恩師へ、愛をこめて

野間哲先生へ

 初めて野間先生へ直接メッセージをお渡しする文章が、最後のものになるとは思っていませんでした。
 この度、急に星の王子さまの元へ行かれたとの報を受け、驚くことも出来ず、未だに信じられません。これは自分だけでなく、野間先生が湯河原高校演劇部・YDCCと共に「Little Sister」を作った、当時の2年生の代、総意のものだと思います。

 思えば、野間先生には中学時代から目をかけていただいていました。公演ごとに過去の公演のパンフレットを大量に持ち帰る「変な生徒」として、足柄台中学校の上演した「You Are My Chaplin」の主演を指導していただいた生徒として、おかしな発言をくり返すおかしな奴として、見て頂いていたように思います。変なことを口にして苦笑されたこともありましたっけ。

 プレッシャーがかかるとポンコツになってしまう自分を、それでも引っ張って下さった野間先生には感謝の念が絶えません。
 倉田のじいさんの役で迷っていたとき、「角刈りがいいな」の一言で、きちんとした理髪店でボサボサ頭から一気に角刈りにした際、その意識を買って頂き、地区大会の個人賞を頂くまでに指導してくださったのは忘れられない思い出です。

 「荷おろし隊」として、深夜まで一緒にはしゃいだのも良い思い出になりました。

 また、野間先生が異動になり、野間先生の追い出し会をやらせて頂いたのも、自分たちの代の大切な思い出です。
 その際のカセットテープにあった秘密のメッセージ、とても嬉しかったです。そのメッセージの元、自分たちの代だけのために行った飲み会、忘れません。

 卒業後、いろいろ起きた自分に、目をかけて頂いたことも感謝しています。
 まだできたての大船高校の部室を作りに出かけたのも、忘れられないことのひとつです

 NOMA企画での公演にうかがった際、幕が上がる前に「君にはどうしても見てほしかった」とおっしゃり、劇中、倉田のじいさんが担っていた要素をちりばめた作劇に、泣かされました。
 アレは、ずるいですよ、先生。
 一向にうまくいかなかったハーモニカと、関東大会の芸劇で爆笑を勝ち取った息の吹きかけ。自分の中のいろいろな感情の通った思い出。
 まるで自分のために書かれたような気にもなってしまったことを告白しておきます。

 公演直後、「これで君とは戦友だね」とおっしゃったことも、忘れられません。
 これから戦い続けるはずじゃなかったですか……。

 昨年1月、自分の作ったひとり芝居に来ていただき、「君は詩人なんだね」と、国語教師としては最大の褒め言葉を送っていただいたのを、胸に刻んでいます。
 自分の繊細な部分をきちんとお見せ出来て、良かったと思っています。

 まさか、それが最後の対面になるとは、つゆとも知りませんでした。

 特に個人的な思い出として、1年生の時、水戸の関東大会で「じゃがいもかあさん」で出場した際のこと。重度の風邪にかかった自分だけ、他の部員の移動方法とは別に、マイカーで送っていただき、かつ奥様へご報告くださった、そのお心遣いを忘れることは出来ません。

 思い出すたび、お世話になったことの記憶にきりのない、自分の「恩師」を、見送るには、あまりに早いじゃないですか。
 その一点だけ、野間芝居の最後の「ダメ出し」をさせてください。

 2020年11月10日、「のまさとる最後の大芝居」を観劇しに行かせていただきます。
 告別式という名の最後の「追い出し会」へ参加致します。
 文章を書こうとすると長くなってしまう自分のクセを許してください

 あと。
 野間先生より先に、空の上の演劇公演に旅立った猫背のアイツによろしくお伝えください。

 「さようなら」なんて言いません。
 「お疲れ様」なんて言いません。
 自分の言う言葉は「いってらっしゃい」です。

 ありがとうございました。

 2020年11月10日
 新本一洋、こと、ひろぽん

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