見出し画像

この部屋に一人で、もう独りと住んでいる。

このnoteを読んでいる方の中にも、
部屋を借りたことがある方って、結構居るんじゃないかと思うんすよね。
そういう自分も今1人でフラフラ生活してるわけですけども、

部屋って実際借りてみるまで、
何があるかわからないギャンブル的要素がありますよね。

ボロ屋も住めば都ってこともあれば、
高層マンションで近所が最悪って可能性もあるわけで、

そんな部屋ギャンブルの中で、
ある部屋を引いた話です。

---------------------------------------

当時丁度転職したてで、
職場から家までかなり距離が遠くなっちゃったんすよね。

流石に毎日5時起きはしんどい。
何の修行だよ、徳も積めなきゃ月額支給1万円ポッキリの交通費だけがかさむわい、ということで、
職場の近くまで越すことに。

でまあ業者さんに連絡とって、
初めて部屋借りるもんだから色々手間取りつつも
大きな問題なく無事引っ越しまして。

左右の部屋も比較的静かな人間しか住んでないし、
何なら外の猫の喧嘩の鳴き声の方がうるさいくらいの部屋ですよ。

明け方にゲェゲェ言うお爺さんが居るぐらいで、
まあこっちとしてはナイチンゲールみたいな感じですよね、
お爺さんがえづき始めたら朝を感じる、そんな生活。
ほぼロミオとジュリエットの世界観ですよね、
ここはヴェローナ、爺はゲローナかつって。やかましいわって?

部屋のスペックはよくある狭い1Kなんすけど
駅徒歩3分、風呂トイレ別、
洗濯機屋内設置でガスは都市ガス。
水道タダで家賃もお値段控えめ。

まあ身の丈にあった家かね、つう気持ちで
しばらくゴキゲンに住んでたところ

郵便局から1通の通知が届くわけですよ。

「メガロボスター様」宛の荷物を預かっています。
心当たりが無ければこの通知を再度投函ください。


心当たり is not found.


知らん間に己がキャトルミューティレーションに合って何か記憶が改ざんされたというわけでも無さそうですし、全身触ってもやっぱりチップは埋め込まれてなさそうだし、
内なる人格を感じた瞬間も生まれてこのかた無いですし、スタンドもペルソナも使えないし。

狭い1Kなんでここを事務所にする会社もあるわけねえよなと、色々考えてたところ、思いつくわけですね。

あ、こりゃハンドルネームってやつだと。

インターネットで生き抜くための仮想のお名前
ハンドルネーム。
そうなると気になってくるわけですよ。

ここに前住んでた奴はどんな奴だったのかなつって。

荷物が届くくらい誰かと交流をしているなら、
確実にSNSを同じ名前でやってるに違いねえ、
つうことでね。

興味本位で調べてみることに。

そうすると早速某Twitterにヒットするわけっすね。
こんな簡単に見つかるもんなんだなと思いつつ、

どんなこと書いてんのかな~つって

見てみるとね、
まあどうも技術者系の仕事をやってる人らしいつうことがプロフィールからわかったわけですね。

「僕は産まれてからこの五十数年間、一度も女性と関わったことが無い。」
「また今日も自分より二回り年下の上司に怒られた。悔しい。」
「このまま僕は一人でどうなってしまうんだろうか。」


無茶苦茶に世知辛え。
世知辛すぎるぜメガロボスターさん。


そんなメガロボスターさんも
今自分が座っているこの場所で
夜、一人静かに酒をあおったりしていたのか。
いかんともし難い気持ちになるぜ。


そんな自分の前の借主に想いを馳せながらね、
しばらくTwitterを見ていると


今度は

YouTubeに新曲をアップロードしました。


つって、なんだメガロボスターさん、
無茶苦茶多才じゃないですか。
1人で楽しんでるじゃないすか。

孤独への慟哭〈シャウト〉が俺のロック魂を炭火焼!

みたいなの一発頼んますぜ!

そんな気持ちでリンクを押すわけですね。

すると流れ出したのは、
不規則な拍子が背景で流れる中始まる
棒読みちゃんのポエトリーリーディング。


詩の中に込められた「孤独、闇、独り」の単語。

黒地の背景で明滅する、赤。


いやいやいやいやメガロボスターさん。
夜中に聴くにはあまりに怖すぎるぜ。
スラッシュメタルとかを期待してしまったぜ。


垂れ流される不規則な音に耳を傾けながら
YouTubeの曲の説明部分を読んでいると、
どうやらメガロボスターさんはホームページをやってるようだ、つうことがわかりまして。

なーんだHPまで構えてるとは、
バッチリインターネットを楽しんでるじゃねえか
なんつって、さっそく覗いてみるか~つうことで
リンクをポチっとな。

「404 Not Found.」


残念、どうやら今は存在しないらしい。
日記なんか読めたらどんな人かもっとわかったのにな〜と思いながらふと考えるわけです。

おかしいな、
こんなにSNSを盛んに更新していた人が、

すべからく暗いとはいえ、
こんなに多彩なコンテンツを更新する人が、
唐突に自分のHPをたたむんだろうか。

自分の意思で消したわけではないのでは?

もしかしたら
サーバー代が払えない状況にあるんじゃないだろうか。
404エラーを眺めながらハッと思って見返すと


それまで好奇心だけで眺めていたYouTubeもTwitterも

実は更新が1年前の12月で終わっている

ことに気が付きまして。


そして荷物を送ってきた人すら、
今の住所を知らない。


1年前までこんなに頻繁に更新してたのに?


「ああ、その部屋についてですか?」


本当に調べた方がいいですか?」


------------------------------------


なあ、メガロボスターさん。
今どこに居るんだよ。


メガロボスターさんは知らんかもしれんが、
全くもって全然、孤独じゃねえよって教えてえよ。


あなたはあなた宛に荷物を送ってきたネットの友達のことも、
住んでた家に新しく住み着いた奴が、
あなたの作った曲をたま〜〜に聴いてる事も知らないんだよな。暗すぎてたまにしか聴いてないが。ほぼほぼ聴いてないが、何故なら暗すぎて普通に怖いから。

まあ、現実はどうであれよ。
そうやってな、ネットの世界にはあなたの痕跡は残り続けるわけよ。

こんなコメントしたくて仕方なくなる謎だらけのコンテンツを残すなら、その感想くらい伝えさせてくれよ。

この感想を抱えて生きていくのは、寂しすぎる。


してやられたぜ、メガロボスターさん。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?