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【店づくり相談室 vol.14】セルフレジのニュースで感じた理非善悪

朝、出社する前に立ち寄るコンビニで時々見かける光景があります。老齢のご婦人が会計の際に店員と親しげに話をしている姿です。おそらく常連客で顔見知りの関係なのでしょう。どちらも朗らかに楽しそうに世間話をしています。

東京都の人口は推計で14.105(千)人。世帯数は、7.500(千)世帯。老齢人口は3.202(千)人。(令和6年1月1日現在/東京都公式ホームページ)となっています。
65歳以上の老齢人口のうち、単独世帯(一人暮らし)の割合は、東京都が23.2%と都道府県別で最も高く、全世帯のうち一人暮らし世帯が53.2%という調査結果があります。

先日、Googleである検索ワードが世界で急上昇しました。それが「セルフチェックアウト」。
日本では「セルフレジ」と呼ばれています。実はその少し前に、関連するこんなニュースが配信されていました。アメリカのテクノロジーを扱うサイト<ギズモード>で「セルフレジの悪夢がついに終わるかもしれない」という見出しです。その前の日には、英国のBBCもほぼ同じ内容で「セルフレジの導入は失敗だった」と伝えています。なぜ、同じタイミングでアメリカ、英国のメディアが同じことを伝えたのでしょうか。

実は、昨年末にセルフレジに関する、ある調査結果が発表されています。最近私たちがうすうす気づいていたことが数字で示されたのです。それは「セルフレジは、人がいるレジに比べて21倍万引きされやすい」というものです。調査によると、商品をスキャンし忘れて店を出る“うっかり万引き”これを経験した人が5人に1人いたということです。

ネット上でも「“うっかり万引き“していないか店を出る時にそわそわしてしまう」という書き込みや、逆に「二重にスキャンして2つ分払ってしまった」という声もあって、セルフレジを巡ってはいろんな人がもやもやした声を書き込んでいます。

そんな中で、アメリカ、英国のメディアでは、セルフレジを縮小、あるいは廃止する動きが広がっている事例を紹介しています。アメリカ最大のスーパーマーケット・チェーン<ウォルマート>では、昨年1部の店舗でセルフレジを廃止しました。アメリカのダラーショップ(日本の100円ショップにあたる)では、減らしていたレジ担当のスタッフを増員して、以前の有人スタイルに戻したそうです。こうした「有人レジ回帰」は、英国の一部小売りでも始まっていますが、アメリカの動きの方が速いようです。その理由として、全米で話題の流行語<ギルト・チッピング>(罪悪感でチップを払わせるといった意味)があるのかもしれません。チップ文化のアメリカでは、商品代金の10%、あるいは20%といった具合に、チップの額を選択させる画面がさまざまなお店で出るようになりました。すると、「自分がいくらチップを払うか」ということを後ろの人に覗かれてしまうストレスや、そもそも顔が見えないので「誰にチップを渡しているのか」といったセルフレジへのストレスが高まっていたことも有人レジに向かわせる一つのきっかけになったのではないでしょうか。

日本ではどうでしょうか。現状、欧米とは逆の潮流で、セルフレジの拡張期に入っています。全国スーパーマーケット協会の調査によると、昨年セルフレジを設置している企業は、およそ31%と過去最高になりました。今後、まだまだ増えていくという見立てもある一方で、これくらいで頭打ちになるのではないかといったさまざまな分析もあります。

このセルフレジは、もともとコロナ禍で、非接触を目的に普及してきました。しかし、コロナ禍も落ち着きを取り戻している中で、今では各国でいろいろな見方がされています。「セルフレジの普及で店員と言葉を交わさなくなり、高齢者が孤独を感じるようになった」というデータもあり、フランスやオランダでは、“おしゃべり専用レジ”という店員といくら長い時間話していても良いというレジが増えて話題になっています。いかにも、花屋さんで軽減税率の既製のアレンジメントを買わずに、高い税率のフラワーアレンジメントを作ってもらいながら、コミュニケーションを楽しむ文化があるフランスらしい取組みです。非接触ツールのおかげで、濃厚な接触を求めるレジができるという皮肉な現象が起きているということです。

店舗は、「モノを買う場」から「体験する場」に、そして「コミュニケーションの場」として機能することで社会課題解決の一翼を担っています。
コンビニでのご婦人と店員の会話は、コンビニの役割が単に「近所の便利なお店」というだけでなく「コミュニケーションの場」として機能することで、社会課題解決の一翼を担っていると気付かされたエピソードでした。



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