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【店づくり相談室 vol.15】押し寄せる「茶文化」のうねり


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スターバックスコーヒージャパンは最近4年間で、全国14カ所に「スターバックス ティー&カフェ」をオープンしました。
さらに、今後もティーに特化した店舗を拡大していく予定です。コーヒー専門店が、今なぜ紅茶に注力しているのでしょうか。

スタバではもともと紅茶やスパイスが売られていた

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スターバックスの1号店は、1971年米ワシントン州シアトルのダウンタウンに位置するパイク・プレイス・マーケットにオープンしました。
このマーケットは、シアトルで暮らす人々のための市場として古くから親しまれてきました。

そのため、創業当時はコーヒーだけではなく、ティー、スパイスを扱う量り売り店(Starbucks Coffee, Tea and Spices)でした。ですから、スターバックスにとって紅茶は、新しい商品ではないのです。

スタバは紅茶関連の商品開発に注力

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スターバックスは、独自の茶文化が根付く日本で紅茶をベースにした抹茶クリームフラペチーノや、ほうじ茶ラテなどオリジナル商品を開発し続けてきました。その後、ティーブランド「TEAVANA(ティバーナ、HEAVEN OF TEAティーの楽園の意)」を展開し、フルーツ、花、スパイス、ハーブなどさまざまな素材を茶葉に組み合わせたオリジナルの紅茶関連商品の開発に力を入れています。

日本でもプチ紅茶ブーム

2023年11月セブンイレブンは、店内で淹れたての紅茶<セブンティー>の実験販売を始めると発表しました。3年後に全国1,000店舗での販売を目指しています。2024年1月銀座三越で、紅茶とスコーンのイベントが開催され人気を博しました。
同年2月には、マクドナルドが紅茶販売を中止すると発表。
すると「紅茶販売をなくさないで欲しい」との要望が多数寄せられ、マクドナルドは一転して紅茶販売を再開しました。

2つの紅茶大国の変化

紅茶の消費量は長年横ばいですが、今年は伸びるのではないかというのが多くの業界関係者の見立てです。
これが今の日本における紅茶の立ち位置。その紅茶に世界的異変が起こっています。2つの紅茶大国と言えば、英国とインド。その2国でかつてない動きが起こっています。

英国の異変

英国では紅茶不足が深刻になっています。
その理由は、イエメンの親イラン民兵組織フーシ派による紅海での度重なる船舶への攻撃です。
それによって、紅海の物流網が混乱しスエズ運河を経由した欧州への海上輸送が滞っています。その結果として、世界有数の紅茶市場を誇る英国で紅茶不足が深刻になっています。因みに、英国のスーパーマーケットでは、「紅茶の入荷が滞っています」というPOPが掲げられています。

英国のTIMESによると、今後数カ月以内に紅茶の入手困難や値上げに加えて、価格を変えずに内容量を減らすシュリンクフレーション、即ちステレス値上げが広がるだろうと報道されています。市場では、品薄状態が続き、買いだめが広がる混乱も予想され、国内で紅茶不足が生活に影響を及ぼし始めているようです。

英国の輸入元インドとケニア

世界中に出荷されている紅茶の4分の3はインド、ケニア、スリランカ、中国です。インドはかつて英国の植民地だったこともあり主要な輸入相手国です。その輸送は紅海とスエズ運河を通過するルートがほとんどでした。フーシ派による攻撃で、海運各社は、アフリカ最南端の喜望峰廻りに変える必要が生まれています。
あるいは、コストがかかるので、出庫を取りやめる動きも生まれています。

結果として、英国に入る紅茶の量は減って、価格の上昇が起こっています。英国人としては、多少高価でも飲みたいという意識はあるようですが、紅海を通らずにどこまで輸入量を確保できるかが厳しい状況です。
日本では輸入量が最も多いインドでの紅茶の生産量が減少し、スリランカ産の紅茶にシフトしましたが、世界で争奪戦が起こり、値上がりが起きています。
今後インドの動向次第で紅茶の世界的な値上がりが起こるでしょう。

インドの紅茶離れ

世界1位の紅茶生産国インドでは紅茶離れが起きています。インドの国民的嗜好品としての飲み物と言えば紅茶でした。
インド式ミルクティーのチャイや英国式紅茶。ところが近年はコーヒーの消費量が激増し、紅茶離れが顕著です。
実は、インドではコーヒーも作られています。その生産量は世界8位。今までは、インドで生産されたコーヒーは国内で消費されず、そのほとんどが輸出されていました。

ところが、ここ数年コーヒーの国内市場が年10%以上の高成長を続けています。これは、世界市場を上回るペースでコーヒーを飲む人が増えているということです。カフェだけでなく、家庭でコーヒーを飲む生活習慣が増えているようです。
今後10年で市場規模は10倍になると予測されています。インドでは中間層が拡大していることもあり、それまで高価だったコーヒーが好まれるようになっているため、飲み物の大きな構造変化が起きています。インドのコーヒーブームに目を付けたスターバックスは、インド国内での店舗を28年までに1,000店舗に拡大する計画を発表しました。
グローバルサウスの筆頭であるインドでは中間層が育っていて、これまでの常識が変わってきます。紅茶離れ、コーヒーへの流れ。それが日本へも大きな影響を与えます。

日本では馴染がないインド産コーヒー

インド産のコーヒーは日本ではあまり馴染がなく、その輸出先はほとんどが欧州です。理由は、インド産のコーヒーは酸が多く、苦みが強い。米国では、酸が強く、苦みが弱いコーヒーが好まれます。
例えばモカのような味です。欧州では、酸が多く、苦みが強いものが好まれます。だからインド産のコーヒーとの相性が良いのです。一方で日本では、酸と苦みのバランスが重宝されます。そのため、ブルーマウンテンなどが好まれるのです。

新勢力

コーヒーが人気になっているインドで、その中核になっているコーヒーチェーンが日本に進出しました。
それが<Blue Tokai Coffee(ブルー・ト―カイ・コーヒー)>。
原産国発スペシャルティコーヒーブランドとして、2013年にニューデリーで創業。インド国内の優良な農地からアラビカ豆100%を仕入れ、丁寧に焙煎。地産地消のスタイルで人気を集めていましたが、2021年に日本に海外初進出を果たしました。
グランスタ東京、日本橋コレド、博多駅、六本木ミッドタウン、八重洲ミッドタウンなどでのPOPUPで認知度を高めています。今後、良品廉価を武器に勢力を広げていく気配があり、コーヒーの勢力図も変わっていくかもしれません。

競争原理の変化

ONLINEとB2Bで販路を押さえつつ、POPUP-SHOPでタッチポイントを拡大していくというビジネスモデルが広がり、店舗では一等地にプロモーションスペースを設けるという設計が増えています。顧客接点データを多く持ち、それをエクスペリエンスの良さに還元するという新たな改善ループをいかに高速で回せるかという新しい競争原理が生まれています。
競争原理が変われば、産業構造も変わります。メーカー主導のバリューチェーンはバリュージャーニーとして新しいライン上にUXイノベーションという価値を生み出しています。顧客体験価値の質が今後の競争を牽引していくことでしょうか。

店づくり相談室は、行動経済学に基づいて体験価値を高める目に見えない「揺らぎ」を伴う店づくりのヒントを提供します。



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