歴史的見地からの改憲論(3)戦後日本の平和は、アメリカの軍事力と世界戦略と幸運が守っていた。憲法第九条からではない。

 これまた周知の事実だが、第二次世界大戦が終わった後、世界は平和にはならず、今度は冷戦が始まってしまった。

 アメリカとソ連をそれぞれの盟主とする、自由主義陣営対共産主義陣営の、全面戦争には至らないが局地戦争までは起こる、熾烈な対立。

 そして日本は自由主義陣営で、しかし近隣にはソ連・中華人民共和国・北朝鮮がおり、それらから日本をどうやって守るかが、日本のみならずアメリカにとっても大問題だった。アメリカの世界戦略からして、地政学的な理由から、日本を共産主義陣営に渡すわけには行かない。

 だから結局、アメリカ軍が日本を守る、という形になった。幸運にも日本は島国で、優勢な海軍力と空軍力があれば、その外敵からの防衛は容易。そしてそれは、実際にやってみるまでも無く明らかで、つまりアメリカは、現実には一滴の血も流すこと無く、戦わずして日本防衛を完遂できる、ということでもあった。ちなみにだが、それは核戦略の場合も同様。

 しかしそれでも日本内部で共産主義勢力が武装蜂起する可能性はあり、日本に駐留するアメリカ軍の頭数では、特に朝鮮戦争勃発後は決定的に、それに備えるには不足。だからアメリカは、日本を再軍備させた。それが警察予備隊(自衛隊の前身)で、それはアメリカ製兵器で武装した事実上の軍隊だったが、「憲法で禁じている戦力ではありません」という建前で、今日まで来ている。同じ理由から、アメリカは日本を経済復興もさせた。

 ただしアメリカは、日本の軍事大国化も望まなかった。だから日本の軍備も張り子の虎状態、本当には戦争なんか出来ない状態で、これも今日まで来ている。および、日本の安全保障もアメリカに従属する形が継続している。

 付け加えるに、それは日本にとって経済的には非常な利益をもたらした。要するに、今では死語になってしまったが『安保ただ乗り論』だ。そもそも軍備には非常なコストがかかるが、日本は日米安保のおかげでそれを最小限に出来、それだけ経済発展に回せている、日本は日米安保から利益だけを得ている、という論。今は昔の物語だが、そういう時代もあったのだ。

 以上、これまた非常に簡単な説明だが、戦後日本の平和は、だいたいそのようなものだった。

 そして21世紀の現在、米ソの冷戦はとっくに終わり、国際情勢は様変わりした。が、根本的な状況は変わっていない。安全保障という観点からは、日本はアメリカに頼る以外無いし、そうしている限り大過は無いと考えられる。

 だから、同じく安全保障という観点からは、憲法改正などする必要は無い。筆者の主張は『平和を実現するためには、十分な軍事力と十分な頭脳の両方が必要だ』だが、アメリカ追従を続ける限り、どちらも問題は無いからだ。

 これまでそうだったように、基本、ただアメリカの求めに応じ続けていれば良い。もちろん全てでなくて良いが、どうしても、というところだけは。将来、状況がさらに大きく変わるまでは、それで国は保てる。

 なのだが、それでも現行憲法は改められるべきだと筆者は考える。

 それは、事実は事実として認めるべきだ、という当たり前の分別からだ。他、民主主義の理念などの理由もあるけどね。それが筆者な意見。

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