コロナウイルス連作短編その184「必要十分条件」
夕方、コンビニへ歩く途中、後神邦彦は車道にセミの死骸が転がっているのに気づいた。哀れだった。
と、いきなり足をバタつかせジジジと粗い断末魔を響かせるので、邦彦は体をビクつかせる。距離は離れているし、今までセミの死を見たことのないわけがない。だがあの不気味さには慣れない。アスファルトと日差しに焼かれながらも、最後まで生きようと足掻くあの様は、ただ惨めだ。
ボタンを押したら、世界中のセミが一瞬で死滅すればいいのに。
そんな言葉が頭に思い浮かんだ。これは友人が言ったのか、そ