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第4話 いざ勝負!コンペ決勝


こんにちは!低気圧に頭がやられているしゅんDです。

本日は、GSセンターができるまでの歴史を紐解く「GSセンターができるまで!」シリーズ第4弾として、”LGBT学生センター”設立のきっかけとなる学生コンペ決勝の様子をお届けします!緻密な戦略を練って挑んだダイバーシティ早稲田の面々、結末はいかに......!?シリーズなので前回を読んでない人は前回のを読んでね!


「暗闇から叫んでもらったんだよね」

2014年度Waseda Vision Competition150の決勝大会は、2015年3月15日に開催された。Mさんが効果的なプレゼンテーションになるよう表現や演出を工夫し、あとは直前までプレゼンの練習を続けた。当日の朝のことを「なんかみんなが通る廊下みたいなところで練習してて、通り過ぎるほかの参加者に『おはぉござーーっす』みたいにめっちゃ明るく挨拶してた気がする......。」と振り返る。そしていよいよ、プレゼンテーションの瞬間を迎える。


M「他の大学からも友達に客席まで見に来てもらって、プレゼンの最初に照明を落として会場を真っ暗にして、友人たちに暗闇の中から叫んでもらったんだよね

決勝のパワーポイントの「スピーカーノート」機能にその時のセリフが残っていたので丸々引用する。

「先生、ゲイを笑いのネタにしないで!僕は教室にいます!」
「私だって、彼女と手を繋いでキャンパスを歩きたい!」
「スカートを履いて、就活をしたい!」

他のどのチームも客席を巻き込んだ演出は行っていなかった。壇上に上がった4名がプレゼンを開始すると思っていた審査員たちは驚いたことだろう。

この演出は、前回Nさんが話していた「審査員に『LGBTの学生は実際に存在し、困っている学生がいる』ということを体感として理解してもらうこと」を狙っている。照明が落とされた会場の中、「いないことにされている」存在の、今まで聞かれて来なかった声が響く。そしてこの演出は、4人が学生時代に様々なアクティビズムに参加していたことで得た学内外の友人たちが協力して成り立っているというのだから、まさしく4人の「集大成」のプレゼンテーションのオープニングにふさわしい。4人で作ったプレゼンテーションではあるけれども、4人だけではできなかったし、4人以上の思いがこもったプレゼンテーションである。


プレゼンは、学内にセクシュアル・マイノリティ学生がいることを理解してもらうために行ったアンケートをもとに、数字をふんだんに使いつつ、時折当事者の声が差し込まれつつ進行する。(以下は、決勝パワーポイント資料のスピーカーノート機能から引用)


女性用トイレに入ったら、警備員に注意されました。好きで入っているわけではないのに。
必修の授業で、教授が何度も同性愛で笑いを取ります。夜、思い出して泣きました。教室に行けなくなり、単位は落としました。
カウンセリングセンターに行きましたが、カウンセラーが「LGBT」という言葉を知らず、相談内容が伝わりませんでした。
これは私個人の経験ですが、同じような、あるいはもっと辛い経験をしている当事者学生が、早稲田にはたくさんいるのです。

もちろん、プレゼンテーションでは効果的に個人のストーリーを伝え、センター設立の緊急性を訴えているが、それだけではない。当時の早稲田大学が抱える問題を分析し、それに沿ってセンターの利点を押し出していく。審査員に想像してもらいやすいよう、具体的にセンターの内容を提案する。その具体性の高さから、おのずと実現可能性もアピールする形だ。

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ちなみに、現学生スタッフとしてはかなり実現していることがあって胸アツ......!!学生の声が本当に大学を変えることってあるんですね。



「最後は号泣しちゃってね......。」

プレゼンテーションの最後は、コンペメンバーからの訴えで締められる。(以下、決勝パワーポイントのスピーカーノートから引用)

私はレズビアンです。透明人間みたいに隠れて生きてきました。
大学で悪口を聞いて辛くなったら、笑顔でぐっと奥歯を噛み締めます。そうやって生きてきました。
あと2週間で、新入生が入学します。彼らの中にも、LGBTはいるでしょう。私と同じ気持ちを、彼らにはさせたくない、その一心で、ここまで来ました。
私たちは、多様な人と繋がりを持ち、社会を変えていく力があります。それが早稲田の力です。LGBTである人も、ない人も、皆でこの問題を変えていくことができるのです。皆さんの力を貸して下さい。
 
 


これが「原稿」であるが、Nさんは初めてする大勢の人の前でのカミングアウトに涙が止まらなかったという。他のメンバーからプレゼンテーションを作る上での「エモーショナル担当」と呼ばれたNさんの思いが溢れて止まらなかった瞬間である。「原稿」は上記だが、当時の様子についてNさんは「なんかもう自分の言葉で話してたよね。リアルなメッセージを伝えたくて。号泣しながら」と語る。

Nさん「なんかねー、入学したばっかりくらいの時にゲイの友達がいたんだけど、突然消えちゃったんだよね。で、そのあとわかんないんだけど、休学か退学になっちゃって。そういう友達がこれ以上増えてほしくないと思って。春に新しく入ってくる新入生にもう同じ経験をしてほしくないというのが、半年頑張れたそもそもの気持ちだった」


こうして、ダイバーシティ早稲田は決勝で思いの丈をぶつけた。結果は、総長賞だった。なお、会場投票ではダントツだった。

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Nさん「審査員からのフィードバックを聞いていると、確かに彼らの心に響かせることができたと実感した」

Iさん「この会場投票の結果を見たときに、ああ、少なくともこの会場にいる人には思いが伝わったんだな、と思えた」

会場の人たちにセクシュアル・マイノリティ学生が「いる」ことが伝わったことに、メンバーたちは手ごたえを感じていた。

Mさん「なんか司会者も泣いちゃったんじゃなかったっけ?そんなことを聞いたよ。司会者泣いていいんだ......とは思ったけど」


司会者の感情をも揺さぶるほどのプレゼンテーションだった。



「これからだなって思った。これ取って卒業して終わりじゃないって」


総長賞を取った時の感想を聞いてみると、私が想像していたよりも冷静にその後のことを考えていたことが伺える。

Iさん「これからだなって思った。これ取って卒業して終わりじゃないって」

(しゅんD、あまりのカッコよさにインタビュー中にも関わらず「おおおおおおおーーーー!」と叫んでしまう。)(実話)

Iさん「いやいやなんかかっけぇなとかじゃなくて、ほんとに。総長賞取った直後は、やったーみたいな感じではあったけど、翌々日くらいにはもう、これからがスタートだなという気持ちだった」


というのも、Waseda Vision Competition150のの後に開催される「懇親会」があるのだが、そこでも、この先の道のりは長い、と感じる出来事があったという。

Iさん「プレゼンのあとでも配慮に欠けた発言を聞いたりして、苦笑」

Mさん「あと、懇親会の進行の中で優勝チームを紹介するのに『LGBT』が言えてなくて......なんだっけBLTとかなんかそんな感じになっちゃってて。」


それは不安!!!!!!不安すぎる!!そりゃ「これからだな」って思うわ!!


公式の懇親会とは別に、応援に来てくれた友人たちと集まって祝勝会も開催した。そこでコンペを支えた仲間たちと飲み食いしたのは、楽しかった思い出だそう。



そんなこんなで見事!総長賞を獲得したダイバーシティ早稲田!でも、まだ時は2015年3月。GSセンターが開室するのは、2017年4月のことです。それまでの2年間、一体どんな動きがあってGSセンターはできるの~~???ということで、続きはまた次回!


あえて言うならばここまでが「コンペ出場編」であり、次回からは「大学との交渉編」で後編に入ります!ここまでで既にシリーズ計10000字を超えてますが、まだまだ続きまーす!また次回お会いしましょう!


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【GSセンターの歴史】シリーズ
第一話 しゅんDの初日
第二話 「LGBTセンターを作ろう!」になるまで。
第三話「卒論そっちのけ!コンペ決勝への道!!」
第四話「いざ勝負!コンペ決勝」