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コロナウイルス連作短編

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2022年5月の記事一覧

コロナウイルス連作短編その176「たった1つの復讐のすべ」

 堀河通はトイレの便器に座っているが、とっくに排便は終えている。ただ静かに臀部を便座に置…

コロナウイルス連作短編その175「男ってのをもっと楽しんでこうぜ」

 セックスの後、前橋近江は横に寝転がる早稲田ニーナの背中を見ている。彼女は自分に背を向け…

コロナウイルス連作短編その174「生、ま、れ、て、こ、さ、せ、ら、れ、て」

登場人物 人間1:マスクはしていない 人間2:マスクはしていない (だだっ広い空間。薄暗く、…

コロナウイルス連作短編その173「優しさから優しさへ」

 百里柚木は下りのエスカレーターに乗っている。前には小さな子供と、母親らしき女性がいる。…

コロナウイルス連作短編その172「インフルエンサーたち」

 コロナ禍が始まってから、内村忍は自殺したインフルエンサーの記事を見つけるとノートにメモ…

コロナウイルス連作短編その171「ネコが好きな女、カラスにも好かれる」

 久しぶりに仕事から早く帰ってこれて、杉崎彩佳は解放感を抱く。だがそれを嘲笑うみたいに、…

コロナウイルス連作短編その170「太陽は核の光」

 扇真坂は机を見つめ、ノートの端に絵を書いている。だが実際視線を向けているのはノートにではない、尾根槇緒という同級生の方にだ。 「今日はなんか中性的って感じだねえ」  友人である少女がそう言い、槇緒はそれに応えるように目を細める。  真坂はファッションについてほとんど理解しない、正確に言うならば脳髄がそれを理解すること、もしくは考えること自体を拒否している。服に対する網膜の解像度が、脳髄によって強制的に荒くダウングレードされている。それでも今槇緒の制服を見るならば確かに中性的