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ギフト行動のメカニズム

 今回はギフト行動のメカニズムについて考えてみました。
ギフト市場の特徴を考えるとき、まず前提はモノを持つことへの意識の変化が重要と考えています。若者を中心にモノを買うことがカッコ良いと考えてはおらず、流行を追うこと、頑張っていることが恥ずかしいと考えるようになってきました。SDGsの考えも浸透してきて、モノを持つことが良い時代は終わろうとしています。

■モノ消費からコト消費へ

 モノ消費からコト消費へのシフトは、モノ的な価値よりも何か機能性や意味的なものに価値を見出しています。
コト消費は商品やサービスを購入したことで得られる体験で経験消費とも呼ばれますが、バレンタインはモノ消費でハロウィンはコト消費ともいえるわけです。
 モノを贈るだけでは面白くなくて、コトをつけて一緒に贈る工夫も必要になってきています。
中国の独身の日はコトづくりとして上手いなと感じています。11月11日、みんな一人だからという理由でアリババがセールをするだけですが、この期間(1日〜11日)のアリババグループで9兆4,552億円(2021年)売り上げます。
 モノとコトを掛け合わせて相乗効果を出している良い例ではないでしょうか。

■つながる市場と自発的な市場

 Facebookやインスタグラムも利用者が増えています。Z世代ではインスタグラムかLINEがなければ連絡が取り合えないことが多くなりました。連絡手段としてのメールは使われなくなってきています。特にインスタグラムの利用者は増えていて、写真をアップするだけでなく検索ツールとしても利用されています。グーグルやヤフーで検索すると広告が掲載されて面倒だが、インスタは口コミなのでハッシュタグ(#)がついているだけですから、検索エンジンよりもインスタで検索する(特に若い女性が)ことが増えています。
それを見て購入することもあるので購買誘導ツールとしても使われています。
 インスタグラムを使った「インフルエンサーマーケティング」はインフルエンサー(他の人に影響をもたらす人)を利用したマーケティングのことで情報の伝播に影響力を持つので、綺麗な写真と上手なコメントで企業が商品、サービスの宣伝に積極的に利用しています。インフルエンサーマーケティングの台頭でマスメディアの利用が少なくなり、逆に口コミの力が強くなっています。企業から押し付けられていない点からも新たな「自発的市場」として注目されています。

■ギフトエコノミー(贈与経済)について

 ギフトエコノミー(贈与経済)という概念は1973年にケネシー・ボールディングが提唱したもので、ギフトを「好意や善意に基づくギフト」と「脅し取るようなギフト」の2種類に分けて捉えました。
後者はギャングのみかじめ料や税金的なもののように「見返りあり」の贈与を指し、前者は「見返りなし」の贈与です。現在ギフトエコノミーが注目されるのは前者の「好意や善意に基づくギフト」が増えてきたからです。
 有名な例として日本では「未来食堂」※① などが該当します。
またペイフォワード(日本では昔から「恩送り」という同じような考え方がありました)※②という概念がありますが、自らの善意を誰かが受け取り、その誰かが善意として他者に返してくれるというサイクルでいつかまた誰かが善意を返してくれるかも知れないという考え方です。
このように対象が明確な善意ではなく誰かのために役立つという「ギフトエコノミー」が広まっています。
ボランティアやクラウドファンディング、災害復興、応援消費など善意によるギフトエコノミーが活性化しています。
 今注目されている「ふるさと納税」※③もギフトエコノミーに近いギフト行動といえるかも知れません。

※①「未来食堂」http://miraishokudo.com/
※② ペイフォワード(恩送り)https://ja.wikipedia.org/wiki/恩送り
※③ ふるさと納税 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/policy/



■ではギフトとは

 このようにギフト市場では「見返りありの贈与」的な、つまり儀礼的なギフトは減り、つながりを強化するような自発的なギフトが増えていく傾向にあります。お中元やお歳暮など儀礼的なものが総じて減少し続けることでしょう。
 さて消費者行動の研究者ラッセル・ベルグはギフトの機能を「社会化」、「経済的交換」、「社会的交換」、「コミュニケーション」の4つに分けていますが、これからは「コミュニケーション」機能が注目されることでしょう。
 「ギフト行動」はほぼイコール「コミュニケーション行動」であるといえます。
このように考えてくるとギフトの選択に際し、贈り手と受け手の関係性が重要な要素となってきます。つまりギフトは関係性を明示し確認するためのコミュニケーションツールと考えられます。
ある調査でギフト志向が最も高いのは10代の女性であるとのことですが、最も関係性に埋没するからでしょう。
 ギフトが関係性の距離を示すという事例としては20代の男性が「友人の女性」(恋人ではない)にギフトを贈る際のパッケージは女性的なものは選ばないという調査結果があります。これはピンク色やハート柄のパッケージを選択すると「特別な好意」を持っていると誤解されてしまうため無難な色柄を選ぶそうです。
 なぜ「ギフト行動」を実行するかと言えば、相手との距離、立場などを確認し提示していくためでその距離をコントロールして関係性を維持、強化していきたいからです。
 ギフト上手はコミュニケーション上手といえるわけです。

これからも「ギフトで日本を元気に」できるように活動を進めて参ります。
ギフト研究所への一層のご支援をいただけますようお願いいたします。

一般社団法人ギフト研究所
代表理事 山田晴久

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