見出し画像

弾丸帰省

家出をするつもりだったが、気がついたら北上して我が生まれ故郷である山形県に来ていた。ここはいい所だ。辺鄙なところを除いて。コンビニまで車で20分かかる。全くコンビニエンスじゃない。
そして、まだ雪の残るこの場所に来るには軽装備すぎた。22℃から3℃という温度差は体にこたえる。

花粉症と常備薬をもらって、家出を決行した私は速攻パチンコ屋さんに吸い込まれ旅費を溶かした。つまり遠くへはいけないなと考える。夜行バスを調べていたら田舎にいつも帰省するより安かったので、手が勝手に予約していた。

思えば、私の人生の幸せだった出来事はほぼこのボロ屋に詰まっていて、来ると確実に幸せになれる。都会の喧騒から離れて、終わりかけの冬の澄んだ空気は、オリオン座が綺麗に瞬く星空を写してくれていた。

M-1ツアー(3.11東京公演)を観て、満足した私は南下してどこかに行こうと考えていたはずだったのだが。いつ帰るかも決めない帰省はボロ屋に1人住む祖母にとって嬉しいことなのかもしれない。祖母孝行…か。流石に金髪で村に入ったら二度見されたけど。石投げないで欲しい。

冬の日本海にでも身を投げる気持ちで来ていた。何も上手くいかなくなって、行き詰まった私の唯一の逃げ場。世界が滅びるならここで生涯を終えたい。家に遺書まで遺してきてしまった。恥ずかしい。

田舎につくや否や、耳に埋まり取れなくなって4ヶ月経ったピアスが何故か出てきた。会社の面接が沢山通った。借金の借入可能額が何故かウン10万増えた。(これはダメなやつだけれど)

全部が、歯車が噛み合ったように回り出した。

いつも嫌になって田舎に来ると、絶対に何かいいことがある。ふと、数日前に死んだじいちゃんの夢を見たのを思い出した。じいちゃんが背中を押してくれるのかもしれない。

川の字になってみんなで寝ていた座敷にはもう私しかいないけれど、なんだか孤独も感じない。この家自体が私をずっと守ってくれている気がする。

おばあちゃんと毎年恒例のプリクラを撮った。机の目立つところに去年の分がしまってあって、自分は大切に育てられた人間なんだと実感させられる。

ずっとここにいたいが面接などなど予定が入ってしまった為、帰らねば。またお盆に来よう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?