音痴には音痴の歌がある(さりとて…)極私的プレイリスト
私:♪またあうひまで〜あえる〜とぉきぃまでぇ〜
同僚の穴子君(以下”穴”):…なにそれ?
私:なにって、名曲「また逢う日まで」だよ。
♪わかれの〜そのわけは〜はなしぃたっくなぁ…
穴:やめろ!バカ音痴!
貴様に尾崎さんの名唱とオレの鼓膜を汚す権利はない!
私:それは暴言というものだよ。
日本国憲法にも「すべて国民は法の下に平等であって、音程、リズム感、声質、音楽的嗜好または美醜により、日常的、鼻歌的またはカラオケ的歌唱において差別されない」と定められてるぞ。
穴:うるさい!
オレがこの国の王様になったら、まず音痴階級人民から粛正する!
私:とんでもねぇ独裁者が生まれてしまう…
つか音痴ごときでイライラするなって。
穴:君の音痴は人並みはずれて暴力温泉芸者的なんだよ!
私:わかったわかった。
同僚の労働意欲を低下させるのは私の本意ではないので、このひとのカヴァーだったらどう?
♪ ”また逢う日まで” by クレイジーケンバンド
穴:横山剣さんのちょっとクサみのある歌も、この曲にヒネリを加えてていいな。
私:筒美先生への敬意と高度な歌謡曲感にあふれた素敵なアレンジだよね。
♪ ”What A Fool Believes” by Aretha Franklin
私:カヴァーといえばこれも良い見本ですよ。
偉大なるレディ・ソウル、Aretha Franklinさんの最高の歌唱による、Kenny LogginsさんとMichael McDonaldさんの名曲。
穴:ちょっと前にオリジナルがTV-CMで流れていたね。
少しテンポを上げたこのヴァージョンもいいな。
私:Jeff PorcaroさんとLouis Johnsonさんのリズム隊、David Sanbornさんのサックス・ソロという贅沢さだよ。
♪ ”Dancing in the Moonlight” by Toploader
私:原曲はBoffalongoというバンドの1970年作、1972年にKing Harvestが再演したヴァージョンが大ヒットしたそうだけど、近年広く愛されたのはこの英国バンドの2000年版。
穴:この曲は良く耳にしたよ。
キャッチーなメロディとヴォーカリストの歌声がマッチしてて好きだな。
私:スウェーデンのユニット、Jubëlの2018年のヴァージョンも結構良いです。
♪ ”Dancing in the street” by David Bowie and Mick Jagger
私:”月明かりのダンス”に続いては”街角でダンス”だよ。
1964年のMartha and the Vandellasがオリジナル、様々なひとたちにカヴァーされているモータウン・クラシックを英ロック界の巨魁ふたりが歌ってらっしゃる。
穴:いやーおふたりともお若い。
この曲ってロック系のひとたちが好んでカヴァーしてる印象があるな。
♪ ”Young Americans” by Durand Jones & the Indications
私:そのDavid Bowieさんがソウル・ミュージックに最接近したアルバムのタイトル曲は、2020年に彼らにカヴァーされているよ。
穴:45年前にイギリスのロック・スターが歌った「アメリカの若者たち」って曲を今、アフリカ系アメリカ人のヴォーカリストを擁するソウル・バンドが歌う意味を考えてみたいね。
私:お、社会派。
♪ ”Turn Back the Hands of Time” by Bruce Springsteen
私:泣く子も黙るボスが、シカゴ・ソウルの偉人Tyrone Davisさんの大ヒット曲をあくまでもシブく歌ってくれている。
このMV、ミュージシャンがみんなかっこよくて何度でも見ちゃうんだよね。
穴:ボスの声が、恋を失った男心を揺さぶるねぇ。
”時を戻せたなら”って、いつの時代も普遍的な心の叫びだね。
♪ ”Thinking of you” by Paul Weller
私:もういっちょ大ヴェテランによるソウル・ナンバーのカヴァーで。
Nile RodgersさんとBernard Edwardsさん作、Sister Sledgeの大ヒットしたメロウ・ダンサーをドラマティックにアレンジしたこのヴァージョン、すごく好き。
穴:特徴的な声が曲調によく合ってる。
年配の男性がこのロマンティックな曲を歌うのも、なんか渋みがあっていいね。
♪ ”When doves cry” by Patti Smith
私:私の大好きなNYパンクの女王が、私の大好きな殿下の曲を歌ってくれたのには感激してるよ。
ダウナーな雰囲気を保ちつつも、シンプルでストイックなバンド・サウンドに徹しているのがかっこよすぎ。
穴:説得力のある声だなぁ。
これは自分のフィールドで原曲と向き合ったって感じがいいな。
♪ ”Tong Poo” by Señor Coconut
私:これはキワモノ扱いされそうだけど、私にとっては目から鱗の快作。
チリ在住のドイツ人Uwe Schmidさんのプロジェクトによる、YMOのラテン・カヴァーですよ。
細野さんのレーベル”Daisyworld”での繋がりから、YMOのお三方もアルバムに参加してるよ。
穴:”エレクトロ・ラティーノの父”と言われるだけあって、純正ラテンとはちょっと違う端正さというかクールなセンスを感じるね。
穴:やっぱ音痴の歌より上手いひとの方がいいだろ。
職場環境のために君は今後、ボカロ遣いになるかノイズ・バンドに加入しなさい。
私:だから音痴の基本的人権を侵害する発言は…
上司:てめーら仕事しろ!
給料50%カットして手取り50万ペリカにするぞ!
Top image : CDD20, Thank you for letting me borrow your wonderful work.
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