だと、僕のいたデコボコベース株式会社や、上場している株式会社LITALICOなど、利益を生みつつ、障害に起因する社会問題を解決されている事例が増えてきています。

しかし、社会福祉に関する社会問題、環境問題など、まだ残り続けている社会問題もたくさん。

そんな社会問題を利益が生まれるモデルで解決していくのは、いろいろ挑戦してきましたがけっこう難しいです。でも、解決できた先にみえる世界を考えると、みんなが笑えていて、幸せな生活をおくれている想像できます。まさにロマンです!

僕の大好きなNPO法人チャイボラさんは、社会的養護といって、親といろんな要因で一緒に暮らせなくなった子どもを社会全体で見守っていこう・育てていこうって取組みがあり、その社会的養護施設の職員不足という問題に挑戦しつづけています。

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(出典:全国の児童養護施設などの職員不足の現状を解決したい!)

チャイボラさんと今一緒に、どうしたらもっと社会的養護施設の認知が拡大するか、社会的養護施設で働きたい人を増やせるか、そもそも社会的養護のことを広めるためにはどうしたらいいか、といった問いに対してデジタル手段でのマーケティング活動の協力をしています。

まだまだ上手くいかないこともありますが、引き続き挑戦します。

僕たちSHIROはこういった企業・非営利組織・自治体の垣根を超えて、スモール・ビジネスを爆誕させることを第一ゴールとした協働をもっと日本全国で増やしていくためのプラットフォームの在り方、データベースの在り方を模索しつづけています。

少しでもこの意味不明な挑戦に賛同していただける方、ちょっとはご興味をもってくださった方がいたら、僕のTwitterDMやら、下記記事先のフォームより、感想やご意見いただけると嬉しいです。


社会問題×マーケティングが好き / ㍿小さな一歩(前澤ファンド出資先)で養育費の未払い問題にビジネスでトライ→㍿SHIRO創業。社会問題の発見→要因分析→ビジネス考案→実行に必要な資本整備→実行・改善のサイクルが最短で回り社会問題が解決されつづけるインフラを創る。