キロール

趣味で小説を書いているC・A・スミスが好きなおっさんです。 のんびりとライフワーク的な…

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趣味で小説を書いているC・A・スミスが好きなおっさんです。 のんびりとライフワーク的な作品を書いて行こうと思っております。

マガジン

  • 征四郎呪法剣

    異世界ファンタジー小説

最近の記事

怪異猟兵のノクターン

 怪異猟兵と称される兵科が生まれたのは西暦一九四一年。奇怪なるオカルト部隊を編成したナチスドイツに対する神秘学的武装集団として英国で生まれた。  それまでハンターと呼ばれる者や悪魔祓い師が個別に行っていた幽霊狩りを、今後は国軍が行う事にもなった。大戦が終われば、その思想は各国に普及し始める。それは日本皇国も例外ではなかった。  植民地放棄政策が功を奏して第二次世界大戦に参戦しなかった日本皇国だったが、何故か怪異による陰惨な事件が多発していた。一九四五年に起きた幾つかの大火

    • 皇都神鬼狩猟譚

       西暦2038年、春。僕は大学時代の先輩の元を訪ねるべく、皇都でも有数の資産家である洲燈(すとう)家の屋敷を訪れた。  立派な門扉に洒落たモニター付き呼び鈴。ボタンを押せば、応対に出たのは女中さんであろうか。 「一ノ瀬(いちのせ)先輩に呼ばれまして……ああ、僕は陣野英嗣(じんのひでつぐ)と申しまして……」 「……晃人(あきひと)様のお客人ですか? 確認を取ってまいりますので暫しお待ちを」  この女性の物言い、絶対に信用されていない自信が僕にはある。カフェの女給さんとかも

      • 第三話 襲撃

         使命帯びた死霊術師のロズワグンは、謎の男に命を助けられ、騎馬民族《ホースニアン》と呼ばれる種族の、棄てられた集落に連れてこられた。  そこで傷の手当てを受けていたロズワグンだが、その地で男が並々ならぬ剣の使い手である事を知る。  その日の夜は、嫌に冷え込んだ。  吹き抜ける風は冷たく、暖が取れねば凍えている所だったとロズワグンは思った。  干し肉を炙ったものと薬草類のスープのみと言う簡素な食事を終えて、片付けをしている男を見ながら、この奇妙な男が何と言う名前なのかも知らな

        • 第二話 奇妙な男

           不死身の騎士となった弟を追っていたロズワグンは、ヘマをして追われていた。  討つべき弟と同じ不死身の騎士を一度は倒したかと思えたロズワグンだったが、その不死身ぶりを見せつけられ窮地に陥る。  其処に現れた謎の男が聖騎士を追い払う……。この男は何者なのか?  男に抱えられたままロズワグンは森を進む。 「だから、歩けると申しておるだろう! 降ろせ!」 「時間が無い。追手に追いつかれるのはごめんだ」  ロズワグンの膝裏と胴体に腕を回して、男は黙々と歩く。  其処に下心は感

        怪異猟兵のノクターン

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        • 征四郎呪法剣
          4本

        記事

          第一話 出会い

           ロズワグンが裏切り者とされた弟を追って北方の地に足を踏み入れたのは半年前の事だ。  故国を裏切り、敵国の聖騎士団に加わった弟を討つと言う使命を彼女は帯びていた。  死霊術師であるロズワグンは恐るべき使い手であり、彼女を害する事が出来た者はこれまでは居なかった。  それに増長した訳では無かったが、何としても弟の始末をつけるべく少しばかり無理な策を用いてしまった。  その結果、端的に言えば彼女は追われていた。 「ええい、しつこいわ!」  頭部の耳で周囲を伺いながら走り続け

          第一話 出会い

          剣士二人

           対峙する二人の間に、憎悪は無かった。  いや、敵意すらなかった。  あるのは、旅の最中で培った友情があるばかりだった。  それでも、戦わねばならない。  誰の所為でもない、自身の性《さが》の為に。  この地ジーカまで共に旅をしてきた仲間達も、それを知るがゆえに固唾を飲んで見守っている。  共に死線を潜り抜けた剣士と斬り合わねばならない。  何とも因果な事だと剣士の片割れである征四郎《せいしろう》は自身の性《さが》を嘲笑った。  だが、それが愚かだと言って止める気もない。

          シノビマスター 怒りのアヴェンジャー

           俺かい? 俺の名はイーネス。職業は冒険者、クラスはシノビ。これでも腕は一流だったと自負がある。だが、もう七年は仕事はしていない。ガキを預かった所為で、そいつを育てるのに右往左往していたからな。  召喚で呼ばれた総勢十名のガキ。その内の一人を俺が面倒みる羽目になった。ふざけた話だが楽しかった。  それぞれのエキスパートに預けられた十名が魔王退治の名目で先日招集された。この日が来るのは分かっていたが……まあ、あいつの門出だ、笑って見送った。  魔王軍の連中となら何度か切り

          シノビマスター 怒りのアヴェンジャー

          邪神島狩猟譚

           ポンポンポンとリズミカルに鳴り響く焼玉船のエンジン音が近づいて来る。陰鬱な空気漂う船着き場には、不釣り合いなほどに軽快な音だ。  あれに客人が乗っているのかと、唾を飲み込み時蔵は船の到着を待った。掌にうっすらと汗をにじませるほどの緊張はいつ以来か。  船が桟橋に付けられて、降りてきた人影を見た時に緊張は最高潮に達した。つばの広い帽子を目深にかぶり、漆黒のコートの襟は口元を覆う。腰に携えた刀は、獅子王。家康より土岐頼次に与えられ、その子頼勝が妖魅を討つ旅路の際に用いた妖殺

          邪神島狩猟譚

          黒衣の主と虹色の従者

           敗れた。  そう自覚する前に黒衣の男は喀血して、よろめいた。  まだだと膝を屈さずに目の前の敵を……黄金瞳の男を睨む。  だが、敵は既に次の行動に移っていた。  その手の甲に埋め込まれた魔術武器が力を開放し、その腕はアカシャ色に染まっていた。第五元素アカシャ、空の色、つまり暗紫色に。  男はまずいと歯を食いしばり腕を持ち上げクロスさせ、その一撃に耐えようとした。  途端、全てを吹き飛ばす力の奔流が男を襲い、垂れ流す血も涎も奔流に吹き飛ばされた。  それでも堪えた男の胸を

          黒衣の主と虹色の従者

          蒸気鎧の乙女と魔術師

           噴煙吹き上がる蒸気鎧を駆って、空飛ぶ大地を走るボク。  奴が、フラハティが遂に本気になってしまった。  空飛ぶ大地スカイスチームに、もうボク達の居場所は無くなった。  でも、だからと言って指を咥えて彼女が連れ去られるのを黙って見て居られるか!  でも、結果は酷い物だった。  彼女と友達を取り囲んでいた連中に勢いのままに殴り掛かかり、一体は倒したけど、すぐに他の奴に背後を取られて後部ハッチから引きずり出された。 「ガキが、タップリ躾てやるぜ!」  ボクの両手を掴み上げて

          蒸気鎧の乙女と魔術師

          虹色の従者

           クィーロ・ルスティアがカップを持ち上げ中身を覗き見ると、いつも通りウアトの淹れたカムは虹色をしている。油が浮いている訳じゃない。  焙煎された豆の香りはそのままに、本来の色である漆黒ではなく、虹色に変貌しただけだ。 「腕を上げたな」 「恐れ入ります」  一口飲んだクィーロの感想に、ウアトは右目を細めて喜びを露わにした。  クィーロはその様子を見やり、左目を覆う眼帯を見る。眼帯に覆われた左目が、彼女が淹れたカムと同じ色である事を知るからだ。  メイド服を隙なく着こなした

          虹色の従者

          魔城の主

           空に浮かぶ魔城と燃え盛る様な恒星が見下ろす大地ロムグ。  黄金瞳の男が齎した『破壊の夜』が肥沃な大地を荒野へと変えて久しい。嘗て存在していた国々はその枠組みを維持できず、都市国家のような小規模な物へと変遷を余儀なくされた。  『破壊の夜』が変えた物は数多あるが、この地の生態系も大きく変えた。今では魔物が荒野に蔓延っているが、危険はそればかりではない。  魔甲を纏う魔術師や徒党を組んだ荒くれなど力に溺れた人間も危険に含まれている。  その危険な荒野を進む影がある。揺ら