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ベトナム語翻訳-第5章-ストラテジーを立てるスキル-パート1

プロフェッショナルな翻訳者になるためには、基本的なスキルを身につける必要があります。前章で学んだ文章分析と情報検索のスキルを通して、かなり多くの点に気がついたことでしょう。品質の高い翻訳をするためには、適切な翻訳ストラテジーが必要になります。では、効果的な翻訳ストラテジーとは何でしょうか。

ストラテジーを立てる際の注意点

日本語からベトナム語へ翻訳する際、文章分析と情報検索のステップ終了後、すぐに翻訳を始めるのではなく、効果的な翻訳ストラテジーを立てる必要があります。ところで、ストラテジーとは何でしょうか? 設定したスケジュールに従って、翻訳作業をスムーズに進めるための具体的な計画のことです。
翻訳ストラテジーは、翻訳の方向性を決めます。ストラテジーを立てずに翻訳を始めると、効率よく、また高い品質を達成することができません。原文を読んで得られた情報を基にしてから翻訳ストラテジーを立てる方がベストです。適切なストラテジーが見つかれば、実際の翻訳作業ははるかにやりやすくなるはずです。
⮚     時制:

文の時制とは、事例の発生時間を表す文法の用語です。事例の発生時点が異なるため、表現する動詞の形式も異なります。したがって、原文に従って内容を正しく翻訳するためには、文の時制に注意を払う必要があります。
日本語では、「đã」 ("食べた), 「chưa」 (食べていない), 「không」 (食べない), 「đang」 (食べている), 「sẽ」 (食べる)などの単なる時制が分けられているだけでなく、“ところ”などの補語も用いられます。実際には、「現在時制」というものは存在しません。
✔      時制は現在・過去・未来の動作、現象、状態等を表します。
✔      時制はある一定の時に生じた動作、現象、状態等が進行中あるいは継続中であることも表します。
✔      時制は現在・過去・未来のある時点に生じた 動作・状態 の 完了結果も表します。
⮚     語彙の用い方:
日本語からベトナム語へ翻訳する際、語彙の用い方に注意を払うことは非常に重要です。原文の内容を正確に伝えるため適切な表現を選ぶ際、スタイル、ジャンル、文化的な特徴などを見極める必要があります。
例:国王はお亡くなりになりました。
翻訳:“Vua đã chết”より“Quốc vương đã qua đời” の方が適切です。

 ⮚     専門用語の訳語に関する選び方
翻訳の難易度は、原文に専門用語がどの程度出ているかなどの頻度により異なります。そして、これらの語の意味が正しく訳されているかどうかを確認することは非常に重要です。さらに、用語ベースで決まっている訳語にも注意する必要があります。
例:機械に関する資料では、「保証」の訳語は“cam kết”ではなく“bảo hành”となります。
⮚     翻訳会社・クライアントの指示に従う
翻訳会社を通して日本語からベトナム語へ翻訳する案件を受ける際、正確に翻訳するためには会社の指示に従わなければなりません。

良い翻訳ストラテジーには多くの要素が必要となりますが、重要な要素を以下に取り上げます:
⮚     対象読者
最初に、翻訳の対象読者を見極める必要があります。対象読者を見極めることは翻訳に使用する適切な語彙を選ぶことに役立ちます。
たとえば、対象読者が子供であれば、専門用語ではなく、わかりやすい子供向けの言葉を使用した方が良いでしょう。

 ⮚     文脈
これも翻訳ストラテジーを立てる点で重要な要素です。文脈を正しく見極めることにより、読者の観点から見ることができ、最適なスタイルと語彙を選ぶこともできます。
たとえば、製品マニュアルの翻訳では、文章を簡潔にして、長くならないようにした方が良いでしょう。
⮚     伝達メディア
今の時代は科学技術が発展しているため、人々はメディアを通してお互いにインタラクティブすることがよくあります。翻訳原稿はどのメディアに投稿されるのでしょうか? ウェブサイト、雑誌、新聞等の翻訳原稿が投稿されているメディアを見極めることが必要となります。

 ⮚     翻訳会社・クライアントの指示
翻訳会社・クライアントの指示はかなり重要です。指示に従うことで、複数の翻訳者で翻訳作業を行う場合でも、一貫性を保つことができます。したがって指示に従うことはマストです。
⮚     用語、辞書
用語、辞書は、個人プロジェクトでもグループプロジェクトでも非常に役立つツールです。会社やクライアントが提供する用語、あるいは同様の過去プロジェクトの用語を上手く活用してください。これは検索時間を節約し、訳語を統一するための便利なツールです。
⮚     作業時間の推計
ベトナム語でも「時間は金なり」ということわざがあり、翻訳の作業時間を予測するならこのことわざ通りとなります。
例:1日あたり1500ワードを翻訳できる場合、3,000ワードの原稿は急がなければ3日間あれば十分完了でき、3日間で仕事の分量を分けることができるため、品質も高められるでしょう。
しかし、納品期限に間に合うそうにない場合でも、自分の評判を落とさないため、質の悪い翻訳を提出することがないように注意を払います。
 
プロフェッショナルの翻訳者になるためには、基本的な手順を学習する必要があります。これらの手順は、自分の将来のベースとなるでしょう。

次回:ベトナム語翻訳-第6章-ストラテジーを立てるスキル-パート2

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