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【夏前必読】林業関係者向けハチ対策まとめ

会社設立後、初めて夏を越えた私たち。
聞いていましたが、やっぱり猛威を奮われた存在がいました。

そう、"ハチ"です。

林業関係者で一度も刺されたことが無いという人はいない説が唱えられるほど、夏はハチとの戦いでもあります。僕らも、この下刈りシーズンに色々とハチのことを調べて、対策を考えていたので、今日はその内容を皆さんにも公開したいと思います。

1. どんなハチが危険か

日本において、人を刺すハチは主にスズメバチアシナガバチミツバチ、の3種類です。実はどのハチも、刺すのはメスの働き蜂だけで、主な活動時期は6月~10月頃。越冬に向けた夏の終わり頃から最も凶暴性を増してきますが、攻撃性や毒性の観点で一番警戒すべきはスズメバチです。

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2. スズメバチの行動範囲

スズメバチの行動範囲は非常に広く、半径約1kmと言われています。それに対して外的に対して警戒行動を取るのは、巣から半径約10m。1haの伐採現場と比較すると、だいたいこんな感じ。

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…見ての通り、はっきり言ってスズメバチが見えたからといって、現場の中にスズメバチの巣があるかどうかは分かりません。スズメバチを見かけたら、その動きを見ながら巣が近くにあるかどうかを把握する必要があります。(アシナガバチは飛ぶのがそこまで上手ではないため、行動範囲はスズメバチをよりは狭いと考えられる)

3. スズメバチが人を刺すまでの警戒行動

スズメバチも、刺すのはあくまで巣を守るための防衛反応であり、何も無しにいきなり攻撃しにくるわけではありません。だいたい、ホバリング、威嚇(警戒音)、などの警戒行動を取ったうえで、最後は集団で攻撃してきます。
下の図の"④仲間を呼ぶ"以降のステップに進んでしまうと、もうできることは少ないです。ハチの視野は前方に集中しているので、警戒行動中(下の図の②~③)に気付くことができれば、身を低くして斜面下側に離れることによって、危険を回避できます(だいたいは夢中で作業していると気付かないのですが。。)

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4. 何がハチを興奮させるのか

ハチは防衛反応として、①何かに驚いた時、②巣に近付いた時、③(オオスズメバチに限り)えさ場に近付いた時、といった場合に警戒行動を取ります。警戒範囲はハチの種類によって異なり、例えば巣からの距離では、オオスズメバチで10m、スズメバチで4m、アシナガバチで1m程度と言われています。

また、興奮したハチは、下記のようなもので更に興奮してしまいます。

●動く黒いもの

そもそもハチは視力があまり良くない(白黒しかみえておらず、視力0.01程度といわれる)ため、黒くて動くものに突っ込んできます。
素早い横の動き
昆虫は動くものしか認識できません。特に素早い横の動きに敏感に反応します。
整髪料などに含まれる成分
ハチは匂いに敏感。香水や整髪量に含まれる揮発性の成分や、塗りたてのペンキに含まれる揮発剤にも刺激されます。

5. ハチは結局どこを刺す?

ハチを興奮させる上記3要素から、結果としてハチに刺される被害は、7割が上半身(頭部22%、右手22%、顔面19%、左手10%)に集中しています。下刈り作業中などでは、特に横に素早く動かす手・腕に被害は集中します。(参考:『おどろきのスズメバチ』 講談社 中村 雅雄著
逆にいうと、上半身にハチ対策ができれば、ハチに刺されるリスクを7割減らすことができるのでは?と考えて、対策を考えました。

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6. ハチ対策3種の神器

●防蜂手袋(八戸森林組合
3D形状の防蜂防振手袋です。手の甲の部分にプラスチックが入っておりちょうどスズメバチの針の長さを防げる形状になっています。流石、森林組合自身が企画・設計した商品なだけあり、現場での評判は上々です。

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林業の作業でもっとも蜂に刺される作業は下刈りの時です。また蜂に刺される方で比較的多い部分は手の甲です。蜂に刺されないように、強度な皮を使用すると硬くなり暑くなります。この対策として、オオスズメバチの8mmに対応するために手の甲は厚さを持ち、また伸びて薄くなる部分にはプラスチックで補強しました。(八戸森林組合 商品説明)

●空調服(マキタ
同じく前腕部分の防御力を高めるために、膨らむことでハチの針の長さ以上の隙間を生む空調服の有効性が期待されます。但し、刈り払い機のハーネスが体を押さえつけるので、なかなか空気が通りにくいことがあり。。
そんな中、マキタの空調服(FJ422DZ)は、服の中にハーネスを通して穴から取り出すスタイル。上半身がちゃんと膨らみ、ハチからの被害軽減が期待できます。

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●電動刈り払い機(マキタ
そもそも刈り払い機の音が大きいと、ハチへの刺激が強くなりますし、ハチの接近にも気付きにくくなります。元々はパワー不足やバッテリーの持ちの問題でプロからは避けられがちだった電動刈り払い機ですが、ここ最近のバッテリーの進化で、プロ使用に耐えうる性能になってきました。圧倒的に音は静かなので、蜂被害の軽減にはつながり得ると、試しに導入し始めています。(私は、バッテリー3個持ちで6時間稼働は担保できています)

リスクはゼロにはできないが、工夫で減らせるはず

林業や森づくりに色んな方が関わってもらうにあたって、この"ハチ"の問題は結構大きな問題だと、会社を立ち上げた時から思っていました。どうやっても刺されるリスクはゼロにはできませんし、経験者の方々はそれを乗り越えてきた過去があるので、仕方が無いものと割り切ってしまいがち。どうにかしてハチのリスクを軽減していき、働きやすい安全な職場を実現していきたいなと思っています。

(参考資料)
『森林レクリエーションでの スズメバチ刺傷事故を防ぐために』森林総合研究所
『スズメバチはなぜ刺すか』北海道大学出版会 松浦誠著
『おどろきのスズメバチ』 講談社 中村 雅雄著
森林生物情報 森林総合研究所
■ライター:中間 康介(株式会社GREEN FORESTERS 取締役)

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