真空管にまつわる創作話
うちの店のアンプは、チェコ製真空管アンプ KR collection 「Antares」というのを使っている。
他のアンプと比較したわけではないので、正確なところはわからないが、なかなかいい音なんじゃないかと思っている。
さて、
ご存知かと思うが、真空管アンプは、球が切れると交換する必要がある。
もちろんそれを想定してストックは持っているのだが、年々値上がりしていて、開店当初の頃より今では2割〜3割程価格が上昇しているようだ。
日本を含めたほとんどの国で、もう作られなくなってしまっているので、まあ、価格は上がるのはある程度は仕方ないと考えて、はるばるチェコから取り寄せて買っている。
それはそれでいい。
作ってくれているだけでも有難いことだ。
ところで「Antares」には「KR 842VHD」という真空管が2本刺さっていて、こいつを日本の販売店から買おうとすると、「受注生産」という形になる。
だが、昨今のこの騒動で、どうも納期に相当時間がかかるらしい。
現地もいろいろ大変なんだろう。
で、販売店に改めて現地に問い合わせてもらったところ、なんとびっくり(!!)の、6ヶ月先になるとのこと。
はっきりいって、6ヶ月先にうちの店があるかどうか、確信が持てない。
それは周りのテナントの空き状況を見てもらえば、あながち大げさな話でもないことがお判りいただけるかと思う。
そういう時代なのだ。
う〜ん。ストックはあと1本のみ。
悩ましいところだ。
で、
想像してみた。
うちの店がなくなって、
新しいテナントがわりとすぐに見つかって(いい大家さんなので、きっとすぐそうなるはず)、
しばらくすると、異国の地から、何やら見知らぬ箱が届く。
オーディオに詳しいオーナーなら、すぐにわかると思うが、
まったくそんなものに興味のない、ご夫婦の洋食屋だったりすると、
「はて?これはいったいなんぞや?」
という事になる。
「でも、まあなんだか綺麗だから置いてみようか。」
と、冷蔵庫の上におもむろに飾られるわけだ。
そして何年後かに、
店を潰して、失意の元に街を離れた僕が、久しぶりに神保町へ戻って来て、自分がやっていた店の後に入った洋食屋へ立ち寄る。
そして言うのだ。
「素敵な置物ですね。チェコ製かな。」
うん。この筋書きはなかなかだ。
やっぱり発注しよう。
追伸:
最近は好きな曲がダウンロード音源しかなかったりするので、MP3データを真空管アンプで鳴らすという奇行に走っております。
そんな、BGMでよろしければ、
神保町にお越しの際は、是非お立ち寄りください。
So Beautiful / less. people
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2019
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
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