路迂
この夜に何を問おう。
規則的によせ返す波の音を身体中に響かせ、紺碧の空を仰ぐ。一歩、また一歩と濡れた砂に足を沈ませ、まだ暖かさの残る海と同化しようか。
風はもはや熱を失い、荒々しく髪を、マントを翻して通りすぎる。
心許ないランプの灯りが、僅かながらに波間を照らし、ゆらゆらとその影を焼き付ける。
内にかき抱いた炎は烟ることなく、今もあかあかと燃え広がり、いつかこの身を焼き尽くすだろう。
それでも。
この手を掲げ、空に縫い留められた瞬きをすくい上げ口に含む。冷んやりとした瞬きもまた、炎の内に包まれる。
わたしはただ深い沈黙に浸り、今まさに天と地に繋がれている喜びに震えていた。
2024/08/08脱稿
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