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今「GREEN FORESTERS」を始める理由

代表の中井照大郎です。今年7月15日、「株式会社GREEN FORESTERS」という会社を起業しました。あっという間に2ヵ月が経とうとしています。おかげさまで、最初の事業地も地域パートナーも見つかりそうでなんとか事業がスタートできそうです。良かった!

さて、林業と聞くと何を思い浮かべますか?「木こり」とか斧で木を伐っているイメージでしょうか。現代においてはもはや斧は使ってないですが、チェンソーや大型の重機を使って伐採するのが現在行われている林業の主流だと思います。

一方、僕らグリーンフォレスターズは、一切伐採事業はおこなわず、植林といった「木を育てる」ことを専門とする会社として起業しました。相当ニッチなので(笑)、おそらく全国を見回してもかなり異色なのではないかと思います。

今回は、「なぜ今、GREEN FORESTERSなのか?」というテーマで、僕なりに思っていることを書いていきます。

なぜ今、林業なのか?

そもそもですが、日本には国土の7割近くの面積を森林が占めていて、めっちゃ森があります。なかでも人が植えたスギやヒノキなどの人工林が1000万ヘクタールもあります。北海道が800万ヘクタールくらいなので、北海道より広い面積を人が植えたんです。昔の人むちゃくちゃすごいですよね。

そして、その森林の多くが伐採が進まずに残っています。国の機関である林野庁のデータによれば、統計上は毎年の森林の成長量の4割程度しか利用されておらず毎年森林の蓄積量はどんどん大きくなっています。こんなに森林がたくさんある状態は、江戸時代もいれて過去400年でなかったと言われているんです。400年って。

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日本は平地を除きほぼ森林に囲まれている。

森林全部燃やしても、たった2年分の電力

「そんなに余っているなら、ジャンジャン使えばいいじゃん!」と思うと思います。僕も思ってました。ただ、残念ながら、外国から輸入した木材にはなかなか及ばないのが現状です(木材の自給率は37%くらいで近年上昇してます)。もちろんタダ単に輸入材の方が安いからじゃなく、傾斜がきつかったり土壌が豊かだったり、そもそも人が植えていたりなど、理由は色々あります。

であれば、「バイオマスとして燃やして電気などのエネルギーにすればいいじゃないか」と思うと思います。僕も思ってました。しかし、残念ながら、木材の電力源としての能力は石油や天然ガスには遠く及びません。仮に日本の森林を全てバイオマス工場で燃やしても日本の2年分の電力さえ満たせません(※1)。なので、今の技術では発電効率も悪く、電力として使うにはあまりにも相性が悪いのではないかと思っています。もちろん、森林を全部燃やすなんてこと絶対すべきじゃないんですけど(ちなみに熱利用や熱電併給だともっと効率良いので、その線はありと思います)。

じゃあ、日本の森林は使い道もないし放置されておいても仕方ないのでしょうか。

森林を循環させることの意義

僕は、「放置されていていいはずがない」と思っています。だって、そもそも人工林は本来的な「自然」ではなくて人が手をかけて始めたものだから、ほっといたら荒廃してしまうし、それでは資源として価値が廃れていってしまいます。森林の価値は木材という換金可能な価値だけではなく、計測が大変な「森林で育まれる水」や「生物多様性」といったものも含まれます。土砂災害や河川の氾濫を抑えているのも森です。CO2も吸ってくれます。憎き花粉症はもちろん問題だけど、僕らは実は既に森と繋がって、森に支えられ、森と共に生きています。

今は治水技術や予測が発達して、河川の氾濫は劇的に減ったけれど、昔はしょっちゅう台風で山が崩れて河川の氾濫を招いていたと言われています。例えば、よく語られる1947年のカスリーン台風被害では、群馬県の赤城山で山腹崩壊するなど発生し、河川が氾濫し1100人の方が亡くなられています。

山に森林が育っていれば、全てではないにしても、表土の流出や崩壊は防いでくれるのです。

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赤城山(群馬県)の山腹崩壊。戦時中に山林が荒廃したことが原因と言われています。

化石燃料を使うことの意味

一方で、僕らの生活を大きく支えるエネルギー源である石油や天然ガス等の化石燃料は、事業一つに数千億~数兆円規模の大規模な投資が行われて開発されてきました。その一部では、開発地域に住む人々と開発者/需要者の間で富の偏重を生み、その構造的な歪みが不平等や場合によっては紛争の一因となってきました(※2)。さらに、温室効果ガスを大量に地中から大気に戻すことで地球温暖化の主因になっています。

これは、僕たちを起因とした、近い未来に生きる子どもやその次の世代に対しての構造的な暴力とも言えるのではないでしょうか。そして残念ながら、毎日電気やガス使って生きている僕たち全てが加担している現実があります(日本の化石燃料依存度は87%です。※3)。

正直、この便利な生活を手放すことは僕にだってできないけれど、それでも、その問題を少しでも変えていく世界の作り手の一人になりたいと思っています。日本が誇るこの広大な森の力をお借りして、単に「環境負荷を軽減する」的な意味でのサステイナブルなだけでなく「更に世界を良くしていきたい」です。

ただサステイナブルなだけではなく、もっともっと良くしたい。

日本は温暖湿潤な気候で森林は育ちやすいと言われています。そして何より、50年前に一本一本人の手によって植えられたとてつもなく広大な人工林があります。

持続的に、余すことなく僕たちの身の回りにある森林を使い、また植えていく。木を消費してサステイナブルな社会にしていくだけでなく、たくさんの人たちの手を借りながらまた新たな森をつくり、日常的に森や木を育てたりすることができる社会を作っていく。

植林や森づくりってすごい地道な作業ですが、だからこそたくさんの人がもっと森に関われる。森は超気持ちいいです。その機会を提供していくのが、僕らにできることだと思っています。

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森の中ではこんな美しい光景もみられます。

イノベーター「まさやん」との出会いからグリーンフォレスターズ設立へ。

グリーンフォレスターズは、僕、中井と中川雅也と中間康介(なぜか全員「中」がつく)の3人で始めました。僕らはかれこれ1年前ほどに、林野庁が主催する林業のアクセラレーションプログラム「Sustainable Forest Action」に異なる立場で参加していました。 

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左から中川・中井・中間。見ての通り全員イケメンです。

中でも中川雅也(以下まさやん)が創業した株式会社中川は、グリーンフォレスターズが目指すロールモデル的存在で、たった4年ほどで従業員20名ほどを雇用、常識ではありえない給与水準や働き方、異業種の人や企業とのコラボレーションを生み出している、今では業界ではすっかり有名になった造林専門会社です。

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まさやんは見ての通りちょっとトトロにも似ています。


まさやんとの初対面は京都のとある大学内でした。初めて会ったその日のお昼に早速二人で一緒にソバ屋に入った。何話してたかすっかり覚えてないけど、ロマンを語る語り口に僕もすっかり魅了されたことは覚えています。

それから、時がたち今年4月も中ごろ、ひょんなことから思い立ち、まさやんに「一緒に造林会社で全国展開してみない?」と提案し、「いいよ!」と即レスされたことは記憶に新しい。後から聞いたら、どうやらコロナで自分の講演会が軒並みキャンセルになりヒマだったらしい。聞いてみるもんです。こうしてグリーンフォレスターズの設立が決まりました。

西粟倉という場所

僕の林業人生は2017年4月に東京の会社を辞め、小学校の同級生「たばた」と岡山県西粟倉村に移住するところからスタートしました。それから株式会社百森という森林管理の専門会社を設立し、今は7人の仲間と共に村の「百年の森林事業」を推進し、森林を管理しています。たった3年でしたが、東京生まれ東京生まれの坊ちゃん系シティボーイ(ボーイというかもうおっさんだけど)の僕にとっては余りあるほどにたくさんの経験をさせてもらいました。

西粟倉での一番の学びは、林業は一人じゃ何もできないということです。森林所有者、伐採者、運搬者、製材者、行政など関係者も多いです。しかもどうやら地域毎に事業構造は全然違ったりします。それにいろんな人の思いがつまっています。50年前に植えた人の気持ちからはじまっています(林業地だと何百年とかもしれません)。だから林業は絶対的にチームプレーが必要です。チームプレーが醍醐味です。林業はコワモテのお兄さんたちも多いけど、根は真っ直ぐでかっこいいです。少なくとも西粟倉はそうでした。

西粟倉の皆さん、本当にたくさん育ててもらいました。今の僕は西粟倉なくしてありません。まだまだ百森も道半ばにして、新たにこの挑戦を始めたことにご心配をおかけしているかもしれません。でも、必ず、この道を繋げて、ご恩を返していきます。

百森のみんな、東京行ったっきりすまん。皆の頑張りがあるから、僕もこうして新しい挑戦ができています。普段絶対恥ずかしくて言えないけど、本当にありがとう。

たばた、ありがとう。

という訳で(?)改めまして、僕たちグリーンフォレスターズは、造林専門会社として、森林循環を促進すべく活動していきます。その活動を通して、いつか世界の誰からも搾取することのない社会へと変えていく力になりたいです。

さぁ、森をつくろう!!

※1 森林を燃やすと何年分の電力になる?
日本の森林蓄積52.4億立方メートルを搬出材積ベースで発熱量(kwh)換算すると約5.3兆kwhになる。これに一般的なバイオマス発電所の発電効率30%をかけて、日本の年間電力需要(0.8兆kwh)で割ると、大体1.9年分になる。(何か間違ってたら誰かコッソリ優しく教えてください)
※2 紛争の一因となってきた
事例:インドネシア アチェ紛争
https://www.jiia.or.jp/column/column-73.html
※3 化石燃料への依存度
https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2018/html/001/

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