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インディーゲーム「オブラディン号の帰還」に漂うこの郷愁は何だろう。

電車に乗って揺られながらただ風景を眺める。
車窓から集合住宅の一つ一つの部屋の灯りを眺め、
そこに暮らす人の生活を想像するのが好きだ。

同じ間取りでも部屋が一つ隣になれば、
そこには全く違う人生がある。

その日、毎日、いやほぼ毎日、やはり三日に一回…の習慣にしているニンテンドーSwitchを起動したは良いが、リングフィットアドベンチャーをする気が出なかった。

なんとなく開くニンテンドーeショップの中で
自分の知らないゲームと出会い、
説明文でワクワクし「このゲーム面白そう!」と思う瞬間は素晴らしい。

今回はその「これ面白そう!」を存分に感じまくったゲーム

「オブラディン号の帰還(Return of the Obra Dinn)」を紹介していく。

なおネタバレも無いので興味を持ったら是非プレイしていただけると嬉しい。

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プレイヤーは勇者でも、学生でも探偵でも無職でもなく、保健調査官だ。

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内容を簡単に説明すると、
行方不明になっていたオブラディン号が海上で発見された。
そこに居た乗客、船員含め60人の名称と死因
他殺の場合は誰によってどのように殺害されたか?
全て解き明かし、保険金の金額を確定するゲームだ。

いかに鮮やかな色を見せるかが魅力の一つとなっている昨今のゲームの中でも一際目を引くモノトーン。

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オブラディン号に乗り込んで最初に目の当たりにするのは静かな船の景色と白骨化の進む死体。

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調査官である主人公は
ある人物によって送られてきたオブラディン号に関する手記と、
人の死の瞬間を見られるコンパスを片手に全員の死因を解き明かしていく。

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死体の前でコンパスを開くことで死の瞬間の記憶が再生される。

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手記には名簿と写真が入っているが、死の瞬間の記憶から名前がわかる人間はごくわずか。

背格好や顔、服装の装飾などから役職を類推したり、
人種を特定する必要がある。

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3名の名前、死因が確定されると調査が進展し、
新たに調べられる場所や場面が増える。

当てずっぽうで話が進むのをストップする仕組みだがこの難易度設定が非常にちょうどいい。

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しかし調査が進展して増える場所や場面には限りがあり、
「え!?ここまで!?」というところで新しく提供される情報が止まる。

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残りは全て既出の場面を見返し、仮説を立て検証して…を繰り返し
一人一人を特定していく。

とある場面で出てきた男が、
またとある場面では何かの目撃者となっている。
顔しかわからなかった男の素性が徐々に明らかになっていく。

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とある場面で楽しげに過ごして居た男が壮絶な理由で死んでいる。

船内で人を殺めた男が最後に自死を選んでいる。

オブラディン号には確実に60人の命が乗って居て、
それぞれに人生があった。

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プレイ中は音楽もなく大変静かなゲームだが、
その分調査が進展する時の音楽や盛り上がる展開が際立って素晴らしい。

クリアした後残るのは無念さや達成感では無く、寂寞感と郷愁だった。
これはプレイする人、それぞれによって抱く感想が異なるゲームだと思う。
これをクリアしたときあなたは何を思うだろうか。
プレイした暁には是非教えて欲しい。

オブラディン号の帰還をクリアした今、
ニンテンドーeショップに並ぶゲームのタイトルを眺めながら、
それぞれの作者の人生と生活について考える。
今この瞬間も誰かが新しいゲームを制作している。
窓から見える集合住宅の灯りに生活の香りを感じるように。

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次はどんなゲームに出会えるだろうか。

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