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【林業の豆知識!】地拵えの種類とメリット・デメリット②

先日は地拵えの種類によるメリット・デメリットについてお話しました。今回は、地拵えの種類についてもう少し詳しくご紹介したいと思います!(全8種類)。

■前回の記事「地拵えの種類とメリット・デメリット①

地拵え上空写真

【地拵えの種類】

箇条書きになりますが、それぞれの特徴をご紹介します。実際、現場でご自身が行っている地拵えが、どの種類に該当するのか、どの種類とミックスしているのか、振り返ってみて下さい。「表土流亡の影響やノウサギ被害の影響など地拵えの種類によって異なる」ということに気づいていただければ、今後、作業の見方が変わるかもしれません。

①全刈り(ぜんがり)地拵え

・最も一般的で単純な作業で、雑草木などの再生抑制効果が高い。
・植栽予定地に散乱する枝条や雑草木など、植栽の障害になる物を全面的に取り除く。
・取り除いた枝条や雑草木は、植栽の邪魔にならない場所へ集積する。
・等高線沿いに置いたり、谷や川へ落とす。
・ただし、谷や川に集積しすぎると大雨や豪雨の時に流され、下流域へ悪影響を与える可能性も出てくる。
・また、植栽に適した肥沃な場所に集積したり、落としたりしないこと。
・渓畔林(けいはんりんー渓流沿いに繁茂する森林)などの保護すべき地点に対して留意すること。
・作業量が多く、多数の人手を要する。
・地表面が露出しやすい。

地拵え

②筋刈り(すじがり)地拵え

・植栽する列のみを刈り払い、残りは放置する方法。
・刈り払った雑草木などは、列の上または列に沿って置いたり、斜面下方へ落とす。
・植栽密度が低い(面積あたりの植栽本数が少ない)場合に適した方法。
・刈り残した列が、植栽木に対する防風効果が期待できるため、寒風などによる被害防止や軽減の効果が期待できる。
・表土流亡の防止効果が期待できる。
・全刈り地拵えよりも労力や経費の節減が期待できる。
・種子の供給源や地下茎が残されるため、刈り払った雑草木の再生力が強い。
・刈り残した列の植物が繁茂し、植栽木が被圧されるおそれがある。
・ノウサギやネズミを誘引する可能性が高い。

③坪刈り(つぼがり)地拵え

・植栽箇所の周囲のみ、円形または方形に刈り払う。→ 直径2~3mが一般的。
・筋刈り地拵えよりも労力と経費が節減が期待できる。
・周囲に残された雑草木が、植栽木への保護効果が期待できる。
 ただし、周囲に残された雑草木などによる植栽木への被圧の影響が大きくなる。
・ノネズミやノウサギの被害を受けやすい。
・再生した雑草木に植栽木が紛れてしまう可能性が高いため、後年の下刈りが面倒になる。

④枝条散布(しじょうさんぷ)地拵え

・刈り払った雑草木類や林地残材を林地全面にまき散らす方法。長さ1~2mくらいに細断し、散布する。
・植栽予定地に雑草木類や枝条などの林地残材が少ない場合に採用。それなりに多い場合は、適当量散布するなど臨機応変に。
・メリットは、林地土壌の水分の発散を抑制、雨水や雨滴による表面浸食の緩和、腐植質の補給(地力低下の防止)、雪崩防止(雪の移動を防止)、落ち葉などの飛散を防止。
・デメリットは、作業量が多い、雑草木類をまき散らすため、歩きにくく、植栽や下刈りが不便になる、ノネズミやノウサギが営巣する(獣害を誘発)。
・林地保全の観点では有効な方法だけど、小~中型獣類による被害を誘発する可能性を高めてしまう。

⑤先行(せんこう)地拵え

・主伐前に灌木やササ類を薬剤処理により除去する。
・メリットとして、伐採前の調査や作業、伐採後の地拵えが容易になる。刈り払い等の作業が日陰で行えるため、労務安全管理の面から有利な点がある。
・デメリットとして、主伐の予定がなくなった場合、作業が無駄になる。路網整備が不十分だと通勤が大変。搬出作業後、地拵えした場所が乱される場合がある。薬剤処理により下流域へ影響を与える恐れがある。

⑥棚積み(たなづみ)地拵え

・刈り払った雑草木類を集めて、4~8m間隔で等高線沿いに棚の様に積み上げる方法。
・棚は、伐根に積み上げて固定したり、杭を打って固定する。
・また、伐採で残された樹木や生えている樹木を残し、そこへ枝条などを寄せ集める。
・林地残材の移動や積雪の移動による植栽木への損傷が予想されるような場所に適している。
・棚積みにした場所から生える樹木は、刈り取らず、そのまま利用すれば、林地崩壊や雪崩の防止効果が期待できる。
・ただし、利用する樹木が大きい場合は、植栽木の成長が抑えられる可能性がある。
 しかし、残した樹木を植栽木とともに保護すれば、混交林(2種以上の木からなる森林)や複層林(年齢や樹種の違う木からなる森林)への誘導が可能となる。
・環境林(環境保全に寄与することを目的とした森林)等にしたい場合は、棚積み地拵えが適している。

⑦火入れ(ひいれ)地拵え

・林地残材や刈り払った雑草木などを集め、林床をきれいに燃やす方法。
・林野火災の危険が伴う。
・病害などによる改植、ノネズミの異常発生、コシダやウラジロの密生地などは、この地拵えが適している。
・マツ類やカンバ類など(特に風散布タイプ)の天然更新の促進効果が高い。

⑧開墾(かいこん)地拵え

・伐採跡地を焼き払った後、ソバやマメ類などを作り、同時期~3年後の間に植栽を行う。
・または、数年間、サツマイモやサトイモなどを栽培、コウゾやミツマタなどの特用樹(食用や繊維など用材以外に用いる樹)や観賞用樹木などを栽培。
・開墾により、土壌耕耘(土を掘り返したりする)効果や作物栽培への施肥(育成を促す)効果によって、植えた木の成長が良好になる。
・間作作物による地表被覆効果、地拵え及び下刈り作業の省力化が期待できる。
 ただし、急斜面では表土流亡や崩壊の原因になるおそれがある。
・間作(※1)の場合、施肥を怠ると地力低下を招く。
・間作作物を大切にしすぎて、植栽木を損傷してしまうことがある。

(※1)間作(林)=スギなど高木性樹木の苗木が育つまで、苗木間の隙間で農作物を栽培する山林

以上、8種類の地拵えでした。

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最後の開墾地拵えは特殊で、昔の農林家が行う様なイメージでしょうか。近年は、田舎暮らし、半農半X、自伐林業などに取り組む方が増えているので、今の時代スタイルに合った新しい開墾地拵えがあるかもしれません。もしくは、植栽木がある程度生長するまで、林地を貸すというビジネスも出来るかも?「土地代は無料で、間作を自由に認めるから植栽木を管理してね。」みたいな。

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(※こちらの記事は、『山いこら♪』2020年04月10日 | 林業・森林整備・現場技術に関するお話「地拵え 種類」で投稿された内容を、許可を得て一部再編集して投稿しております。)

ライター情報(リライトのみ)

■氏名:奥川季花
■所属:GFnote編集部編集長
■紹介文:和歌山県出身。高校時代に紀伊半島大水害で被災した経験から、土砂災害リスクを下げる山づくりに関心を持ち、林業に関わるようになる。土砂災害リスクを減らすために山と人との関係をデザインするソマノベースという事業を立ち上げる。現在はやグリーンフォレスターズや造林事業を展開する株式会社中川などに勤務している。

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