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【掌編】『狐日和』

実家に帰ったときに偶々置いてあった
狐のぬいぐるみを見つけ
車の助手席に乗せて帰ってきた
座席に腹ばいになってぺたっと乗っかっている

少し気がまぎれそうな気がした
あいつにフラれてから
そこは空席のままだったから

あいかわらず勝手気ままな元カノを
自認するあいつは
こっちの都合などおかまいなしにやってくる
今日は天気がいいからと
クッションを探しに郊外のアウトレットまで
ドライブに引っ張り出された

ランチが美味しかったのかご機嫌で
帰りの道中ずっと狐をあやすように
膝に乗せ撫でていた
それでいて少しばかり意地悪な言葉を吐くのだ

私達たぶんずっと一緒にいようとしてたから
上手くいかなかったのよ
私はあなたと仲のいい友達の妹で
それは一生変わらなくて
いつもちょっとだけあなたを気にかけている
女の子なのよ
それでいいの
きっと

日が照っていたかと思うと雨がぱらつきだす
変な天気だった

いつからか信号待ちの間
助手席にいる狐に手を伸ばして
背中を撫でるのが習慣になってしまった
それで不思議と気が安らぐのだ

またあいつがやってきたら
いっぱい撫でてもらいなよ

ちょっとだけ不憫な気持ちになった
 
 
 

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