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ベトナム語翻訳-第6章-ストラテジーを立てるスキル-パート2


日本語からベトナム語へ翻訳するときにストラテジーを立てるのは、高品質な翻訳を作るために欠かせないステップと言えます。

 前章では、対象読者、文脈、伝達メディアなどのストラテジーを立てる際に考慮すべき項目を紹介しました。次に、適切な翻訳ストラテジーを実施するために考慮すべき項目は何でしょうか?本章では、確固たるベースを構築するのに役立つ各要素について詳しく説明したいと思います。

1. 対象読者

対象読者とは、仕事や日常生活などで翻訳したものを読む人となります。「読者」に翻訳の意味を十分に伝えるためには、日本語からベトナム語へ翻訳をする際、対象読者を見極め、自分を読者の立場の身を置いて考えなければなりません。

例えば、読者が心理学を専門とする精神科医である場合、社会不安障害、強迫性障害などの症候群の訳語は、SADやOCDなどの専門用語をそのまま使っても構いません。しかし、読者はこの分野についてよく知らず、情報を調べている場合、理解しやすく詳しく説明する必要があります。(例:SADとは、誰も自分に注意を払ってくれないと恐れるという症候群です。)

2. 文脈および伝達メディア

翻訳がどのように用いられるのか(チラシ、内部文書、プレスリリースなど)。文脈を見極めることにより、読者の立場に身を置く面で役立ち、それによって最適なスタイルと言葉を選ぶことができます。
翻訳後パンフレットとして使用する場合、主要な要素(価格、時間枠、製品など)を強調するため、文をシンプルにした方が良いでしょう。ユーザーマニュアルの場合は、利用者が理解して利用できるように、翻訳はできる限り詳しいものとしなければなりません。

翻訳したものを投稿するメディアと文脈は、常に対象読者と並行して確認する必要がある2つの要素であり、そこから適切な語彙とスタイルを選択することができます。

3. スタイルガイド

スタイルガイドは、翻訳会社・クライアントが提供する翻訳のルールです。これは、日本語からベトナム語へ翻訳をする際、従わなければならない指示です。

それでは、スタイルガイドをしっかり守るなら、どのようなメリットがあるでしょうか。一つ目のメリットは統一性です。スタイルガイドに従うことは、特定の項目(番号付け、固有名詞など)で一貫させるのに役立ちます。さらに、スタイルガイドがあれば、翻訳者はスタイルや語彙の用い方の面で迷わずに作業を進められます。最後に大事なこととして、スタイルガイドに従うことで、クライアントの指示に違反しないようにすることが重要です。これは翻訳者にとっても、クライアントや翻訳会社にとってもメリットとなります。
その上、スタイルガイドから多くの新しい翻訳スタイル、または日本語からベトナム語へ翻訳をするのに役立つ新しい語彙の使い方の勉強にもなります。

4. 用語、辞書の使用

用語、辞書は、翻訳案件のために翻訳会社・クライアントから提供されるデータベースです。用語、辞書の内容は案件によって異なります。
用語、辞書を使用すると多くの利点があります。まずは、単語の意味を検索する時間を短縮できます。次に、単語や表現の用い方を統一することもできます。
しかし、何が何でもクライアントの用語ベースに従わなければならないとは限りません。適切な訳語を選択するには、分野、主題などを考慮する必要があります。用語、辞書が間違っている場合、メモし、後でチェックする人(チェッカー)、プロジェクトマネージャー、または翻訳会社・クライアントへ確認しなければなりません。
例:
+ クライアントの用語ベース: ベルト = dây cua-roa, dây đai
🡺  訳語:「dây cua-roa」(プリンター部品)
+ クライアントの用語ベース: 真円度 = chân tròn
🡺  訳語:「độ tròn」に修正する(幾何公差のタイプ)

5. 旅行や広告分野のトランスクリエーション

トランスクリエーションは、旅行や広告分野で必要な翻訳方法です。
トランスクリエーション = トランスレーション + クリエーション
旅行や広告分野の翻訳をする際、読者にインパクトを与え、作者のメッセージを伝えることに焦点を当てる必要があります。また、場合によっては直訳しないこともあります。

例:原文:努力しない者は成功しない。一般的な翻訳の場合、「Đối với những người không nỗ lực thì không có khái niệm thành công」と訳されますが、広告として翻訳する場合、「không có nỗ lực sẽ không có thành công」とシンプルにした方がベターです。
トランスクリエーションとは、原文を忠実に翻訳し、「原文が読者に与える雰囲気やイメージを創り出すこと」に焦点を当てた翻訳方法と言えます。原文を忠実に翻訳するなら、作者が伝えたいことを強調することができないためです。

6. 字幕翻訳のときの規則

日本語字幕からベトナム語翻訳をする際の最大の特徴は「1秒のシーンで使える文字数が4文字」という「文字数制限」です。多くの情報は動画、音楽、または会話などを通して視聴者に伝えられます。字幕の文字数制限の規則は、視聴者が字幕を読むことからしか情報を得られないことを防ぐためです。
上記の規則の他に、翻訳会社や映画配給会社によって字幕を付けるスタイルはさまざまです。

7. 作業時間の推計

最後は、時間の推計です。文を分析後、調べる必要のある難しい単語をマークし、対象読者、文脈(旅行、広告、ユーザーガイドなど)、翻訳会社・クライアントが提供する用語ベース、スタイルガイドをすべて確認し、翻訳ストラテジーの最後のステップとなるのは時間です。原文を小さなセクションに分けて、翻訳会社・クライアントの納品スケジュールどおりに作業を進めます。単語の意味や情報の検索に時間がかかると感じた場合、すぐに翻訳会社・クライアントへ連絡して相談してください。良い評判を得るため、高品質な翻訳を提出できるよう努力しましょう。

次回:ベトナム語翻訳-第7章-下訳のスキル-パート1

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