魔城の主

 空に浮かぶ魔城と燃え盛る様な恒星が見下ろす大地ロムグ。

 黄金瞳の男が齎した『破壊の夜』が肥沃な大地を荒野へと変えて久しい。嘗て存在していた国々はその枠組みを維持できず、都市国家のような小規模な物へと変遷を余儀なくされた。

 『破壊の夜』が変えた物は数多あるが、この地の生態系も大きく変えた。今では魔物が荒野に蔓延っているが、危険はそればかりではない。

 魔甲を纏う魔術師や徒党を組んだ荒くれなど力に溺れた人間も危険に含まれている。

 その危険な荒野を進む影がある。揺らめく孤影の足取りは重く、今にも倒れそうでありながら、その背後には数多の屍が転がっている。

 魔物や荒くれ達は言うに及ばず、魔甲を纏った魔術師の屍すら、そこにはあった。

 孤影の主は、新たに立ち塞がる荒くれや魔甲を纏った魔術師に問うだろう、黄金瞳の男を知っているかと。

 長い眠りより目覚めた復讐者の到来を告げる様に。灰銀の瞳を向けながら。

【続く】

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